エグゼクティブにとって最も重要な仕事は「すでに起こった未来」を見つけることだ。そして、すでに起こった変化を新しい機会として利用するのが重要だ。
Peter F. Drucker
(引用)戦略の創造学 ドラッカーで気づき デザイン思考で創造し ポーターで戦略を実行する、著者:山脇秀樹、発行所:東洋経済新報社、2020年、38
ドラッカリアンには、たまらない一冊が出版された。
「新しい事業機会は、どうやって見つけるのですか?」
ピーター・F・ドラッカー経営大学院の学長まで務めた山脇秀樹氏は、2000年頃のある日、MBAの講義でひとりの学生から、痛いところをつかれた質問を受けたという。
大学で主にマーケティングを学んできた私だが、確かにイノベーションを起こす重要性はわかっていても、「では、そのイノベーションをどのように起こすのか」といった実践的な学びは乏しかったように思う。この学生からの核心をついた問いを受けて以降、山脇氏は、デザイン思考に向かったという。
コロナ禍の現在、このタイミングで出版された本書は、多くの事業者にとって光となると思った。それは、冒頭に引用したとおり、エグゼクティブにとって、最も重要な仕事は、「すでに起こった未来」を見つけることだからだ。
まさに今、新型コロナウイルス感染拡大防止に向け、国では、「新しい生活様式」提唱している。もはや、私たちは、この大きな変化・トレンドを見過ごすことはできない。
変化の要因は、ほかにもある。
人口減少に伴う社会構造の変化、5GやAI、IoTといった目覚ましい情報技術の進展、グローバル化した経済活動、環境保護に至るまで。国連の提唱するSDGsを含め、私たちの暮らしは、大きく変貌を遂げようとしている。
では、大きな変化に対応するため、何から始めればよいのか。それは、まず、自分たちのビジネスの意義を再認識したうえで、私たちには「どのような変化が起きているのか」、そして「その変化はどのような意味をもつのか」ということを自身に問いかけることから始めなければならないと感じた。
この本のおもしろいところは、ドラッカーだけでとどまらない。
本書には、競争戦略論の大家として知られるマイケル・ポーター氏も登場する。
ポーター氏の提唱する競争戦略の本質は、他と違うことをすること。つまり競争上の優位性を確立するために新しいポジションを既存産業内に見つけることである。
他にはない価値の提供をすることは、なにも事業者活動だけに留まらない。少子高齢化が進展する中、都市戦略、自治体戦略にも使えるのではないかと思った。山脇氏の書かれた「戦略の創造学」は、その都市に住むことの価値観、牽いては他にはないまちの魅力にも応用できるものと感じた。
本書のサブタイトルにもなっているが、ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する。山脇氏が教えてくれる「共感と未来を生む経営モデル」は、大きな変化が訪れている現代において、個々のビジネスにとどまらず、持続可能な社会を創造していくうえで、誰もが実践していく必要があると感じた。
それは、ドラッカーが言われる「マネジメントは何よりも結果を出すことに責任がある(引用、同書、246)」からだ。
2020年5月30日土曜日
2020年5月17日日曜日
糸島ブランド戦略
商品はモノですが、ストーリーをつけることでコトになり、モノだけの価値を超えた価値を消費者の皆さんに感じてもらえるようになります。
(引用)地域も自分もガチで変える!逆転人生の糸島ブランド戦略、税金ドロボーと言われた町役場職員が、日本一のMBA公務員になれたわけ、著者:岡祐輔、発行所:株式会社実務教育出版、2020年、140
「公務員にマーケティング力は必要か」。
その問いに対して、今まで行政の世界では、「不必要」との解ではなかっただろうか。
事実、以前、私も淡路富男氏による「自治体マーケティング戦略(学陽書房:2009年)を拝読したことがあったが、それ以降、行政とマーケティングの世界を結びつけた書籍は、あまり存在しなかったように思う。もちろん、私の敬愛するピーター・F・ドラッカーによる「公的機関の6つの規律」などは、行政をマネジメントするという視点において、一石を投じてきた。
このたび、私は、糸島市職員、岡祐輔さんの本を拝読して、やはり、行政にはマーケティングが必要と確信を得た。私も大学時代にマーケティング論や広告論を専攻している。久しぶりに行政マンである岡さんの口から、「3C」、「SWOT分析」、「マーケティングの4P」との言葉を聞き、私は、嬉しく思った。
