2022年12月17日土曜日

悪魔の傾聴

 しゃべれなければ、聞けばいいーそれだけで、本当にあらゆることが好転するのです。 
                                   中村淳彦

(引用)悪魔の傾聴 会話も人間関係も思いのままに操る、著者:中村淳彦、発行所:株式会社飛島新社、2022年、260

よく、一流の人は、「話す」より「聴く」ことが大切だと言われる。確かに、私も実生活や職場においての経験からも「傾聴」することの重要性は、理解できる。
しかし、それでも「傾聴」を実践することは難しい。妻からも、「よく、相手が話していても、自分の話題にすり替えているよね」と注意されてしまう。自分では無意識?、もしくは自分のことを話して会話を盛り上げていこうという意識?が働くのか、妻からは傾聴することに対して(他の部分もあると思うが)、及第点をいただけていない。しかし、傾聴することは、家庭生活を送るにしても、ビジネスの世界でも有効であることは間違いなさそうだ。

では、傾聴することは、単なる人の話を真剣に聴くだけで達成できるのか?それとも、傾聴することに関してのスキルが存在するのか?そんなことを思いながら書店に立ち寄ったら、一冊の書籍に出会えた。タイトルは、「悪魔の傾聴」とある。しかも、サブタイトルでは、「会話も人間関係も思いのままに操る」とある。これは、もう読むしかないと思った。

「悪魔の傾聴」を読み、最初から私は、打ちのめされてしまう。本書で言う、「HHJ」の三大悪、つまり「否定する」、「比較をする」、「自分の話をする」の頭文字を取った「HHJ」は、傾聴の三大悪であるという。この三大悪を無意識のうちに実践してきた私は、奇跡的に家庭や職場生活が送れていることに感謝した。
いままで私は、傾聴することについて、相手の話を聞きながら、自分のありのままの姿を見せていくことだと信じ切っていた。しかし、真っ向から否定されたことに、本書の著者である中村氏から、さらに傾聴のスキルを学ばなければならないと感じた。

本書の著者である中村淳彦氏は、「職業としてのAV女優(幻冬舎新書)」や「新型コロナと貧困女子(宝島社新書)」など、現代社会が抱えているであろう課題に対して、果敢に取材されているイメージがある。本書でも、実際に取材されたときの実例も紹介されている。中には、自殺未遂をされた女性に対して、どう自殺を思い留まらせたかという、まさに傾聴の上級テクニックまで披露されている。その中で、自分から相手に初めて話しかける行為(ナンパも然りか)については、特にビジネスの世界でも参考になる。初対面の方に話しかけるとき、中村氏は、「こちらから相手を選べるメリットがあるので、こちらに主導権がある」とする。そして、どのように自分の好印象を与え、一言、二言会話を交わしただけで、話が続いていくのかというテクニックは、とても役に立った。

また、中村氏の仕事もそうだが、ビジネスの世界でも、相手の本音を聞きづらい場面に遭遇する。中には、相手が沈黙さえしてしまうこともある。そのような場合でも、どのように対処し、傾聴を続けていくかということは、とても参考になった。

本書を読み、ヒト(人)は、誰しも欲望があることを再認識させられた。それは、聴き手である私たちにとっては、邪悪なものになるという。いくら、自分の心がフラットな状態で傾聴をしているつもりでも、「相手に信頼されたい」という欲望が潜んでいるという。この欲望を完全に捨てなければ、ビジネスでも家庭でも、傾聴を実践することは不可能だということに気づかされた。改めて、私は、傾聴の奥深さを知ることになった。

本書を最後まで拝読し、傾聴とは、単なる人の話を聴くだけではないということを思い知らされた。そして、今までの自分の傾聴のスキルが全然違っていたことも認識した。傾聴を実践することは、相手との関係が深まり、本音を引き出せ、信頼関係が生まれる。まさに、サブタイトルの「会話も人間関係も思いのままに操る」レベルに達するものだと感じた。

本書を読んで、早速自分も中村氏から教えていただいた傾聴のスキルを実生活で実践しはじめた。その結果、この傾聴のスキルという武器を手にした私は、自分の周りの人たちも変わりはじめたような気がしてきた。

2022年12月11日日曜日

限りある時間の使い方

 「人生のすべては借り物の時間」なのだとしたらー何かを選択できるということ自体が、すでに奇跡的だと感じられないだろうか。
(引用)限りある時間の使い方、著者:オリバー・バークマン、訳者:高橋璃子、発行所:株式会社かんき出版、2022年、86

定年延長を考えなければ、私も仕事ができる時間が10年を切った。この歳になれば、どのような時間の使い方、そして生き方が良いのかを考える。例えば、私の尊敬する稲盛和夫氏によれば、”仕事に打ち込んで、世の中に役立ち、自分自身も幸せだった“(致知12月号、令和4年11月1日発行、発行所:発売所:致知出版社、11)という生き方は、とても共感できる。

一方、時間の使い方の改善によって、生産性の向上を図るため、「タイムマネジメント」という言葉をよく聞く。つい、ダラダラと過ごしてしまうと、すぐに時は過ぎ去り、あとで人生の中で無駄な時間を過ごしてしまったと反省することも多い。

