人間というものは、よほど必要性の自覚がない限り、自らモノや情報を探しにはいかないものだ。これだけモノが行き届いた時代となると、なおさらである。しかし潜在的にほしいと思っているモノや情報はあって、それに気づいていないだけなのである。
(引用) 突き抜けるデザインマネジメント、著者:田子學、田子裕子、発行:日経BP、2019年、35
田子氏による本を読み、私は、「デザイン経営」という言葉を知った。以前、私がデザインの重要性を認識したのは、「とうほくあきんどでざいん塾」、現在のSo-So-LABと関わったときだ。旧とうほくあきんどでざいん塾は、仙台市と協同組合仙台卸商センターとの協働事業で、中小企業とクリエーターを対象としたクリエイティブ・サポート事業だ。デザインを主軸において、企業経営のサポートをする。当時としては、画期的なものだと感じた。
(公財)日本デザイン振興会によると、デザインという言葉の語源はラテン語にあるといわれ、「計画を記号に表す」という意味だったようだ。そのため、デザインという言葉は、「設計」という意味で定着しつつあるが、時代の流れとともに、少しずつ意味が変化してきているようだ。
常にヒトを中心に考え、目的を見出し、その目的を達成する計画を行い実現化する。同振興会では、この一連のプロセスがデザインであり、その結果、実現化されたものを「ひとつのデザイン解」と考えるとしている。田子氏によって著された本書においても、デザインマネジメントは、ビジョンが明確になり、戦略を展開し、イノベーションを加速するなど、様々な効果が得られるとしている。
本書では、大きく2つのデザインマネジメントの事例を掲げている。三井化学と半導体加工メーカーである塩山製作所(山梨県甲州市)だ。甲州市勝沼といえば、言わずとしれた日本ワイン発祥の地である。特に私は、塩山製作所がデザイン経営を取り入れ、ワイン事業に乗り出す事例に感銘を受けた。
「緑の風薫るワイナリー」をブランドコンセプトとして、塩山製作所は、「甲州」という品種のぶどうのみを使用し、赤ワインとロゼには「マスカット・ベリーA」という品種のみの使用を目指していくとしている。
何が面白かったといえば、塩山製作所が半導体加工メーカーという畑違いの分野から参戦したにもかかわらず、インダストリーなワイナリーを目指したことだ。ワイナリーの名称は、「MGVs(マグヴィス)」と名付けられ、塩山製作所は、日本ワイナリーの強豪がひしめくなか、一つのブランドを確立することに成功した。この塩山製作所のところを読み進めていくうち、私は、日本酒の「獺祭(だっさい)」を頭に浮かべた。今や世界的に有名な「獺祭」は、酒造りの過程において杜氏がいないことで知られる。獺祭を支えるのは、酒造りの全工程で詳細なデータを取得し、最高の日本酒を作り出すための最適解を導き出してきたIT技術だ。イノベーションの父、ヨーゼフ・シュンペーターは、経済的「創造的破壊」という言葉を使い、持続的な経済発展のためには絶えず新たなイノベーションで創造的破壊を行うことが重要であると説いた。まさしく、MGVsと獺祭は、昔ながらの伝統製法から創造的破壊を繰り返し、インダストリーな点に新たな価値を見つけた好例と言えるのではないだろうか。
田子氏によれば、デザインを成立させるためには、ロジカルなシナリオ、感覚の統合による共感、人々を感動させる魂のこもった物語、が必要(同書、364)とのことだ。そしてこれらが交われば交わるほど、デザインの精度があがっていくという。特に人々を感動させる魂のこもった物語、つまり、ラブ(LOVE)には共感できた。感動がなければ、モノがありふれた現代において、人々に受け入れられることはない。
田子氏によれば、ステークホルダーが最も期待することは、「Wow!」と言っている。「Wow!」と聞いて、私は、敬愛するトム・ピーターズを思い出す。
「私がいまこだわっているのは ー それも日本とアメリカをはじめとする成熟した先進工業諸国をはっきりと念頭においてのことなのだが ー この『際立った特質』を追求することである。それがつまり、『ワーオ!』の追求なのだ」
(引用)トム・ピーターズの経営創造、著者:トム・ピーターズ、訳者:平野勇夫、発行:TBSブリタニカ、1995年、3-4
25年も前にトム・ピーターズが指摘していたこと。つまり、他社より「際立った特質」を追求するために、突き抜けるデザインマネジメントは一つの有力な手法であると感じた。
いま、私達はVUCA(不安定性、不確実性、複雑性、不透明性)と呼ばれる時代に突入している。先の見えない未来に向かい、私たちの社会活動をより豊かにしてくためには、デザイン思考を取り入れ、より大きな「ワーオ!」を追い求めていくことが必要だと感じた。
2020年6月15日月曜日
2020年6月8日月曜日
経営参謀
