2022年5月21日土曜日

だから僕たちは、組織を変えていける

 すべてのものにはクラック(ヒビ)があり、そこから光が差し込む。
There is a crack in everything and that's how the light gets in.
(引用)だから僕たちは、組織を変えていける、著者:斉藤徹、発行:株式会社クロスメディア・パブリッシング、2021年

長年、自分が働いて思っていることは、「チーム」の重要性である。特に、自分が管理職になるにつれ、「チーム」としての成果が求められるようになってきた。

なぜなら、私は、「チーム」の中に大谷翔平選手のようなスター選手がいても、他の球団に移籍(人事異動)してしまったことを経験している。その際、残されたメンバーで、今までどおりの水準を維持し、さらなる向上を目指していくために、何が必要だろうと考えたことがあるからだ。

私が考える良い「チーム」とは、
部下たちが自由闊達な意見を言ってくれること、
「チーム」内でメンバーが協力しあい、成果をあげていけること、
その「チーム」を率いていくリーダーは、トップダウン型ではなく、サーバントリーダーシップ型であることだと感じていた。

では、今までの経験から、良い「チーム」の条件は、これで良いのだろうか。また、より良い「チーム」を築き上げていくために、何が足りないのだろうと思い、斉藤徹氏による「だから僕たちは、組織を変えていける」を拝読させていただくことにした。

本を読み終えた感想としては、
著者の斎藤氏は、自分と嗜好が似ているなということ、
また斎藤氏は、とても親切な人だなということである。

まず、自分と嗜好が似ているということは、指揮者を置かないオルフェス管弦楽団からはじまり、サイモン・シネックの「WHYから始めよ!」、ガンジー、「7つの習慣」のスティーブン・コヴィー、さらには野中郁次郎のSECI(セキ)モデルに至るまで、幅広いビジネス書を読み、クラシック音楽に親しんでいることがわかる。これは、今までの自分の嗜好と合っていた。そして、斎藤氏はこれらの豊富な知見を、組織論のエビデンスとして用い、読者にわかりやすく解説してくれていた。
また、著者の斎藤氏が親切であるというのは、本書の巻末にQRコードが掲載されており、本書の章ごとのサマリーやイラスト・図などがダウンロードできることである。本書を振り返り、もう一度読み直すとき、サマリーなどは役に立った。

本書では、グーグルが発見した5つのチーム成功因子が紹介されている。その中で、「心理的安全性」というキーワードが登場した。この「心理的安全性」というタイトルの書籍も数多く存在している。良いチームを築き上げるには、メンバーが「心理的安全性」の上に置かれた状態にいることが重要であると再認識した。
そして本書には、このメンバーの「心理的安全性」の確保を前提として、リーダーはどうあるべきか、組織のモチベーションをどのようにあげていくのか、更には組織をどのように良い方向に持っていくべきなのかが書かれている。

そのためには、人と支えあいたいという関係性、自分自身の行動は自分で選択したいという自律性、そして最適な課題に挑戦し、達成感を味わいたいという有能感。これら3つの心理的欲求を同時に満たしていくことがメンバーの「意味のある人生」につながることを意識しなければならない。
そして、自分は1990年代にギャラップ社が実施した組織の生産性を測る「12の質問(本書245)」がとても役に立った。私は、自身の組織構築のため、この12の質問をメンバーの気持ちになり、そして投げかけ、組織を変えていきたいと感じた。

本ブログの冒頭の言葉は、カナダのシンガソングライター・レナード・コーエンの名曲「Anthem」の一節である。その言葉を新型コロナ対策で一躍有名になった台湾のデジタル担当大臣オードリー・タンは大切にしていて、本書でも最初と締め括りに紹介されている。

もし、自分がなにかの正義に焦り、怒っているのなら、それを建設的なエネルギーに変えてみる。こんなおかしいことが、二度と起きないためにできることはなんだろうと自問自答を続ける。そうすれば、新しい未来の原型をつくる道にとどまることができる。自分たちが見つけたクラックに他の人達が参加し、そこから光が差し込む。


一見、理不尽と思える出来事にも意味がある。その出来事に、意味を置き換え、前向きに、そして建設的に取り組んで行けば未来が開ける。閉塞感に愚痴をこぼすのではなく、自分たちが組織を変えていき、社会を変えていく。本書を読み、私は、オードリ・タンが大切にしている言葉を噛み締めながら、組織を、そして社会を変えていこうと思うに至った。


本書は、自分が自身の仕事を通じて感じていた良いチームの考えについて、エビデンスを持って説明してくれた。今までの自分のメンバーに対する態度を振り返り、組織を見直す良い機会にもなった。