私はパーパスでつながる人の連帯を「パーパスフッド」と呼んでいる。英語で書くと「PURPOSEHOOD」であり、ここでの「HOOD」はつながりや連帯のことを指す。
(引用)パーパスモデル 人を巻き込む共創のつくりかた、著者:吉備友理恵・近藤哲朗、発行所:株式会社学芸出版社、2022年、202
最近、よく「パーパス」という言葉を耳にする。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューにおいても、「PURPOSEパーパス 会社は何のために存在するのか あなたはなぜそこで働くのか(2021/10/6)」や、「パーパス経営(2022年6月号)」など、「パーパス」という言葉は、マーケティングの世界において、注目を浴びている。
このたび、利益の最大化を求めるビジネスモデルから、経済性と社会性を両立する目的でつながり、新しい価値を「共創」するという、「パーパスモデル(株式会社学芸出版社、2022年)」なる書籍が発刊された。
昨今、私の仕事も、企業や行政、大学などの研究機関や専門家、そして市民らと関わる仕事の度合いが増してきた。このパーパスモデルとは、パーパス(より良い社会を実現するための行動原理)を中心とした共創プロジェクトの設計図であるという。その設計図であるパーパスモデルは、鮮やかな4色から成り立っており、まるで吸い込まれるかのように見入ってしまう魅力もある。
では、なぜ共創プロジェクトの設計図が必要なのであろうか。
その本題に入る前に、パーパスモデルの作り方は、極めてシンプルだ。主として、基本、円形で成り立っており、図の中心にプロジェクトのパーパスである「共通目的」、周囲にその共通目的の下に集う「ステークホルダー」を書く。そのステークホルダーを属性に4色に塗り分けながら、個々のステークホルダーの「役割」と「目的」を描いていく。
次に、本書には、具体的なパーパスモデルも多数紹介されている。個人的には、世界遺産を舞台に海洋保全と発信に取り組む「宗像国際環境会議」の例が参考になった。
この会議は、行政、大学、企業、漁協・観光協会、宗像大社など、17のステークホルダーたちが年に1回集い、海の環境会議を議論する。そして、海の環境を守るため、議論だけでは終わらず、それぞれのステークホルダーたちが共創して海岸清掃や竹漁礁(たけぎょしょう)づくり、さらには世界遺産の観光と環境保護の活用を同時に実践するネットワークまで誕生したという。
その共創の主体であるステークホルダー、そしてそれぞれの役割と目的を明確にし、一つにまとめたのがパーパスモデルであると言えるだろう。そして、パーパスモデルを俯瞰すると、そこから新しい価値を生み出す可能性が無限に広がっているような宇宙的な感覚を覚えた。
しかしながら、本書の真骨頂は、本書の後半ではなかろうか。そこには、より良い共創を実現するためのポイントが列記してある。
いま、私は、ある共創モデルを立ち上げようとしている。そのため、本書の前半部分だけを読んでパーパスモデルを試作してみた。しかし、パーパスモデルの鮮やかなイメージばかりが先行してしまって、どうも違った。そこで、本書の後半部分に触れられているポイントを踏まえ、再度、パーパスモデルを作り直した。やはり、パーパスモデルは、あくまでも共創するための手段であって、目的ではないと思う。パーパスモデルの作成過程において、しっかりと手順を踏み、思考を深めていくこと。そしてなぜ、多様なステークホルダーたちが、一つの大きな目標(社会的課題の解決)に向かって共創し、新たな価値を生み出すことを視野に入れて進めていくことが肝要であると感じた。そこに、パーパスモデルが誕生した存在意義があると思うに至った。
本書を拝読し、今後、新たなパーパスモデルが次々と誕生してくのではないかと感じている。
理由として、私たちが解決しなければならない社会的課題は、今後益々多様化・複雑化していくと考えられるからだ。これからのビジネススキルの一つとして、「パーパスモデル」は有効であると感じている。今後、私の仕事を進めていく上で、欠かせない一冊となった。