本書は、地域ブランドをどのように確立していくのかというものである。そこには、マーケティング力と公民連携がキーワードとなってくる。本書を読んでおもしろかったのは、糸島産「ふともずく」を女子高生と組み、戦略を組み立てて関係者らとWin-Winの関係を築き、全国で糸島産ブランドを展開していった事例だ。少子高齢化が進展し、地方創生といわれる現在、地域ブランドを確立するということは、新たな行政の役割として重要視されることだと再認識した。
私が勝手に岡さんに親近感を抱くのには、もう一つ理由がある。それは、本書の中で、静岡県立大学 岩崎邦彦教授のことを紹介していることだ。
いざ、自分たちの住む街のことを考えると、地域ブランドを確立する「資源」がないと思ってしまう。そこで役に立つのが、岩崎氏が著した「観光ブランドの教科書(日本経済新聞社:2019年)だ。岩崎氏は、訪れた人が満足を得るには、「観光地」+「 」が必要と説く。そして、その空欄に入るものは、ありふれたモノかもしれないが、そこにストーリーを加えることによりコトになる。コトになったとき、それはその地域しかないオンリーワンになる。
地域は、魅力で溢れている。しかし、そこにマーケティングと公民連携がなければ、その魅力は埋まったままだ。岡さんと岩崎さんの書籍は、セットで読むことで、自分たちのまちをブランド化できる解決策があると感じている。多くの行政マンにも大いに参考になるはずだ。
岡祐輔さんの益々のご活躍を祈念します。
このたび、私は、糸島市職員、岡祐輔さんの本を拝読して、やはり、行政にはマーケティングが必要と確信を得た。私も大学時代にマーケティング論や広告論を専攻している。久しぶりに行政マンである岡さんの口から、「3C」、「SWOT分析」、「マーケティングの4P」との言葉を聞き、私は、嬉しく思った。
本書は、地域ブランドをどのように確立していくのかというものである。そこには、マーケティング力と公民連携がキーワードとなってくる。本書を読んでおもしろかったのは、糸島産「ふともずく」を女子高生と組み、戦略を組み立てて関係者らとWin-Winの関係を築き、全国で糸島産ブランドを展開していった事例だ。少子高齢化が進展し、地方創生といわれる現在、地域ブランドを確立するということは、新たな行政の役割として重要視されることだと再認識した。
私が勝手に岡さんに親近感を抱くのには、もう一つ理由がある。それは、本書の中で、静岡県立大学 岩崎邦彦教授のことを紹介していることだ。
いざ、自分たちの住む街のことを考えると、地域ブランドを確立する「資源」がないと思ってしまう。そこで役に立つのが、岩崎氏が著した「観光ブランドの教科書(日本経済新聞社:2019年)だ。岩崎氏は、訪れた人が満足を得るには、「観光地」+「 」が必要と説く。そして、その空欄に入るものは、ありふれたモノかもしれないが、そこにストーリーを加えることによりコトになる。コトになったとき、それはその地域しかないオンリーワンになる。
地域は、魅力で溢れている。しかし、そこにマーケティングと公民連携がなければ、その魅力は埋まったままだ。岡さんと岩崎さんの書籍は、セットで読むことで、自分たちのまちをブランド化できる解決策があると感じている。多くの行政マンにも大いに参考になるはずだ。
岡祐輔さんの益々のご活躍を祈念します。
2020年5月10日日曜日
WHO YOU ARE
文化は社訓や社是のようなものではない。一度つくれば終わりというものではないのだ。「基準以下の行いを放置しておくと、それが新しい基準になる」と軍隊では言われる。
企業文化も同じだ。
(引用)WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる、日本語序文:辻庸介、著者:ベン・ホロウィッツ、訳者:浅枝大志・関美和、発行:日経BP、発売:日経BPマーケティング、2020年、21
「HARD THINGS(日経BP社)」の著者、ベン・ホロウィッツ氏の第2弾は、企業文化に焦点を当てたものとなった。その企業文化のモデルとなった人たちは、ハイチ革命を指揮したトゥーサン・ルーベルチュール、モンゴル帝国を築いたチンギス・ハン、またアメリカの元囚人、さらには、武士道を重んじた日本の侍と幅が広い。
特に、1600年代には世界人口の半分以上は奴隷として使われていたというが、その奴隷制度の廃止、西半球で起こったアフリカ人奴隷の反乱の中で最も成功したと言われるハイチ革命を指揮したルーベルチュールの話は面白い。よく企業文化、戦略というと、兵法から学ぶことも多いが、ホロウィッツ氏もその一人だろう。
長らく絶望的な立場に置かれた奴隷たちがいかに戦争に必要なスキルを身に着け、一つに纏まり、行動することができたのか。それを率いたルーベルチュールは、どのように振る舞い、奴隷たちのモチベーションを維持させ、行動したのか。ルーベルチュールから学ぶことは、企業文化を構築する上で必要不可欠なものだと知った。
一方、ホロウィッツ氏は、偉大な文化があっても偉大なチームは作れないし、プロダクトがだめなら企業は失敗するとの指摘も忘れない。
