2022年1月22日土曜日

幸福なる人生

天風会説くところの心身統一法という教義のねらいは、万物の霊長としての本当に尊い生命を生かすのに必要な資格条件たる体力、胆力、判断力、断行力、精力、能力という6つの力を現実につくりあげることだ。
(引用)幸福なる人生 中村天風「心身統一法」講演録、著者:中村天風、発行所:株式会社PHP研究所、2011年、62-63

先日、中村天風真理瞑想録「力の結晶(発行所:PHP研究所、2020年)」を拝読した。前ブロクにも記したが、私は、天風といえば「誦句(しょうく)」で勇気づけられたこともある。
「私は力だ。力の結晶だ。何ものにも打ち克つ力の結晶だ。だから何ものにも負けないのだ。・・・」
あまりにも有名なこの誦句は、あらゆる天風にまつわる書籍で紹介されている。しかし、なぜ天風の思想は人々を惹きつけるのか。また、なぜ積極的思考が必要なのか。誦句だけでは、その天風の真髄まで触れることができなかったが、「力の結晶」を拝読すると、天風会の会員しか許されなかったであろう、その誦句の意味する深い理解を得ることができた。

このたび、私は、大変感銘を受けた「力の結晶」と同シリーズの「幸福なる人生」を拝読させていただいた。こちらも中村天風の講演テープを書籍化したものである。
あの大谷翔平や稲盛和夫らが心酔する中村天風。どうすれば、幸福なる人生が送れるのか。人間としての永遠のテーマについて、中村天風は、どのような解をもたらしてくれるのか。とてもワクワクしながら拝読させていただくことにした。

まず天風によると、幸福なる人生を送るためには、冒頭に記した体力から始まる6つの力を豊富にすることが必要だと説く。この6つの力のところで感じたことは、新型コロナウイルスが猛威を振るう現代においても十分通用するということだ。本文中、天風は、「悪い風邪が流行って、ワクチンがないなんていうふうに生きてやせんか」と聴衆に語りかけている。まさにワクチンを奪い合い、有効な治療薬も存在しない。まるで、現在のコロナに怯える私達を見据えたかのような場面である。そして、天風先生は、"悪い風邪”に対しても、体力に自信があれば「びくともしない」と言われる。天風自身も大病を患い、克服した経験から、講演内容にも説得力が増す。まさに天風は、「新型コロナに怯えるな」と、私たちに語りかけてくれているようだ。

また、私は、ヨガのクンバハカ密法についても興味深く読ませていただいた。天風自身がインドで1年7ヶ月もかかって悟った密法だ。このクンバハカについては、天風関連の書籍で多く紹介されている。しかし、天風の講演を書き起こした本書では、クンバハカの目的、方法を分かりやすく説明してくれる。そして、クンバハカを実践することにより、肉体も精神も驚くべき強さを増してくる。ぜひ、天風直伝のクンバハカは、実生活に取り入れたいヨガの秘法であった。

本書を読んで、一番参考になったのは、第7章「正しい食事の基準」であった。私は、人間ドックを受けるたび、尿酸の数値が少し高いことが悩みの種である。かつて、医師にも勧められた方法で尿酸値の改善を試みたこともあったが、なかなか功を奏しない。これは、親からの遺伝なのかと諦めたこともあった。しかし、第7章の部分では、尿酸値を抑えることに多くのページが割かれている。「贅沢病」とも言える痛風にもならないため、尿酸値を抑える秘訣の部分は、多くの現代人にとって必読の箇所であると感じた。今後の食事バランスの考え方ついても、大変参考になるものであった。

この本の帯には、「人間は、この世に煩悶しに来たり、病を患いに来たりしたのではない。この世に生まれたのは、進化向上という偉大な使命を全うするためだ。心を積極化して、幸福を嘆美する人間になれ!」と書かれている。

私は、「力の結晶」そして本書、「幸福なる人生」を拝読して、この帯に書かれている意味が理解できるようになった。天風哲学、イコール積極的思考と捉えられがちだが、違う。ときに天風哲学は、壮大な宇宙根源にも迫る。宇宙のなかにおける人間の存在。そう考えると、自分の悩みすらちっぽけなものに思えてしまう。そして、人間は、宇宙の進化向上に寄与し、そのためには積極的思考をし、幸福なる人生を送ることが大切だということに集約されていく。