参謀とは意思決定者を正しく動かす役割を負い、それを実現するために最適な仕事をデザインする人物
(引用)プロフェッショナル経営参謀、著者:杉田浩章、発売:日経BPマーケティング、2020年、25-26
この本は、BCG(ボストン コンサルティング グループ)日本代表の杉田氏によって書かれた。本を読み進めていくうちに、私は、杉田氏による「経営参謀」をテーマにしたセミナーを受講しているような錯覚を覚えた。それは、杉田氏による参謀力のノウハウが、私自身の仕事を振り返る機会にもなったからだ。杉田氏と私の仕事の分野は全く異なるが、杉田氏による経営参謀力のベースは、どの分野の仕事でも通ずるものがある。
これから私は、「仕事の面白みは?」と誰かから聞かれたとき、「経営参謀力」と答えようと思う。
参謀とは、何も管理職に限ったものでもない。意思決定者である上司に対して、いかに伝え、いかに上司を正しく動かし、最適な仕事をデザインしていくか。杉田氏も巻末で書かれているとおり、「経営参謀とは、未来のトップリーダーの予備軍である(同書、308)」ことから、全てのワーカーにとって、経営参謀力は、これからのキャリアアップに欠かせない武器となる。上司の与えられた問いに答えを出すのではなく、上司に正しい問いを突きつけ、経営層に意思決定を迫る。組織全体の方向性を決定づける力こそが、参謀力の醍醐味であると感じた。
本を読み進めていくと、経営参謀の「典型的なコケる10のパターンからの学び」がある。このコケるパターンは、たとえば「トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる(同書、77)」など、日々の仕事で、誰もが経験しているであろう事例に遭遇する。
また、本書の後半に纏められている経営参謀としての「32の能力」にも学びがあり、日々の仕事に意識して取り組んでいきたいと思う事項ばかりが羅列されている。その中で、特に共感できたのが、その道の専門家や有識者と対面し、会話することによって生きた知識を得ることである。私も、職場を異動するたびに、その道の専門家をさがし、対話を重ね、そこから知識を得て、仕事に生かしてきた。その副産物として、それぞれの道の一線で活躍しているかたたちと懇意にさせていただき、自分の人脈にも幅を広げることができたと思う。
さらに、参謀としての能力の一つに「変化を面白いと捉える感受性を持つ(同書、248)」というものがある。新型コロナウイルスの感染による新たな生活様式が求められる現在、私達の暮らしも大きな変化が求められる。その変化をチャンスと捉えるか否か。これは、まさに私たちの参謀力にかかっていることだろう。
惜しみなく経営参謀力のノウハウを教えてくれた杉田氏の本を、多くの人におすすめしたい。
(引用)プロフェッショナル経営参謀、著者:杉田浩章、発売:日経BPマーケティング、2020年、25-26
この本は、BCG(ボストン コンサルティング グループ)日本代表の杉田氏によって書かれた。本を読み進めていくうちに、私は、杉田氏による「経営参謀」をテーマにしたセミナーを受講しているような錯覚を覚えた。それは、杉田氏による参謀力のノウハウが、私自身の仕事を振り返る機会にもなったからだ。杉田氏と私の仕事の分野は全く異なるが、杉田氏による経営参謀力のベースは、どの分野の仕事でも通ずるものがある。
これから私は、「仕事の面白みは?」と誰かから聞かれたとき、「経営参謀力」と答えようと思う。
参謀とは、何も管理職に限ったものでもない。意思決定者である上司に対して、いかに伝え、いかに上司を正しく動かし、最適な仕事をデザインしていくか。杉田氏も巻末で書かれているとおり、「経営参謀とは、未来のトップリーダーの予備軍である(同書、308)」ことから、全てのワーカーにとって、経営参謀力は、これからのキャリアアップに欠かせない武器となる。上司の与えられた問いに答えを出すのではなく、上司に正しい問いを突きつけ、経営層に意思決定を迫る。組織全体の方向性を決定づける力こそが、参謀力の醍醐味であると感じた。
本を読み進めていくと、経営参謀の「典型的なコケる10のパターンからの学び」がある。このコケるパターンは、たとえば「トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる(同書、77)」など、日々の仕事で、誰もが経験しているであろう事例に遭遇する。
また、本書の後半に纏められている経営参謀としての「32の能力」にも学びがあり、日々の仕事に意識して取り組んでいきたいと思う事項ばかりが羅列されている。その中で、特に共感できたのが、その道の専門家や有識者と対面し、会話することによって生きた知識を得ることである。私も、職場を異動するたびに、その道の専門家をさがし、対話を重ね、そこから知識を得て、仕事に生かしてきた。その副産物として、それぞれの道の一線で活躍しているかたたちと懇意にさせていただき、自分の人脈にも幅を広げることができたと思う。
