2020年1月11日土曜日

SDGs経営


⑦共通言語の使用と目的の共有 
筆者はこれが最も重要だと思う。SDGsは、世界193カ国の合意のもとで策定されたことから、世界の共通言語としての性格を持つ。
(引用)QA SDGs経営、笹谷秀光著、日本経済新聞社、2019年、26

「まだまだ先のことだな」と思っていたが、本書を読んで、「あぁ、あと10年か」という思いに至った。その思いとは、国連が提唱する持続可能な開発目標、いわゆるSDGsの目標年次が2030年とされており、あと、10年しかないということだ。
外務省のホームページによれば、「持続可能な開発目標(SDGs)とは,2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,20159月の国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。」とある。この目標には、貧困、教育、エネルギー、気候変動など17分野のゴール、169の具体的なターゲットが示されており、我が国もSDGsを強く推進している。

冒頭の引用にあるとおり、「QA SDGs経営」を著した笹谷氏によれば、SDGsの重要性として、「共通言語の使用と目的の共有にある」としている。これは、それぞれ自分たちの住むまちや我が国が未来永劫、存続していくことを意味していない。共有言語を用い、地球規模で目的を共有することにより、SDGsは、地球全体で取り組んでいこうとするところに大きな意義がある。

笹谷氏によれば、SDGsの日本の進捗度は、調査対象162カ国中15位であると言う。しかしながら、日本は、SDGs目標のうち、ジェンダー平等、気候変動などで課題を残すが、他は非常に頑張っているとも言う。
読後、私は、笹谷氏の著書の巻末にあるSDGsターゲットのキーワード集を眺めてみた。
そこには、貧困をなくすこと、すべての人に健康と福祉を提供すること、質の高い教育が受けられるようにすること、安全な水の供給すること、住み続けられる街づくりをすることなどが列挙されている。これらSDGsのターゲットについては、既に国や各自治体で取り組んでいる項目も多い。例えば、日本では蛇口をひねれば安全で、安心な水が飲めることから、我が国は、世界からみて、まだまだ恵まれていることを改めて実感した。

だからこそ、我が国は、さらにSDGsのリーダー的存在にならなければならない。なぜなら、SDGsのキーワードは、「地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)」からである。

各自治体においては、今一度、SDGsの目標に沿って施策を展開しているかを確認する必要があろう。そして、公民連携などを推進していくことで、より施策を強固なものにし、より一層、強力にSDGsを意識した施策を推進していく必要があろう。また、各企業においても、SDGsを「他人事」ではなく、すべての企業で意識する必要があると思った。
笹谷氏の著書は、SDGsを基本からわかりやすく教えてくれる。地球に優しい自治体、そして企業は、今後も持続していくことだろう。SDGsは、私の尊敬する稲盛和夫氏が常に言われている「利他の心」にも通じているものがある。他人を思い、世界を思うことが、自分たちの住むまち、そして企業、牽いては地球全体の存続につながっていく。
地球上に住む一人ひとりがSDGsを理解し実践していくことが求められる。我々は、すぐにSDGsを意識した取り組みを開始しなければならない。10年後の世界が、安全で安心、そして世界が平和で地球に住む人たちが輝いたものになっていることを思い浮かべながら。




2020年1月4日土曜日

Smart City5.0


会津若松市が取り組んでいる市民主導型のスマートシティプロジェクトは、まさにSociety5.0そのものであると言えよう。ビッグデータプラットフォームを整備し、さまざまなデータを収集・分析。最先端の技術や知識を持つ企業や団体とコラボレーションすることで、オープンイノベーションを起こしている。市民の暮らしを網羅する「エネルギー」「観光」「予防医療」「教育」「農業」「ものづくり」「金融」「交通」の8つの領域をターゲットに、アナリティクス人材の育成にも力を入れている。
スマートシティの実現には、オープンな連携が不可欠だ。なぜなら、特定の企業や団体に限られた協業で得られる成果は限定的になってしまうためである。多岐にわたる市民生活を根本から変え、市民主導型のスマートシティを実現するためには、さまざまなステークホルダーが連携してくことが重要だ。

(引用)SmartCity5.0 地方創生を加速する都市OS、アクセンチュア=海老原城一、中村彰二朗著、株式会社インプレス、2019年、115-116

現在、我が国は、多くの課題を抱えている。少子高齢化、社会保障費の増大、そしてエネルギー問題など。このような高度経済成長期とは違う、新たなステージの到来を受け、ある地方都市では、データとデジタルテクノロジーを駆使して地方創生を図っていこうとする動きがある。あの2011年に発生した東日本大震災からの復興支援策としてスタートした会津若松市のスマートシティプロジェクトである。