しかし、私は、このタイムマネジメントという言葉が好きになれない。ヒト(人)は、自然を支配できないように、果たして時の流れも支配すべきなのであろうか。

私たちが地球上に生まれ、過ごせる時間は、仮に80歳まで生きたとして、4,000週間ほどしかない。この極めて短い、限られた時間をどう過ごすかは、至極当然であるが、各個人に委ねられている。そんなとき、一冊の書籍に出会った。タイトルは、「限りある時間の使い方(株式会社かんき出版、2022年)」である。

この本は、いままでのタイムマネジメント関連の書籍と一線を画す。一言で言えば、決して抗うことのできない時の流れに対して、肩の力を入れず、人間らしく生きなさいという感じである。つまり、時間は有限であるということを認識しながら、効率化を目指すのではなく、問題が発生してもその状態を楽しむ。それによって、一人ひとりの人生が完成するということだと理解した。本書を拝読し、このブログの冒頭の記した「人生のすべては借り物の時間」と考え、私の人生は、時間の経過と比例するように、人生の瞬間、瞬間に“奇跡”がもたらされているという考えで、生きていくことが望ましいのではないかと思うに至った。

本書の中では、スウェーデンの哲学者、マーティン・ヘグルンドの次の言葉が登場する。「もしも、人生が永遠に続くと考えるなら、自分の命が貴重だとは思わないだろう(本書、78)」。

多くの日本人が好きな桜の花は、一年のうちに咲くのは一瞬だ。また、夏の風物詩とも言える打ち上げ花火も、藍や黒色のキャンパスともいえる夜空に、鮮やかで美しい大輪の花を一瞬だけ咲かせてみせる。長い地球上の歴史において、ヒト(人)の一生も一瞬だ。その儚さ故の尊さに、命を、そして時間を愛おしく、貴重だと感じるのであろう。そう考えていけば、時間の使い方は、目先の効率性を優先するのではなく、自然の時の流れの中で、もっと大局的に見て、それぞれの人生を完成させていくことが必要ではないかと感じた。

ただ、本書は、何も哲学的な、時間の使い方の概念だけでは終わらない。具体的な”時間の使い方“にも言及している。例えば、タスクを上手に減らす3つの原則の一つに、『優先度の「中」を捨てる』がある。これは、かの有名な投資家、ウォーレン・バフェットの話だとされているそうだが、「人生のやりたいことのトップ25をリストアップする。そして、重要なものから並べる。そして、上位5つのものに時間を使う」というものだ。タイムマネジメントのような効率化の罠にハマり、時としてヒト(人)は、時間を操り、何でもこなせそうな気になってしまう。しかし、本書の別の箇所で指摘しているように、「どんな仕事であれ、つねに時間は予想以上にかかる」ものである。限られた時間を有効に使うため、真に重要なタスクを確実に実行していく(これは仕事に限ったことではない)必要があると痛感した。

また、本書には、忍耐を身につける3つのルールや、本書の巻末には有限性を受け入れるための10のツールも紹介されている。その10のツールのうち、「ありふれたものに新しさを見いだす」がある。歳を重ねてきた私にとって、このツールは、妙に納得してしまった。もっと、この瞬間に与えられている人生のギフトに深く潜り込み、日常の内側に新しさを見つけていきたいと思った。

私たちを宇宙レベルで考えると、本書では、「あながた限られた時間をどう使おうと、宇宙はまったく、これっぽっちも気にしていない(本書、240)」とされる。

いままで、自分の人生は、そして人生の成功とはこうあるべきというものに囚われ過ぎた感がある。また、“限りある時間を効率的に使いなさい”と、周りから潜在的に植え込まれてきた気がする。

そんな考えを払拭し、肩の力を抜いて、自分の人生を選択して、人間らしく生きて、充実したものにさせよう。

そんな人生の意義を思わせてくれる一冊であった。

2022年12月3日土曜日

ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる 

 「マネジャーが、組織の成功のカギである。」これが、この本の一貫した主張です。
                               訳者:古屋博子

(引用)ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる、著者:ジム・クリフトン、ジム・ハーター、訳者:古屋博子、発行:株式会社日経BP、日本経済新聞出版、発売:株式会社日経BPマーケティング、2022年、383

 私は、ドラッカーが企業の目的を端的に表した次の言葉が好きだ。「有効な定義はただひとつ、顧客を創造することである」。例えば、Apple社製のIpadなどは、顧客の要求を取り入れたのではなく、顧客を作り出す(創造する)という発想から設計されているとも言われる。しかし、このたび発刊された「ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる(株式会社日経BP、日本経済新聞出版、2022年)では、新しい企業の目的、そして「これからの働き方」には、この「顧客の創造」というドラッカーの定義に加え、人間の潜在能力を最大限に発揮させることが含まれなければならない(本書、15)という。
では、ドラッカーの時代から何が変化し、これからの新しい企業の目的として何が求められるのか。私自身、大変興味が湧き、本書(ザ・マネジャー 人の力を最大化する組織をつくる)を拝読させていただくことにした。