さらに、参謀としての能力の一つに「変化を面白いと捉える感受性を持つ(同書、248)」というものがある。新型コロナウイルスの感染による新たな生活様式が求められる現在、私達の暮らしも大きな変化が求められる。その変化をチャンスと捉えるか否か。これは、まさに私たちの参謀力にかかっていることだろう。
惜しみなく経営参謀力のノウハウを教えてくれた杉田氏の本を、多くの人におすすめしたい。
2020年5月30日土曜日
戦略の創造学
エグゼクティブにとって最も重要な仕事は「すでに起こった未来」を見つけることだ。そして、すでに起こった変化を新しい機会として利用するのが重要だ。
Peter F. Drucker
(引用)戦略の創造学 ドラッカーで気づき デザイン思考で創造し ポーターで戦略を実行する、著者:山脇秀樹、発行所:東洋経済新報社、2020年、38
ドラッカリアンには、たまらない一冊が出版された。
「新しい事業機会は、どうやって見つけるのですか?」
ピーター・F・ドラッカー経営大学院の学長まで務めた山脇秀樹氏は、2000年頃のある日、MBAの講義でひとりの学生から、痛いところをつかれた質問を受けたという。
大学で主にマーケティングを学んできた私だが、確かにイノベーションを起こす重要性はわかっていても、「では、そのイノベーションをどのように起こすのか」といった実践的な学びは乏しかったように思う。この学生からの核心をついた問いを受けて以降、山脇氏は、デザイン思考に向かったという。
コロナ禍の現在、このタイミングで出版された本書は、多くの事業者にとって光となると思った。それは、冒頭に引用したとおり、エグゼクティブにとって、最も重要な仕事は、「すでに起こった未来」を見つけることだからだ。
まさに今、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、国では、「新しい生活様式」提唱している。もはや、私たちは、この大きな変化・トレンドを見過ごすことはできない。
変化の要因は、ほかにもある。
人口減少に伴う社会構造の変化、5GやAI、IoTといった目覚ましい情報技術の進展、グローバル化した経済活動、環境保護に至るまで。国連の提唱するSDGsを含め、私たちの暮らしは、大きく変貌を遂げようとしている。
では、大きな変化に対応するため、何から始めればよいのか。それは、まず、自分たちのビジネスの意義を再認識したうえで、私たちには「どのような変化が起きているのか」、そして「その変化はどのような意味をもつのか」ということを自身に問いかけることから始めなければならないと感じた。
この本のおもしろいところは、ドラッカーだけでとどまらない。
本書には、競争戦略論の大家として知られるマイケル・ポーター氏も登場する。
ポーター氏の提唱する競争戦略の本質は、他と違うことをすること。つまり競争上の優位性を確立するために新しいポジションを既存産業内に見つけることである。
他にはない価値の提供をすることは、なにも事業者活動だけに留まらない。少子高齢化が進展する中、都市戦略、自治体戦略にも使えるのではないかと思った。山脇氏の書かれた「戦略の創造学」は、その都市に住むことの価値観、牽いては他にはないまちの魅力にも応用できるものと感じた。
本書のサブタイトルにもなっているが、ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する。山脇氏が教えてくれる「共感と未来を生む経営モデル」は、大きな変化が訪れている現代において、個々のビジネスにとどまらず、持続可能な社会を創造していくうえで、誰もが実践していく必要があると感じた。
それは、ドラッカーが言われる「マネジメントは何よりも結果を出すことに責任がある(引用、同書、246)」からだ。
Peter F. Drucker
(引用)戦略の創造学 ドラッカーで気づき デザイン思考で創造し ポーターで戦略を実行する、著者:山脇秀樹、発行所:東洋経済新報社、2020年、38
ドラッカリアンには、たまらない一冊が出版された。
「新しい事業機会は、どうやって見つけるのですか?」
ピーター・F・ドラッカー経営大学院の学長まで務めた山脇秀樹氏は、2000年頃のある日、MBAの講義でひとりの学生から、痛いところをつかれた質問を受けたという。
大学で主にマーケティングを学んできた私だが、確かにイノベーションを起こす重要性はわかっていても、「では、そのイノベーションをどのように起こすのか」といった実践的な学びは乏しかったように思う。この学生からの核心をついた問いを受けて以降、山脇氏は、デザイン思考に向かったという。