本書は、一部のかたしか知り得なかった天風の貴重な講演会記録であり、人生の指針と成りうるものであった。「力の結晶」、そして「幸福なる人生」を刊行したPHP研究所に感謝申し上げたい。

2022年1月8日土曜日

力の結晶

 常に何事にも歓喜し、何事にも感謝してごらん。宇宙の造物主の心がそのままあなた方の心になったことになっているのと同様になるんだ。
(引用) 力の結晶 中村天風心理瞑想録、著者:中村天風、発行所:株式会社PHP研究所、2020年、171

あの大谷翔平や稲盛和夫らが心酔する中村天風。
天風が亡くなってから50年以上経つのに、なぜこれほどまでに支持されているのだろうか。かつて私は、天風の「誦句(しょうく)」で勇気づけられたこともある。
「私は力だ。力の結晶だ。何ものにも打ち克つ力の結晶だ。だから何ものにも負けないのだ。・・・」
この誦句は、あらゆる天風の書籍で紹介されている。

しかしなぜ天風の思想は人々を惹きつけるのか。また、なぜ積極的思考が必要なのか。誦句だけでは、その天風の真髄まで触れることができなかった。
このたび、中村天風真理瞑想録となる「力の結晶」が刊行された(以下、「本書」という)。多くの著名人を魅了して止まない天風の真髄に触れるべく、本書を拝読させていただくことにした。

この書籍は、中村天風の講演テープを書籍化したものである。今まで、「幸福なる人生(講習会編)」、「心を磨く(研修科編)」に続く第三弾として発刊された。本書は、過去2冊の講演とは異なり、まさに「積極的思考」を焦点にあてたものといえるだろう。講演テープを書籍化したとのことで、今まで一部のかたしか触れることができなかった貴重な資料とも言える。本書では、講演テープをそのまま書き起こしているため、あたかも天風先生の講演を聞いているような感覚を覚える。書籍を読み進めていくうちに、私はすっかり天風ワールドに惹き込まれていった。

積極的思考といえば、古くはフロイトやジョセフ・マーフィーによる潜在意識やナポレオン・ヒルによる「思考は現実化する(きこ書房、1999年)」などが有名である。私もこれらの書籍に触れたことがあるが、なぜ潜在意識が人生を一変させる力を持つのかが理解できなかった。しかし、天風は、心と宇宙との関係、宇宙と同化することの大切さを説く。そして、心の態度、心一つの置きどころというものが、人生をつくるという真理について、天風のユーモアや皮肉を交えた江戸っ子らしいべらんめえ口調で、分かりやすく解説してくれる。西洋の潜在意識の書籍も貴重であるが、私は、同じ日本人として、天風先生の教えが腑に落ちることが多かった。

また、天風は、言葉の力を大切にする。これは、実在意識から潜在意識に感化させるために必要である。言葉に生活を左右させる力があるということを教えてくれる。本書を読み進めていくと、私たちの生命が宇宙霊と結びついていることが理解できる。そこで天風は、宇宙霊の心である「真・美・善」を教えてくれる。美とか善とかは、漢字のイメージから意味を理解しやすいが、これらの漢字には、表層的な理解に留まらない意味があると天風先生は言われる。本書では12もの誦句が紹介されているが、私は、この「真・美・善」ということも意識して生活していこうと思うに至った(この真・美・善の考え方が含まれた誦句も本書で紹介されている)。

積極的、勇気、感謝、信念。本書では、人生どんなに困難に陥ろうとも、その心は断固として積極的に把持(はじ)しなければならないという人間に与えられた宇宙真理が紹介されている。本書では、11日間にわたる天風先生の講演を書き起こしたものである。そのライブ感をそのままに、読者は、深遠なる人生哲学を学ぶことができる。

誦句では、まず天風が読み上げ、そして聴衆者が一同についていく様子も伺える。まず、誦句を読み上げた天風が「さあ、これを一緒についておいで」と聴衆に誦句を唱えることを促すシーンも書き起こされている。天風先生についていけば、人生が一変する。そのことを確信させる一冊となった。

令和4年がスタートした最初の一冊として、本書を読んだ。まだ、新型コロナウイルスの完全なる終息がみえない。いや終息どころか、第6波とも言われるオミクロン株が猛威を振るいはじめてきた。しかし、私は心の持ちよう、そして日々の仕事に熱誠(ねっせい)を持って赴くことが何より大切だと考えるに至った。

私も中村天風に惹かれた一人となった。