まず、ドラッカーの時代と比較し、現代はどのように職場文化が変化したのだろう。本書の訳者である古屋氏が本書の「訳者あとがき」で指摘するとおり、著者のジム・クリフトン、ジム・ハーターは、ポストコロナを見据えている。本書は、新型コロナ前に書かれたというのにも関わらず。既に、今では働き方の主流となりつつあるリモートワークをはじめ、フレックスタイム制、ギガワーカー(伝統的な雇用主と従業員の関係ない人たち)、働く女性が直面する課題、そして定年を迎えてもなお働かれる再雇用社員に至るまで、本書は、新たな組織文化が求められている社会的背景を予見し、広くカバーしている。

本書では、現代の、そしてこれからの社会的背景をもとに、どのように新たに組織文化を変えていくかが試みられている。本書を読み、私が憂慮すべき点としては、日本人の94%が仕事に「エンゲージ(組織と従業員のつながり、「愛着心」の強さ)していない」または「まったくエンゲージしていない」という結果が出ている(本書、21)ということだ。これからは、従業員のエンゲージメントを高めるべく、我が国の企業文化や組織にも適合する、新たな時代に即したマネジャーが求められているのだと感じた。

本書は、CEO(最高経営責任者)、CHRO(最高人事責任者)、マネジャーに向けた参考書だ(本書、9)という。しかし、本書は、先ほどのエンゲージメントを高めるべく、我が国の管理職に広くオススメしたい内容であった。なぜなら、例えば本書では、「ボスからコーチへ」という章が登場する。その章のなかで、特に「コーチング 5つの会話」の中に登場する「クイックコネクト」は、重要ではないかと思った。このクイックコネクトは、メールや電話、廊下の立ち話でもいいのだが、マネジャーが様々な手段で短時間(1~10分)のやりとりを少なくとも週1回行うものだ。日本人の管理職は、部下などに対して、このような頻繁に「声がけ」することを苦手としているのではないだろうか。本書も触れているが、従業員は「自分が無視されている」と感じさせないためにも、クイックコネクトは有効であると感じた。ただ、私の尊敬する稲盛和夫氏は、部下から立ち話で報告を受け、その報告がおざなりになってしまった経験を活かし、それ以降、立ち話では、絶対報告を受けないようにしていたと言われる。クイックコネクトの手段については、真剣に部下と向き合うため、それぞれのマネジャーが自分のスタイルで、時間を確保していく必要があると感じた。

そして、部下との意思疎通については、マネジャーによる意思決定する際にもつながる。本書では、意思決定を下す場合の3つのポイントに触れられているが、私は、「自分の限界を知る」というポイントが好きだ。どうしても、自分の強み、弱みがある。そのなかで、部下なり、周りから意見を求めながら判断を下すのは、至極当然のことであろう。その際、部下とのコミュニケーション、そしてエンゲージメントが高い部下が周りにいなければ、的確な判断が下せず、マネジャーは裸の王様になってしまう。かつて私は、平成30年7月豪雨の際、総社市長として災害対応の最前線に立って指揮した片岡市長の講演を拝聴したことがある。そのなかで、片岡市長は、「決断は1分以内にすること」と言われていた。つまり、リーダーが迷って判断が遅れれば市民の命は失われると心に決めていたと言われる。その際の判断基準としては、「いま、自分の決断が市民のためになるかどうか」であった。危機管理においても、エンゲージメントの高い部下を周りに集め、そして意見を求め、最終的にリーダーは、自分の指針をもとに迅速に決断を下す。総社市がここまで災害対応で注目されたのは、片岡市長が企業で言うところのCEO的な役割を果たしたからであろう。

本書では、意思決定、コーチング、マネジャーの特性などが学べる。さらに本書では、自分や周囲の人たちの強みを活かすべく、能力開発の起点となる「クリフトン・ストレングス」が紹介されている。本書には、34の資質について概略が紹介されており、この資質は「実行力」「影響力」「人間関係構築力」そして「戦略的思考力」がわかるという。これを眺めているだけで、自分の強みや弱みが理解できる。

そして、優れたマネジメントを実現するため、チームを成功に導く12の質問が本書の途中と巻末に登場する。特に巻末では、12の質問の意図と、この質問を受けて最高のマネジャーは何をしているのかが詳細に解説してある。私は、12の質問中のQ4「この1週間の間に、良い仕事をしていると褒められたり、認められたりした」という問いが気に入った。我が国において、管理職は、部下を口に出して褒めたり、認めたりすることが苦手ではないだろうか。しかし,この行為は、冒頭の従業員のエンゲージメントを高めるためには有効であると感じる。あのディズニーでは、リコグニッション活動といって、キャストがお互いの良いところを認め、称えるメッセージをおくりあう活動があると聞く。また、キャストが自身を向上させる努力をしているときや、優れたパフォーマンスを発揮したとき、マネジメントの方が「Good Jobカード」を手渡しすると言う。このような習慣は、従業員のエンゲージメントを高めるために、とても有効な活動であると感じた。