コロナ禍の現在、このタイミングで出版された本書は、多くの事業者にとって光となると思った。それは、冒頭に引用したとおり、エグゼクティブにとって、最も重要な仕事は、「すでに起こった未来」を見つけることだからだ。
まさに今、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、国では、「新しい生活様式」提唱している。もはや、私たちは、この大きな変化・トレンドを見過ごすことはできない。
変化の要因は、ほかにもある。
人口減少に伴う社会構造の変化、5GやAI、IoTといった目覚ましい情報技術の進展、グローバル化した経済活動、環境保護に至るまで。国連の提唱するSDGsを含め、私たちの暮らしは、大きく変貌を遂げようとしている。
では、大きな変化に対応するため、何から始めればよいのか。それは、まず、自分たちのビジネスの意義を再認識したうえで、私たちには「どのような変化が起きているのか」、そして「その変化はどのような意味をもつのか」ということを自身に問いかけることから始めなければならないと感じた。
この本のおもしろいところは、ドラッカーだけでとどまらない。
本書には、競争戦略論の大家として知られるマイケル・ポーター氏も登場する。
ポーター氏の提唱する競争戦略の本質は、他と違うことをすること。つまり競争上の優位性を確立するために新しいポジションを既存産業内に見つけることである。
他にはない価値の提供をすることは、なにも事業者活動だけに留まらない。少子高齢化が進展する中、都市戦略、自治体戦略にも使えるのではないかと思った。山脇氏の書かれた「戦略の創造学」は、その都市に住むことの価値観、牽いては他にはないまちの魅力にも応用できるものと感じた。
本書のサブタイトルにもなっているが、ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する。山脇氏が教えてくれる「共感と未来を生む経営モデル」は、大きな変化が訪れている現代において、個々のビジネスにとどまらず、持続可能な社会を創造していくうえで、誰もが実践していく必要があると感じた。
それは、ドラッカーが言われる「マネジメントは何よりも結果を出すことに責任がある(引用、同書、246)」からだ。
2020年5月17日日曜日
糸島ブランド戦略
商品はモノですが、ストーリーをつけることでコトになり、モノだけの価値を超えた価値を消費者の皆さんに感じてもらえるようになります。
(引用)地域も自分もガチで変える!逆転人生の糸島ブランド戦略、税金ドロボーと言われた町役場職員が、日本一のMBA公務員になれたわけ、著者:岡祐輔、発行所:株式会社実務教育出版、2020年、140
「公務員にマーケティング力は必要か」。
その問いに対して、今まで行政の世界では、「不必要」との解ではなかっただろうか。
事実、以前、私も淡路富男氏による「自治体マーケティング戦略(学陽書房:2009年)を拝読したことがあったが、それ以降、行政とマーケティングの世界を結びつけた書籍は、あまり存在しなかったように思う。もちろん、私の敬愛するピーター・F・ドラッカーによる「公的機関の6つの規律」などは、行政をマネジメントするという視点において、一石を投じてきた。
このたび、私は、糸島市職員、岡祐輔さんの本を拝読して、やはり、行政にはマーケティングが必要と確信を得た。私も大学時代にマーケティング論や広告論を専攻している。久しぶりに行政マンである岡さんの口から、「3C」、「SWOT分析」、「マーケティングの4P」との言葉を聞き、私は、嬉しく思った。
本書は、地域ブランドをどのように確立していくのかというものである。そこには、マーケティング力と公民連携がキーワードとなってくる。本書を読んでおもしろかったのは、糸島産「ふともずく」を女子高生と組み、戦略を組み立てて関係者らとWin-Winの関係を築き、全国で糸島産ブランドを展開していった事例だ。少子高齢化が進展し、地方創生といわれる現在、地域ブランドを確立するということは、新たな行政の役割として重要視されることだと再認識した。
私が勝手に岡さんに親近感を抱くのには、もう一つ理由がある。それは、本書の中で、静岡県立大学 岩崎邦彦教授のことを紹介していることだ。
いざ、自分たちの住む街のことを考えると、地域ブランドを確立する「資源」がないと思ってしまう。そこで役に立つのが、岩崎氏が著した「観光ブランドの教科書(日本経済新聞社:2019年)だ。岩崎氏は、訪れた人が満足を得るには、「観光地」+「 」が必要と説く。そして、その空欄に入るものは、ありふれたモノかもしれないが、そこにストーリーを加えることによりコトになる。コトになったとき、それはその地域しかないオンリーワンになる。
