「有名にならなくても小さな英雄はたくさんいる。そういう人になって。」
医師 中村 哲
(引用)2019.12.6 日本経済新聞朝刊記事
外務省のホームページによれば、持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標である。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。
例えば水。国土交通省によれば、日本を含めて9カ国しか水道の水をそのまま飲める国はないという。SDGsの目標6のターゲットの一つに、「2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。」とある。
命に直結する安全で良質な水は、我が国では、蛇口をひねれば当たり前のように供給されている。しかし、全世界を見渡すと、まだまだ未整備な国が多いという事実がある。
先日、アフガニスタンで突然の凶弾に倒れた中村哲医師。彼は、30年近く、医師でありながら、現地スタッフらと井戸1,600本を掘り当て、農業向けの灌漑用水路は13本整備するなど、アフガン復興に多大な功績を遺した。
「100の診療所より1本の水路」。中村さんは、不衛生な水によって乳幼児の死亡率が高いことから、医師という職種を超え、現地で水と食料を確保する活動をしてきた。
冒頭の言葉は、中村さんの母校、福岡高校で生徒たちにエールを送ったものだ。
SDGsのゴールを目指すのは、地球で暮らす人類にとって大切なことだ。しかし、そのゴールの達成を目指し、実際に未開発の地で取り組んでいくということは、誰もができることではない。中村医師にも、ここに至るまで、計り知れないご苦労があったと思う。
中村さんの遺志を引き継ぎ、SDGsの基本理念である「誰も置き去りにしない(No one will be left behind)」世界をつくっていくのは、今を生きる私たちの使命だと思う。
身近な地域のため、そしてこの地球に住むすべての人たちのため、今すぐ、私たちの出来ることから始めなければならない。
一人ひとりが「小さな英雄」になって、中村医師が目指した「真に平和な世界」、そして「みんなで生きる世界」の実現に向けて。
誰よりも、また、何よりも強い信念のもと、アフガンの地で人道支援を行ってきた中村 哲さんのご冥福を、心よりお祈りします。