本書の訳者の古屋氏は、『組織として本気で「マネジャーの成功」を後押しできているかが私たちに問われている』(本書、383)と言われる。それができなければ、ポストコロナにおける、新しい時代の組織文化は構築できず、マネジャーの役割も果たせなくなる。

ポストコロナも然りだが、我が職場においてもミレニアル世代(1980~1996年生まれ)やZ世代(1997~生まれ)が増えてきた。彼らの価値観を理解し、どのように潜在能力を発揮してもらい、人の力を最大化する組織をつくっていくのか。そのための解は、本書に書かれていた。現在の、そしてこれからのマネジャーに、是非本書をオススメしたい。特に、日本では、冒頭に記したとおり従業員のエンゲージメントが低く、新たなマネジャーの果たす役割が大きいと感じているから。

2022年11月23日水曜日

考える人のメモの技術

 「どうすれば自分らしく考えられるようになるのか?」
これが、この本で考えていきたいテーマです。
(引用)考える人のメモの技術 ―手を動かして答えを出す「万能の問題解決術」、著者:下地寛也、発行所:ダイヤモンド社、2022年、2

最近、私は自分なりの知的生産術にハマっている。その知的生産術を試行錯誤する中で、どうやって日常に溢れるニュースや記事などを収集し、分析し、アウトプットするのか。そして、私はアウトプットする際、そのニュースや記事などから、どのように自分は考え、行動に移せるのかを探究していた。
そんなことを思っていた矢先、最寄りの図書館で「考える人のメモの技術(ダイヤモンド社、2022年)」に出会った。著者は、Campusのノートで有名なコクヨの社員であるという。私は、文房具を知り尽くした社員さんによる知的生産術とはどのようなものか、大変興味が湧いたので、図書館で借りることにした。

さすが文房具メーカーの社員さんだけあって、メモの技術は、大変役に立つものばかりであった。まず、なぜメモを取るのかといった基準から始まり、どう書くべきか、そしてどう使うのかといった話に及ぶ。そして、インプットメモとアウトプットメモの2種類を使い分け、単にインプットに終わらない技術が紹介されている。

まず、インプットメモで感心させられたのは、「気づきを加えると、自分ごとになる」ということである。本ブログの冒頭にも記したが、日ごろ私は、あるニュースや記事に接して、それを自分らしく考え、実行に移すことが大切であると感じている。これは、確か、大阪府知事や大阪市長を歴任された橋下徹さんも同様のことを言われていたと思う。また、私もよく携帯のアプリ「News Picks」を利用しているのだが、「News Picks」では、それぞれのニュースや記事に対して、専門家や著名人による解説や意見が寄せられてくる。その解説や意見によって、私たちは、そのニュースや記事の持つ意味や背景を理解することができ、世論を見据え、自分がどのように行動すべきかが見えてくるのではないだろうか。

また、アウトプットメモについては、「コピー用紙の裏側でもいい」と著者の下地さんは言われる。このようにアウトプットについては、メモの体裁にとらわれないが、下地さんが提唱する「ノート3分割法」は、とても役に立つ方法であると感じた。早速、自分自身の仕事にも活用していきたいと思った。

ここで、問題になるのが、手書きをする場合、紙によるメモか、Ipadかということである。私の大学生になる子どもは、Ipad派であり、Good Notesを駆使している。その息子の姿を傍から見ていると、自分も専用のIpadが欲しくなり、ノートやメモとして使いたくなる。

しかし、Ipadにもデメリットはある。下地さんも触れているが、私はIpadをノートとして活用することにより、一覧性(スクロールをしないと全体が見られないような場合がある)といったことやブルーライトの影響が心配だ。ただ、Ipadを使うメリットもある(携帯性や検索性)ため、引き続き、Ipadの活用も考えていきたいと思った。

とにかく、下地さんの本を拝読すると、すぐに実行したくなる。早速、私は、本書で紹介されていたCampusのメモパッド(A4横サイズ)を購入して活用してみた。今まで存在すら知らなかったメモパッドだが、思いのほか、使い勝手がよかった(余計にIpadの購入が遠ざかりそうな気もするが)。

また、下地さんの短期的・中期的なメモ基準を参考にして、自分なりの基準も考えてみた。この基準により、自分がこれから収集し、自分なりに活用していくためのテーマやカテゴリーが明確になってくる。これにより、今後は、プライベートのテニス技術習得のこともメモされていきそうだ。

たかがメモ、されどメモ。知的生産には欠かせない、メモの奥深さを知る一冊であった。

2022年11月12日土曜日

日本の消費者がどう変わったか

 実際コロナ禍において、規模はまだ小さいながらも生産者が消費者にダイレクトに新鮮な食材を提供するD2C(Direct to Consumer)ビジネスが伸びてきている。
(引用)日本の消費者はどう変わったか 生活者1万人アンケートでわかる最新の消費動向、著者:野村総合研究所 松下東子、林裕之、発行所:東洋経済新報社、2022年、              177