地域は、魅力で溢れている。しかし、そこにマーケティングと公民連携がなければ、その魅力は埋まったままだ。岡さんと岩崎さんの書籍は、セットで読むことで、自分たちのまちをブランド化できる解決策があると感じている。多くの行政マンにも大いに参考になるはずだ。
岡祐輔さんの益々のご活躍を祈念します。
このたび、私は、糸島市職員、岡祐輔さんの本を拝読して、やはり、行政にはマーケティングが必要と確信を得た。私も大学時代にマーケティング論や広告論を専攻している。久しぶりに行政マンである岡さんの口から、「3C」、「SWOT分析」、「マーケティングの4P」との言葉を聞き、私は、嬉しく思った。
本書は、地域ブランドをどのように確立していくのかというものである。そこには、マーケティング力と公民連携がキーワードとなってくる。本書を読んでおもしろかったのは、糸島産「ふともずく」を女子高生と組み、戦略を組み立てて関係者らとWin-Winの関係を築き、全国で糸島産ブランドを展開していった事例だ。少子高齢化が進展し、地方創生といわれる現在、地域ブランドを確立するということは、新たな行政の役割として重要視されることだと再認識した。
私が勝手に岡さんに親近感を抱くのには、もう一つ理由がある。それは、本書の中で、静岡県立大学 岩崎邦彦教授のことを紹介していることだ。
いざ、自分たちの住む街のことを考えると、地域ブランドを確立する「資源」がないと思ってしまう。そこで役に立つのが、岩崎氏が著した「観光ブランドの教科書(日本経済新聞社:2019年)だ。岩崎氏は、訪れた人が満足を得るには、「観光地」+「 」が必要と説く。そして、その空欄に入るものは、ありふれたモノかもしれないが、そこにストーリーを加えることによりコトになる。コトになったとき、それはその地域しかないオンリーワンになる。
地域は、魅力で溢れている。しかし、そこにマーケティングと公民連携がなければ、その魅力は埋まったままだ。岡さんと岩崎さんの書籍は、セットで読むことで、自分たちのまちをブランド化できる解決策があると感じている。多くの行政マンにも大いに参考になるはずだ。
岡祐輔さんの益々のご活躍を祈念します。
2020年5月10日日曜日
WHO YOU ARE
文化は社訓や社是のようなものではない。一度つくれば終わりというものではないのだ。「基準以下の行いを放置しておくと、それが新しい基準になる」と軍隊では言われる。
企業文化も同じだ。
(引用)WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる、日本語序文:辻庸介、著者:ベン・ホロウィッツ、訳者:浅枝大志・関美和、発行:日経BP、発売:日経BPマーケティング、2020年、21
「HARD THINGS(日経BP社)」の著者、ベン・ホロウィッツ氏の第2弾は、企業文化に焦点を当てたものとなった。その企業文化のモデルとなった人たちは、ハイチ革命を指揮したトゥーサン・ルーベルチュール、モンゴル帝国を築いたチンギス・ハン、またアメリカの元囚人、さらには、武士道を重んじた日本の侍と幅が広い。
特に、1600年代には世界人口の半分以上は奴隷として使われていたというが、その奴隷制度の廃止、西半球で起こったアフリカ人奴隷の反乱の中で最も成功したと言われるハイチ革命を指揮したルーベルチュールの話は面白い。よく企業文化、戦略というと、兵法から学ぶことも多いが、ホロウィッツ氏もその一人だろう。
長らく絶望的な立場に置かれた奴隷たちがいかに戦争に必要なスキルを身に着け、一つに纏まり、行動することができたのか。それを率いたルーベルチュールは、どのように振る舞い、奴隷たちのモチベーションを維持させ、行動したのか。ルーベルチュールから学ぶことは、企業文化を構築する上で必要不可欠なものだと知った。
一方、ホロウィッツ氏は、偉大な文化があっても偉大なチームは作れないし、プロダクトがだめなら企業は失敗するとの指摘も忘れない。
しかし、数々の困難を乗り越えていくには、やはり企業文化による、気風、気質にかかってくる。根底にあり、土台となり、つつみ込むもの。私は、それが、企業文化ではないかと思った。
これらの本で紹介されている4つの事例は、いってみれば、バラバラだ。ルーベルチュールや世界最大の帝国を1000年前に築き上げたチンギス・ハンからはじまり、殺人の罪で刑務所に入りギャングたちを統率したシャカ・サンゴールまで至る。
ただ、ホロウィッツが取り上げた4つの事例は、それぞれの分野で”何かを変えていった”人たちであることから、共通する要素も多い。
企業文化を構築するのは、あくまでも人間である。私は、そこに属する人たちの人間らしさ、信頼、目的を共有した一体感が大事であると再認識させられた。
本書では、日本の武士道の代表的な著「葉隠」の一文も紹介されている。