しかし、数々の困難を乗り越えていくには、やはり企業文化による、気風、気質にかかってくる。根底にあり、土台となり、つつみ込むもの。私は、それが、企業文化ではないかと思った。
これらの本で紹介されている4つの事例は、いってみれば、バラバラだ。ルーベルチュールや世界最大の帝国を1000年前に築き上げたチンギス・ハンからはじまり、殺人の罪で刑務所に入りギャングたちを統率したシャカ・サンゴールまで至る。
ただ、ホロウィッツが取り上げた4つの事例は、それぞれの分野で”何かを変えていった”人たちであることから、共通する要素も多い。
企業文化を構築するのは、あくまでも人間である。私は、そこに属する人たちの人間らしさ、信頼、目的を共有した一体感が大事であると再認識させられた。
本書では、日本の武士道の代表的な著「葉隠」の一文も紹介されている。
「剛臆と言う物は平生当たりて見ては当らす。別段に有物也」
(勇気があるか臆病かは平時にはわからない。何かが起きたときにすべてが明らかになる)(引用) 同書、119
本書でこの一文に触れたとき、いまの新型コロナウイルスの感染拡大のことを思った。
我が日本人は、武士道を重んじ、固有の文化を築き上げてきた。
国民一人ひとりが勇気を持って、新型コロナウイルスを終息させる。
いま、その目標に向かい、臆病者でない日本人、そしてしなやかで強い日本文化を再認識して、行動する必要があると思った。
今、まさに、日本人全員が、”WHO YOU ARE”と問われているのだと。
改めて、偉大なるベン・ホロウィッツ氏に敬意を表したい。
企業文化も同じだ。
(引用)WHO YOU ARE 君の真の言葉と行動こそが困難を生き抜くチームをつくる、日本語序文:辻庸介、著者:ベン・ホロウィッツ、訳者:浅枝大志・関美和、発行:日経BP、発売:日経BPマーケティング、2020年、21
「HARD THINGS(日経BP社)」の著者、ベン・ホロウィッツ氏の第2弾は、企業文化に焦点を当てたものとなった。その企業文化のモデルとなった人たちは、ハイチ革命を指揮したトゥーサン・ルーベルチュール、モンゴル帝国を築いたチンギス・ハン、またアメリカの元囚人、さらには、武士道を重んじた日本の侍と幅が広い。
特に、1600年代には世界人口の半分以上は奴隷として使われていたというが、その奴隷制度の廃止、西半球で起こったアフリカ人奴隷の反乱の中で最も成功したと言われるハイチ革命を指揮したルーベルチュールの話は面白い。よく企業文化、戦略というと、兵法から学ぶことも多いが、ホロウィッツ氏もその一人だろう。
長らく絶望的な立場に置かれた奴隷たちがいかに戦争に必要なスキルを身に着け、一つに纏まり、行動することができたのか。それを率いたルーベルチュールは、どのように振る舞い、奴隷たちのモチベーションを維持させ、行動したのか。ルーベルチュールから学ぶことは、企業文化を構築する上で必要不可欠なものだと知った。
一方、ホロウィッツ氏は、偉大な文化があっても偉大なチームは作れないし、プロダクトがだめなら企業は失敗するとの指摘も忘れない。
しかし、数々の困難を乗り越えていくには、やはり企業文化による、気風、気質にかかってくる。根底にあり、土台となり、つつみ込むもの。私は、それが、企業文化ではないかと思った。
これらの本で紹介されている4つの事例は、いってみれば、バラバラだ。ルーベルチュールや世界最大の帝国を1000年前に築き上げたチンギス・ハンからはじまり、殺人の罪で刑務所に入りギャングたちを統率したシャカ・サンゴールまで至る。
ただ、ホロウィッツが取り上げた4つの事例は、それぞれの分野で”何かを変えていった”人たちであることから、共通する要素も多い。
企業文化を構築するのは、あくまでも人間である。私は、そこに属する人たちの人間らしさ、信頼、目的を共有した一体感が大事であると再認識させられた。
本書では、日本の武士道の代表的な著「葉隠」の一文も紹介されている。
「剛臆と言う物は平生当たりて見ては当らす。別段に有物也」
(勇気があるか臆病かは平時にはわからない。何かが起きたときにすべてが明らかになる)(引用) 同書、119
本書でこの一文に触れたとき、いまの新型コロナウイルスの感染拡大のことを思った。
我が日本人は、武士道を重んじ、固有の文化を築き上げてきた。
国民一人ひとりが勇気を持って、新型コロナウイルスを終息させる。
いま、その目標に向かい、臆病者でない日本人、そしてしなやかで強い日本文化を再認識して、行動する必要があると思った。
今、まさに、日本人全員が、”WHO YOU ARE”と問われているのだと。
改めて、偉大なるベン・ホロウィッツ氏に敬意を表したい。
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