消費者トレンドは、どの企業、どの事業者にとっても必要不可欠なものであろう。また、国や行政においても、消費トレンドを知ることは、施策を考えていく上で有用なものとなる。野村総合研究所(NRI)の生活者研究・マーケティングコンサルティングチームが実施するNRI「生活者1万人アンケート調査」は、1997年を初回とし、以降3年ごとに実施してきた。このたび、最新の調査となる2021年調査では、コロナ禍ということもあり、日本の消費者の価値観や意識・行動について、これまでにない変化が生まれたという。

確かに、新型コロナウイルスを契機として、外出自粛、テレワークの推進など、今までにない大きな変容が私たちの暮らしを襲った。それに伴い、各家庭の消費傾向も大きく変わったと思う。いま、日本の消費者のトレンドは、どのように変わってきたのか。それを知ることは、今後の私たちのライフスタイルの主流を知ることにつながる。

「日本の消費者はどう変わったか(東洋経済新報社、2022年)」を拝読すると、「やはり」と思うことが多い結果になっていることに気づかされた。まず、テレワワークである。2020年は、テレワーク元年と言われている。総務省やNRIの推計によると、日本のテレワーク実施者は1500万人以上、年間120日以上の本格テレワークは340万人にも上るという。コロナ禍において、私もテレワークを実施したことがあるが、メリットとしては、やはり通勤時間が不要であるということだろう。このたびのNRIの調査においても、テレワーク導入による通勤時間の削減が、約8割の就業者に新たな自由時間を生み出したという。そして、コロナ禍においてテレワークの業務を実施した人は、余剰時間を活用した資格取得、副業への意向が高く、会社への貢献意識も高くなることがわかった。そして、就業への満足度はより高い結果が得られることにつながった。私は、就業への満足度が高い結果が得られたことに、驚きを隠せなかった。なぜなら、私のテレワークのメリットは、先ほどの通勤時間の短縮であったが、それ以上にデメリットも強く感じていたからだ。それは、まず同じ職場の仲間とのコミュニケーション不足がある。近くに上司や同僚がいれば、相談も容易にできる。しかし、テレワークとなると、基本、パソコンを介してのコミュニケーションとなる。日ごろ私は、文字によるコミュニケーションの難しさを感じている。それは、例えば微妙なニュアンスの報告書が文字のみで上がってきた場合、確認する術も文字で質問するしかないからだ。会話をすると、「これって、こういう意味だよね」と言い方を変えて、自分が納得して確認できるが、テレワークでは、それが叶わないことが多い。また、職場の人間関係自体も希薄化する気がしている。私のような古い人間には、テレワークの良さに気づけないということであろう。私は、多様な働き方が大規模な会社から受け入れられているという事実を受け入れていく必要があると感じた。

ただ、人間関係の希薄化でいえば、若者たちも感じていることがわかる。2018年から2021年にかけての動きの年代を見ると全体的に生活満足度・幸福度が高まる中、10代の若者だけは下がっているという。これは、学生生活を送る上で、友との語らいが減少し、旅行やテーマパークへ行けなくなったことが要因として考えられる。コロナ禍において、家族へ帰属する意識が高まる中、貴重な10代の楽しみが奪われている。その溝を埋めるためのツールなり、新しい楽しみなりが必要であると感じた。

新型コロナを契機として、「アウトドア・キャンプ」や「ドライブ」の余暇活動が伸びているという。「ソロキャンパー」という言葉にも象徴されるように、密を避け、一人、自然の中に入り込んでいく。このコロナを契機として自分を取り戻す、もしくは自分を見つめ直すというかたが増えてきたということであろう。実際、アウトドア用品は、ホームセンター等に出向いても増えてきた。また、都心では、キャンプ用品のメーカーが自社のチェアを使ったり、テントを店内に設置したりして、喫茶店を営業している。より身近にアウトドアを体験できる機会が着実に増えている。

50歳を過ぎた私が心配するのは、今後の日本の家族のあり方である。結果を見ると、結婚はしなければならないものと考える若者が減少していること、男性の収入減少が結婚を控えるといった相関関係が明らかになっていること、子供は持ったほうが良いという意識が近年急激に弱まわっていることに危惧を抱いた。

イーロン・マスクは、「当たり前のことを言うが、出生率が死亡率より高くなるような何らかの変化をもたらさない限り、日本は消滅するだろう」とTwitterに投稿した。これは、日本の人口が2021年、過去最高の64万4000人減少したという記事のデータに対するコメントになるが、私もイーロン・マスクの意見に賛成だ。どうしたら、若者たちが未来に希望が持てるのか。それは、私たち大人が環境を整えて行く必要があると強く感じた。

冒頭には、コロナによって、どのように消費者トレンドが変わったのかという一例を引用した。今まで、「動く」ことによって得られたものがインターネットによって繋がり、流通そして消費者の距離が生産者とより一層近くなった。

本書には、コロナ禍収束後に戻るもの/戻らないものについて予想も掲載されている。これは、今後の消費トレンドを知る上で、とても参考になる。一例を申し上げると、コロナ禍で「増えた」けど収束後に「戻る」ものは、デジタルでの映画・音楽鑑賞、収束後でも「戻らない」ものはオンラインショッピングであった。一方、コロナ禍で「減った」けど収束後に「戻る」のは外食やグルメ・旅行、収束後でも「戻らない」ものは人付き合いや“飲みニケーション”であった。