「剛臆と言う物は平生当たりて見ては当らす。別段に有物也」
(勇気があるか臆病かは平時にはわからない。何かが起きたときにすべてが明らかになる)(引用) 同書、119
本書でこの一文に触れたとき、いまの新型コロナウイルスの感染拡大のことを思った。
我が日本人は、武士道を重んじ、固有の文化を築き上げてきた。
国民一人ひとりが勇気を持って、新型コロナウイルスを終息させる。
いま、その目標に向かい、臆病者でない日本人、そしてしなやかで強い日本文化を再認識して、行動する必要があると思った。
今、まさに、日本人全員が、”WHO YOU ARE”と問われているのだと。
改めて、偉大なるベン・ホロウィッツ氏に敬意を表したい。
企業文化も同じだ。
(引用)WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる、日本語序文:辻庸介、著者:ベン・ホロウィッツ、訳者:浅枝大志・関美和、発行:日経BP、発売:日経BPマーケティング、2020年、21
「HARD THINGS(日経BP社)」の著者、ベン・ホロウィッツ氏の第2弾は、企業文化に焦点を当てたものとなった。その企業文化のモデルとなった人たちは、ハイチ革命を指揮したトゥーサン・ルーベルチュール、モンゴル帝国を築いたチンギス・ハン、またアメリカの元囚人、さらには、武士道を重んじた日本の侍と幅が広い。
特に、1600年代には世界人口の半分以上は奴隷として使われていたというが、その奴隷制度の廃止、西半球で起こったアフリカ人奴隷の反乱の中で最も成功したと言われるハイチ革命を指揮したルーベルチュールの話は面白い。よく企業文化、戦略というと、兵法から学ぶことも多いが、ホロウィッツ氏もその一人だろう。
長らく絶望的な立場に置かれた奴隷たちがいかに戦争に必要なスキルを身に着け、一つに纏まり、行動することができたのか。それを率いたルーベルチュールは、どのように振る舞い、奴隷たちのモチベーションを維持させ、行動したのか。ルーベルチュールから学ぶことは、企業文化を構築する上で必要不可欠なものだと知った。
一方、ホロウィッツ氏は、偉大な文化があっても偉大なチームは作れないし、プロダクトがだめなら企業は失敗するとの指摘も忘れない。
しかし、数々の困難を乗り越えていくには、やはり企業文化による、気風、気質にかかってくる。根底にあり、土台となり、つつみ込むもの。私は、それが、企業文化ではないかと思った。
これらの本で紹介されている4つの事例は、いってみれば、バラバラだ。ルーベルチュールや世界最大の帝国を1000年前に築き上げたチンギス・ハンからはじまり、殺人の罪で刑務所に入りギャングたちを統率したシャカ・サンゴールまで至る。
ただ、ホロウィッツが取り上げた4つの事例は、それぞれの分野で”何かを変えていった”人たちであることから、共通する要素も多い。
企業文化を構築するのは、あくまでも人間である。私は、そこに属する人たちの人間らしさ、信頼、目的を共有した一体感が大事であると再認識させられた。
本書では、日本の武士道の代表的な著「葉隠」の一文も紹介されている。
「剛臆と言う物は平生当たりて見ては当らす。別段に有物也」
(勇気があるか臆病かは平時にはわからない。何かが起きたときにすべてが明らかになる)(引用) 同書、119
本書でこの一文に触れたとき、いまの新型コロナウイルスの感染拡大のことを思った。
我が日本人は、武士道を重んじ、固有の文化を築き上げてきた。
国民一人ひとりが勇気を持って、新型コロナウイルスを終息させる。
いま、その目標に向かい、臆病者でない日本人、そしてしなやかで強い日本文化を再認識して、行動する必要があると思った。
今、まさに、日本人全員が、”WHO YOU ARE”と問われているのだと。
改めて、偉大なるベン・ホロウィッツ氏に敬意を表したい。
2020年4月29日水曜日
PRINCIPLES
何をどうするかに気を取られて、何をすべきかを決めるのは誰の責任かというもっと重要な質問をなおざりにする人がよくいる。それは逆だ。何をできる人が必要か、担当させる人がどういう人か知っていれば、仕事がどう進むかはしっかり描ける。
(引用)PRINCIPLES 人生と仕事の原則、著者:レイ・ダリオ、訳者:斎藤聖美、日本経済新聞社、2019年、429
新型コロナウイルスの感染拡大で、当代最高の投資家であり、フェジファンドのブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏の発言が世界的に注目を集めている。
その発言とは、レイ・ダリオ氏がインターネット番組で「新型コロナウイルスの感染拡大による打撃から世界経済が立ち直るには3年から5年の期間が必要」との見解を示したことだ。