意外にも、会津若松市が進めるスマートシティプロジェクトで大切にしている考え方は、鎌倉から江戸時代にかけて活躍した滋賀県の近江出身の商人による「三方よし」である。三方よしとは、「売り手よし」、「買い手よし」、「世間よし」という近江商人の精神をあらわしている。会津若松市では、三方よしを「市民によし」、「社会によし」、「企業によし」と再定義しているが、最先端のテクノロジーを駆使した地方創生を取り組みにおいて、古き良き日本人の精神を置き去りにしていない。

会津若松市に住んでいなくても、スマートシティが実感できるサイトとして、「会津+(プラス)」がある。これは、市民とのインタラクティブな情報共有を目指して、市民一人ひとりの属性情報に沿ってパーソナライズされた市民サービスのデジタル窓口である。言い換えるならば、「必要な情報を必要な人に届ける」というシンプルなものだ。その必要な情報を届けるという仕組みを構築するため、会津若松市では、さまざまなデータを収集・分析している。このデータ収集は、情報提供者が目的を理解して提供する方式、いわゆるオプトイン方式を採用している。また、データの信頼性を高めるため、会津+では、KPIを設けるなどしている。
この会津+のサイトは、市民や事業者だけではなく、外国人観光客にも対応している。私も会津+のサイトを閲覧してみたが、2018年2月からロボットのマッシュくんが答えてくれる「LINE de ちゃチャット問い合わせサービス」も始まっていた。デジタルデバイドを少しでも解消し、どの年代の市民にも、デジタルシフトしていこうとする会津若松市の姿勢を垣間見ることができた。

会津若松市の人口規模は、日本国民の1,000分の1である。しかし、会津若松市が取り組む実証実験や市民オプトインなどは、他の地方都市にも広がっていくことが期待される。それは、冒頭にも掲げた我が国の課題が、どの地方にも当てはまるからである。これらの課題を克服するため、最先端の科学技術を用いたSmart Cityの取り組みは、これからの地方都市に必要不可欠なものであろう。
ただ、単に最先端の科学技術を用いれば、国のいうSociety5.0の社会が生活者や観光客に受け入れられるわけではない。会津若松市の進めるSmart Cityは、そこに住む人たち、そして訪れようとする人たちが「主役」としているところに、あらなた時代の地方創生手法としての希望を感じた。

2020年1月3日金曜日

ブチ抜く力

なお、個人が大きな影響力を持つという点で言えば、今回、私が減量に挑戦した際に一番の学びになったのは「ストイックさは伝播する」という事です。

(引用)ブチ抜く力、与沢翼著、株式会社扶桑社、2019年、305-306

2020年の幕開けと同時に私が読んだ本は、与沢氏の「ブチ抜く力」であった。与沢氏の人生は、波乱万丈だ。大学在学中にアパレル通販会社を起業し、わずか3年半で月商1億5000万円の会社に成長させるも、6年目に倒産。その後、わずかな手持ち資金でネットビジネス界に進出し、現在は投資家として大成功を収めている。
そんな若き風雲児の著書は、令和という新しい時代を迎え、東京オリンピックの開催という記念すべき年の幕開けに相応しい内容であった。

私が一番感心したことは、与沢氏の「ストイックさは伝播する」ということであった。この言葉を目にしたとき、ふと、ピーター・F・ドラッカーのマネジメントにおける「真摯さ」という言葉を浮かべた。真摯さ、つまり、ドラッカーは、integrity(真摯さ)という単語を用い、まず、リーダーに必要なのは、integrityが必要だと説く。まず、自分自身がストイックに、しかも真摯に一つの物事に取り組むことは、周りの人達にも伝わる。その結果、大きな成果が成し遂げられるのではと感じた。

私の知り合いが関わっている、ある経営コンサルタントは、徹底的なプロ意識を持っていて、創業したてのかたたちに24時間365日、メールにて相談を受けているという。彼は、例えそれが深夜であろうと、すぐにレスポンスすることを心がけている。また、彼のアドバイスは、彼自身の過去の苦い経験をもとにしていることも踏まえていることから、「自分ができたので、あなたもできますよ」と、クライアントを勇気づけることも忘れていない。この経営コンサルタントも、与沢氏と同様、ブチ抜く力を持っていて、今後、さらに成功していくのではと感じた。

また、与沢氏によれば、成功者として一番強いと思うのは、「失敗を恐れず、種を蒔き続けられるタイプ」であると言う。まさに、この失敗を怖がり、最初からチャレンジしない人が多い。私も幾度となく失敗をし、苦い経験を積み重ねてきた。しかし、今、振り返れば、その失敗を繰り返してきたことより、身を持って痛みを知ることができ、次のチャレンジに生かしている。
ブチ抜く力とは、圧倒的な成果を出す力のことを言う。その先には、今まで見たことにのない世界が広がっている。そんなことを与沢氏は教えてくれた。