確かに、2022年4月19日、米動画配信大手ネットフリックスは、会員数が10年以上ぶりに減少に転じたと発表した。しかし、その後ネットフリックス第3四半期に241万人増加し、上半期のかつてない規模の減少から一転し、予想を上回る力強い回復を見せはじめた。NRIが予想したトレンドがどのように推移していくのか。今後のネットフリックスの会員数が気になるところだ。

NRIによる「生活者1万人アンケート」は、新型コロナウイルスを契機として、最新の消費者傾向は、大きく変化した。今回触れなかったが、スマートフォン保有が半数以上となっている70代でもデジタル活用が進んでいない。そのため、我が国でデジタル推進をしてくためには、より一層の高齢者のデジタル活用が求められる。渋谷区では、65歳以上のスマートフォン保有していない区民に対して、2年間無料で貸出をしているという。

小型パソコンといわれるスマートフォンを所有することは、ネットショッピングに代表されるように買い物難民対策にも、またコミュニケーションツールとしても、さらには災害発生時における情報入手手段としても、あらゆる面で私たちの暮らしを守り、豊かなものにしてくれる。

いま、新型コロナウイルス、デジタル化の波が押し寄せている。それらの社会的背景をもとに、私たちの暮らしは、大きく変貌している。しかし、その根底には、私たち日本人の価値観も変わりつつあることが理解できる。本書を拝読し、新しいステージにおける、新たな生き方が消費者トレンドとして表れてきているのだと感じた。





2022年10月30日日曜日

論語と孫子

 彼を知り己を知れば、百戦して殆(あや)うからず(謀攻篇)
(引用)世界のビジネスエリートが身につける最高の教養 論語と孫子、著者:守屋洋、発行所:株式会社PHPエディターズ・グループ、2022年、191

著述家、中国文学者の守屋洋氏の最新刊が刊行された。私は、洋氏の息子、淳氏による「最高の戦略教科書 孫子(2014年、日本経済新聞出版)」を拝読したことがある。なぜ、孫子の兵法がビジネスに役立つのか。当時、感銘を受けたことを覚えている。

その淳氏も大いに影響を受けたであろう父親の洋氏による「論語と孫子(2022年、株式会社PHPエディターズ・グループ)」は、サブタイトルに「世界のビジネスエリートが身につける最高の教養」とある。今年90歳になられる洋氏(1932年生まれ)が、中国古典を通じて、私たち現役のビジネスマンに伝えたいこととはどんなことであろうか。私は、心して、拝読させていただくことにした。

本書は、そのタイトルどおり、「論語」と「孫子」のエッセンスを抜き出してまとめたものと言えるだろう。まず、「論語」とは、洋氏によれば、「あっさり言うと孔子という人物の言行録(本書、1)、」であり、「孫子」は、「孫武(そんぶ)という名将によってまとめられた兵法書(本書、2)」である。数ある中国古典から洋氏がこの2冊を選んだということは、大変興味深い。そして、本書の構成は、第1章として、「論語の人間学」、第2章として「孫子の兵法学」から成る。

本書は、すぐに読み終えることができる。それは、「論語」や「孫子」を読んだことがない人でも、まず、わかりやすい現代語訳が載っているからだ。

第1章の論語では、私の好きな言葉、「弘毅(こうき)」が登場する。これは、論語に登場するが、孔子の弟子である曾子(そうし)の言葉であり、あまりにも有名な「士は以って弘毅ならざるべからず」という一句である。洋氏は、「弘毅」という言葉を「広い視野と強い意志力」と訳す。この「弘毅」は、指導的な立場にある人物が持つべきものだ。なぜならリーダーは、「任重くして道遠し(責任が重いし、道も遠いからである)」と続いている。これは、徳川家康公の遺訓とされる「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。」を彷彿させる。

また、論語では、弟子たちが孔子について語っていることも興味深い。孔子は、1.主観だけで憶測していないか、2.自分の考えを押し通していないか、3.一つの考え方にこだわっていないか、4.自分の都合しか考えていないかという4つの欠点を免れていたという。この4つは、私も反省すべき点が多いと感じた。リーダーになればなるほど、自分の考えを求められる。しかし、私は、リーダーになっても、自分の考えを押し通そうとすると間違えることも知っている。そのため、私は、「自分はこう考えるが、どう思う?」と周りの人たちに聞くことが肝心だと思っている。また、自分の考えを押し通そうとすることは、どこかに私利私欲があるということだ。私の尊敬すべき、故稲盛和夫氏は、大きな役職を引き受けたり、また新たな事業を進めたりするとき、次の言葉を自問自答したという。「動機善なりや、私心なかりしか」。自分の都合ではなく、社会全体の公益を考える。そこに自分の都合(私利私欲)がなく、利他の心で行うこと。その考えのもとは、論語にあったのではないかと思うほど、世の中の成功法則は、長い間不変のものであり、共通しているものであると感じた。