私は、レイ・ダリオの言葉には、信憑性が高いことを知っている。なぜなら、以前、私は、レイ・ダリオ氏の「PRINCIPLES」を読み、彼の人生と仕事の原則を学んだからだ。レイ・ダリオ氏は、結論を導く際、過去の実績を見て体系的に信頼性を評価するなど、エビデンスの積み上がりを重視するなどし、なぜ、その意見に達したのかを理解するという。改めて、私は、レイ・ダリオ氏の本を読み返してみることとした。
レイ・ダリオ氏の示す原理原則は、人生の原則が5つの柱、仕事の原則が16の柱から成り立っている。これらの原則は、なにも特異なものではない。人間としてどうあるべきか、また、さらに仕事で組織が発展していくにはどのようにしていくかということを、自らの経験から原則(Principle)として纏めたものだ。
例えばたくさん努力して、上手に失敗することの大切さを説く。大胆な目標、失敗、原則を学ぶ、改善する、そしてさらに大胆な目標へ向かうといった、上向きのループを築き上げていくことこそが、まさに成功の秘訣だとレイ・ダリオ氏は言う。
このレイ・ダリオ氏の失敗するということに触れ、私は、松下幸之助氏の次の名言を思い出した。
「失敗することを恐れることよりも、真剣でないことを恐れたい。」
失敗することから学ぶことは多い。失敗することを恐れるということは、チャレンジを恐れることである。それよりも、チャレンジし、失敗し、反省し、次の目標に進むというプロセスが大切であるということは、私も同感だ。
レイ・ダリオ氏は、経営という部分では冷徹さも見せる。企業を利益を生むマシンとらえ、働く人達もマシンの一部として動くマシンと捉える。例えば、みんなから好かれているが能力のない人に辞めてもらうか、みんなから好かれているが能力のない人を会社に残し目標を達成しないかという選択は、どの世界にも存在することだろ。その解に、レイ・ダリオ氏は、「この課題に選択の余地はなく、卓越性の追求を選ばざるを得ない」とズバッと言っているところが気持ちいい。
良い組織には、良い人材と良いカルチャーがある。良い人材がいれば、冒頭に記したとおり、仕事の進め方が描ける。このことは、どの組織にも通用することだろう。最終的に良い組織をつくるためには、Principlsが必要だ。
本の中央には、人生の原則、仕事の原則の要約と見出しが箇条書きになって纏まっている。私は、このページを小さくコピーして、ホッチキスで1冊の本のようにして、手帳に挟み込んでみた。これは、レイ・ダリオ氏の経験がつまった貴重な教えだ。
この教えを胸に、これからの人生、そして仕事のすすめ方について、Principlsを大切にしながら生きようと、改めて思った。
(引用)PRINCIPLES 人生と仕事の原則、著者:レイ・ダリオ、訳者:斎藤聖美、日本経済新聞社、2019年、429
新型コロナウイルスの感染拡大で、当代最高の投資家であり、フェジファンドのブリッジウォーター・アソシエイツの創業者レイ・ダリオ氏の発言が世界的に注目を集めている。
その発言とは、レイ・ダリオ氏がインターネット番組で「新型コロナウイルスの感染拡大による打撃から世界経済が立ち直るには3年から5年の期間が必要」との見解を示したことだ。
私は、レイ・ダリオの言葉には、信憑性が高いことを知っている。なぜなら、以前、私は、レイ・ダリオ氏の「PRINCIPLES」を読み、彼の人生と仕事の原則を学んだからだ。レイ・ダリオ氏は、結論を導く際、過去の実績を見て体系的に信頼性を評価するなど、エビデンスの積み上がりを重視するなどし、なぜ、その意見に達したのかを理解するという。改めて、私は、レイ・ダリオ氏の本を読み返してみることとした。
レイ・ダリオ氏の示す原理原則は、人生の原則が5つの柱、仕事の原則が16の柱から成り立っている。これらの原則は、なにも特異なものではない。人間としてどうあるべきか、また、さらに仕事で組織が発展していくにはどのようにしていくかということを、自らの経験から原則(Principle)として纏めたものだ。
例えばたくさん努力して、上手に失敗することの大切さを説く。大胆な目標、失敗、原則を学ぶ、改善する、そしてさらに大胆な目標へ向かうといった、上向きのループを築き上げていくことこそが、まさに成功の秘訣だとレイ・ダリオ氏は言う。
このレイ・ダリオ氏の失敗するということに触れ、私は、松下幸之助氏の次の名言を思い出した。
「失敗することを恐れることよりも、真剣でないことを恐れたい。」
失敗することから学ぶことは多い。失敗することを恐れるということは、チャレンジを恐れることである。それよりも、チャレンジし、失敗し、反省し、次の目標に進むというプロセスが大切であるということは、私も同感だ。
レイ・ダリオ氏は、経営という部分では冷徹さも見せる。企業を利益を生むマシンとらえ、働く人達もマシンの一部として動くマシンと捉える。例えば、みんなから好かれているが能力のない人に辞めてもらうか、みんなから好かれているが能力のない人を会社に残し目標を達成しないかという選択は、どの世界にも存在することだろ。その解に、レイ・ダリオ氏は、「この課題に選択の余地はなく、卓越性の追求を選ばざるを得ない」とズバッと言っているところが気持ちいい。
良い組織には、良い人材と良いカルチャーがある。良い人材がいれば、冒頭に記したとおり、仕事の進め方が描ける。このことは、どの組織にも通用することだろう。最終的に良い組織をつくるためには、Principlsが必要だ。
本の中央には、人生の原則、仕事の原則の要約と見出しが箇条書きになって纏まっている。私は、このページを小さくコピーして、ホッチキスで1冊の本のようにして、手帳に挟み込んでみた。これは、レイ・ダリオ氏の経験がつまった貴重な教えだ。
この教えを胸に、これからの人生、そして仕事のすすめ方について、Principlsを大切にしながら生きようと、改めて思った。
2020年4月26日日曜日
LEADER SHIP
テロのあと、危機に直面した際にどうすれば冷静でいられるのかと、何度も尋ねられた。すでに述べてきたように、結局、大切なのは準備だ。市長時代、わたくしたちは絶えず、さまざまな種類の不測の事態に備えて、市の対応を机の上で予行演習してきた。
(引用)リーダーシップ、著者:ルドルフ・ジュリアーニ、訳者:楡井浩一、発行者:株式会社講談社、2003年、86
私の尊敬する一人に、元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏がいる。ジュリアーニ氏は、2001年9月11日に起きた同時多発テロの処理で自ら陣頭指揮にあたり、その水際だったリーダーシップが世界中から賞賛を集めた。
いま、私たちは、未だ収束がみえない新型コロナウイルスの脅威に立ち向かうべく、危機管理のあり方、そして政府や自治体だけではない、一人ひとりのリーダーシップのあり方が問われている。
そのヒントを求め、私は、ジュリアーニ氏の本を読み返した。
新型コロナウイルス感染拡大は、いま、私たちの経済を、そして暮らしを完全に止めてしまっている。長引く学校休校、飲食店などの活動自粛、そして、「STAY HOME」ということで外出自粛要請がなされ、今や公園で散歩することもままならぬ状況だ。
リーダーの一つの役目は、情報を正確に伝えることだ。実際、ジュリアーニ氏も「リーダーはマスコミを味方につけたいと思うが、何かと否定的な捉え方をされる」と言われる。
ジュリアーニ氏の本を読み、私は、リーダーが感染拡大についてどのような措置を講ずるのか、それはどのエビデンスに基づいているのか。また、公権力を用い、マーケットを止めたわけだから、どのような生活保障をしていくのか、その手法と根拠(本当に保障制度が根ざしたものになっているのか)はどうなっているか、といった説明責任が求められてくると思った。
また、リーダーは、危機に直面したときにこそ、平常心が求められる。ジュリアーニ氏は、ボクシングをしていた父から「平常心を保つ」ことの大切さを教わったという。そのためには、冒頭に記したとおり、日頃からの準備が欠かせない。
世界中に広がる新型コロナウイルスは、想定外だと言うなら、それは違うと思う。およそ100年前には、人類史上最悪といわれた新型インフルエンザ、いわゆる「スペイン風邪」が流行し、世界人口の3分の1から半数近くが感染したことを経験している。
また近年では、2009年春頃から2010年3月ごろにかけ、世界的に感染拡大した新型インフルエンザもあった。感染症の脅威は、十分想定されるものである。
しかし、過去の感染症の流行や災害は、寺田寅彦の言葉とされるとおり、「忘れた頃に来る」のも事実だ。だが、例えば、2011年3月11日に発生した東日本大震災では、東北沿岸部で多くの犠牲者が出てしまったなかで、学校管理下の児童・生徒全員が自主避難して津波の脅威から助かったという、いわゆる「釜石の奇跡」がある。感染症においても、自然災害においても、過去からの繰り返しであり、常日頃からの準備は可能である。
危機にある状況下でリーダーとしての役目は、絶望の中でも人々に希望をもたせることも必要だ。それは、なにも美辞麗句を並べることではない。厳しい直面であれば、聞き手に過度な期待を持たせないように、今の状態を率直に言う。そして、ジュリアーニ氏は、チャーチルの言葉を引用していたが、苦境にあっても「決してあきらめない」という強力なメッセージが必要であろう。
危機に直面したとき、どのようなリーダーシップを発揮すべきか。アメリカ同時多発テロ、いわゆる9.11を乗り越えたジュリアーニ氏の言葉は、いまもなお、色褪せることはない。
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