第二部は、「孫子」である。本ブログの冒頭には、孫子の有名な句を引用した。この句は訳すまでもないが、守屋流に訳すと「敵を知り、己を知った上で戦えば、絶対に負けることはない」となる。では、敵を知り、己を知るとは、具体的にどのようにすることだろうか。守屋氏によれば、調査不足、希望的観測、思い込みなどの原因が重なり合って、判断を誤ることが多いと言われる。この句に触れるたび、私は、SWOT分析を思い浮かべる。SWOT分析は、自社の事業の状況等を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの項目で整理して、分析する方法である。これは、自社のみならず、自分自身、そして他社にも使えるものであり、「敵」と「己」を知るのに有効であると感じている。また孫子には、「敵も知らず、己も知らなければ、必ず敗れる」ともある。なにか物事を決断するとき、新規事業を立ち上げるとき、そして他社と競うとき、「敵」と「己」を事前に知っておく必要の大切さを改めて孫子は教えてくれる。

また、「孫子」には、武田信玄が好んで旗印として使用した「風林火山」が登場する。「疾(はや)きこと風の如(ごと)く、その静かなること林の如く、侵略すること火の如く、動かざること山の如し」。この風林火山について、守屋氏は、作戦行動における「静」と「動」の対比にほかならないと説く。つまり、「林」と「山」は「静」、「風」と「火」は「動」ということであろう。「孫子」では、短期決戦を目指せとある。その短期決戦の中においても、「天の時」と「地の利」を得る必要がある。まさに「天の時」という好機が訪れたとき、一気に疾風のように行動し、燃え盛る火のように攻撃をしかける。その「天の時」と「地の利」は、現在のビジネスにおいても、リーダーはしっかり見極めなければならない。かつて、私のリーダーであったかたも多数の前で挨拶をする時、「天の時」「地の利」という言葉を多用していた。なにごとにも「勝つ」には、時機があることを改めて認識させられた。

論語において、孔子は「年長者から安心され、友人からは信頼され、年少者からは懐(なつ)かれる、そんな人間に私はなりたい」と弟子に言っている。この一文に触れ、私は、宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を思い出してしまった。孔子と宮沢賢治に共通することは、人に対して謙虚であり、尽くすことであり、信頼を得ることであると思う。「雨ニモマケズ」も最後は「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」と締めくくられている。私も、人生の行き着く先として、孔子のような人間に少しでも近づきたいと思った。

本書の「はじめに」に書かれているが、守屋氏は人生の締めくくりをつける時期にきたと言われる。その長きにわたる中国古典の研究のなかから守屋氏が選んだのは、「論語」と「孫子」であった。つまるところ、この洋氏がセレクトした2冊のエッセンスを学ぶことができることは、読者として、なんと幸せなことであろう。生き方、リーダーシップ、君主たるものの心構え、そして兵法から導き出される戦略。現代は、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって開かれるsociety5.0の時代と言われている。しかし、このたび「論語と孫子」を拝読して、AIとかIoT、メタバースといわれる現代社会においても、中国古典は私たちビジネスマンが身につけるべき最高の教科書であり、時代の流れに左右されることのない、不変の教えであると改めて感じた。

2022年10月16日日曜日

エフォートレス思考

 知識はチャンスの扉を開いてくれる。
自分だけのユニークな知識は、永続的なチャンスを与えてくれる。
(引用)エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する、著者:グレッグ・マキューン、訳者:高橋璃子、発行所:株式会社かんき出版、2021年、221

「エフォートレス」とは、直訳すれば「努力を要さない」ことである。マーケティングや経営戦略に精通している人ならば、「エフォートレス」とは、CX(顧客体験価値)を高め、顧客満足度を向上させる要素のひとつとして注目されているキーワードだと思うことだろう。例えば、お客様がパソコン関連の商品を購入した際、その購入者が専門知識を有さずとも、努力を要さず(簡単な手順で)、接続させて利用できることを指す。また、コールセンターの社員は、いかにお客様がエフォートレスに問題を解決するかが求められる。

しかし、このたび発刊された「エッセンシャル思考(かんき出版、2014年)」で有名なグレッグ・マキューンによる「エフォートレス思考(かんき出版、2021年)」は、私たち個人が努力を最小化して、成果を最大化することに焦点をあてる。昨今、「働き方改革」やコロナ禍における「リモートワーク」の推進など、ビジネスシーンでは、いかに労働時間を短縮させ、効率化が求められるように感じる。しかも、今までの質をキープし、いやそれ以上の質向上を求められる成果を意識しながら。この反比例とも言えるテーマは、ビジネスシーンにおいて、永遠のテーマともいうべきものであろう。
では、このグレッグ・マキューンが提唱する「エフォートレス思考」を身につければ、どのように自分自身が変化し、最小の努力で最大の成果が得られるのか。私は、惹きつけられるように「エフォートレス思考」を拝読させていただくことにした。

本書は、まず、PART1「エフォートレスな精神」から始まる。
戦後、我が国が奇跡的な経済成長を遂げたのは、私たちの祖父や父の世代の活躍。つまり、高度経済成長期には、会社への忠誠心が高く、私生活は二の次でガムシャラに働く社員、いわゆる「モーレツ社員」の存在が大きかったのではないだろうか。本書では、「頑張りすぎは失敗のもと」と言い切り、「もっといいやり方を探し、余裕で成果を出す」ことに終始している。

エフォートレスな精神は、「どうしたらもっと簡単になるのだろう?」と考えたり、仕事と遊びを共存させたりすることによって養われる。そして、「感謝」の力によって、ネガティブな感情から力を奪い、ポジティブな環境が広がりやすいとしている。不満を一つみつけたら、感謝を一つ見つけるといった、グレッグ・マキューンが提唱する手法は、とても実践的だ。さらには、彼の日課、すなわち1静かな場所を見つけ、2体の力を抜き、3頭を落ち着かせ、4心を解放し、5感謝の呼吸することは、マインドフルネス的な実践法にもつながる。以前、私が読んだある書籍では、感謝の心を持って瞑想すると、脳波がアルファ波になると書かれていた。我が国では、「平常心(びょうじょうしん)」という言葉がある。アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズが“禅(ZEN)”に魅せられたように、本書を読み勧めていくうちに、エフォートレスな精神とは、まさに「平常心」を養うものだと気づかされた。

PART2は、「エフォートレスな行動」である。ゴールを明確にイメージし、はじめの一歩を身軽に踏み出す。そして、手順を“限界まで減らす”ことを忘れない。そして、この章で参考になるのは、「早く着くために、ゆっくり進む」ということだ。よく知られたことわざに「急がば回れ」がある。このことわざの真意は、「物事は慌てずに着実に進めることが結果としてうまくいく」ということであろう。本書でも1911年イギリスとノルウェーのチームによる南極点到達レースの様子が描かれている。具体的には、天気が良い日は進めるまで進む、天候が悪ければ休むというチームと、天候に左右されず毎日正確に15マイル進むチームの特徴があった。私は、がむしゃらに働けるときは、しっかり働いてしまうため、前者のチームが優勢だと思っていた。しかしながら、毎日着実に、休息を取りながら進んでいったチームが最後には、勝った。これは、自分の仕事の進め方、つまりエフォートレスになっていなかったと、反省せざるを得なかった。この着実なペースを作るには、「下限値と上限値を決めると良い」という、グレッグ・マキューン氏のアドバイスにつながっていた。例えば、毎日読書をするには、「1日5ページ以上(下限値)、1日25ページを超えない(上限値)」といった目標を決めるのは、とても有効であると感じた。

そしてPART3は、「エフォートレスの仕組み化」である。
この仕組み化では、学習化して一生モノの知識を身につけることを勧める。独自の知識を持つものは、信頼され、人もチャンスも集まってくる。まさに、本ブログの冒頭に記したとおりである。この知識を身につけるといったとき、本書に紹介されているテスラ社等の創業者、イーロン・マスク氏の言葉が深い。知識を一種のセマンティック・ツリー(意味の木)として捉える。そして、枝葉や詳細を見る前に、まず幹や枝、つまり土台となる原理を理解することだと。いま、私たちが得ようとしている知識は、木の根幹部分であるのか、それとも枝葉なのか。枝葉ならば、まず、根幹(土台)を理解しなければ、知識となり得ないということであろう。

突然であるが、私は、テニスが好きだ。私が40代に差し掛かったとき、中学校時代から続けてきたソフトテニスを捨て、硬式テニスに完全に移行した。そのとき、私は、恥も外聞もなく、初心者向けのテニススクールに通った。そのとき、コーチからは、硬式テニスの基礎(土台)を嫌なほど叩き込まれた。現在も私はテニススクールに通っており、中級クラスも脱するレベルに達してきたが、当時の土台がなければ、ここまで硬式テニスも上達しなかったであろうと思う。このような実体験からも、私はイーロン・マスク氏の言葉について、妙に納得させられた。さらには、一生モノの知識を身につけるということは、マネジメントの父であるピーター・ドラッカーが言われていた「強みを生かすことにエネルギーを費やす」ことにもつながっていると感じた。

そのほか、仕組み化で大事なことは、「自動化」することである。勝手に回る仕組みをつくるには、「自動化」が大切だ。例えば、慣れた仕事でもチェックリストを作るなど、自身の健康管理や家庭においても、応用できる自動化が本書には書かれている。まさに、ローテクとハイテクとの融合によって、エフォートレスな仕組みは出来上がっていくと感じた。


最終章では、グレッグ・マキューン氏の娘であるイヴさんについて書かれている。彼女は、神経の病に侵され、マキューン氏も相当心配されたことであろう。発病から2年経っているが、まだ完治はされていない。しかし、マキューン氏は、どんな困難に遭遇しようとも、今何かを選択する力が大切であると説く。それがひいては、エフォートレス思考につながるとしている。

仕事において、そして家庭において、困難はつきものである。しかし、どんなに大きな困難に遭遇しようとも、私たちは選択によって、よりシンプルで簡単な道を選ぶことができる。

エフォートレス思考とは、単なる仕事の省力化させるためではない。もっと人間らしく思考し、行動し、成果を上げる。この本来の「人間らしく」成果を上げるために、私はエフォートレス思考について、これからのビジネスシーンにおいて、最大の武器になると思うに至った。