2023年8月20日日曜日

時代を拓(ひら)くリーダーの条件 月刊「致知」より

 私が月刊「致知」を愛読して、もう何年になるだろう。この「致知」では、私自身、学ぶことが多い。

今月の「致知」(2023年9月号)の特集は、「時代を拓(ひら)く」であった。その「致知」45年の歴史を踏まえると、次代を拓くリーダーの条件は、次の6点のことが言えるのではないかと紹介されていた。このリーダーシップの条件は、Society5.0の時代を迎えた現代においても通用するものばかりだと思う。以下、私見を交えて紹介したい。


1 時代の流れを読み、方向を示すこと。

    確かに時代の流れを読み、方向を示すことは、リーダーシップの中でも重要なスキルの一つである。これは、変化する世界や社会の状況を的確に理解し、未来の方向性を予測する能力のことを指す。

 そして、私は、時代の流れを読み、方向を示すことは、絶えず変化する環境において組織やチームをリードする上で欠かせないスキルであると感じている。的確な予測とビジョンを持ち、柔軟に適応しながら、未来を導く道を示すことこそが、リーダーシップの一環として求められる能力と言えると感じた。

2 必死で働く。会社、仕事、社員に対する愛情と熱意は誰にも負けない。

  このリーダーシップの条件に触れたとき、私は、度々「致知」にも登場した稲盛和夫氏を思い浮かべた。仕事に対して、“ほとばしるほど”の情熱注ぎ込む。稲盛氏ほど、この表現が似合う経営者を、私は知らない。

 では、情熱となんであろうか。私は、情熱とは、仕事に対する真摯な熱意と責任感を意味すると考える。稲盛和夫氏のような成功者は、ただ単に仕事をこなすだけでなく、その仕事に対して心からの情熱を注ぎ込むことで、業績を上げ、周囲を魅了した。例えば、彼が創業した京セラでは、技術と製品への深い情熱が企業の成功の基盤となった。 

 そして、稲盛和夫氏は、日々の努力を惜しまない姿勢を持ち、自身の会社や社会に対する責任感を胸に刻んでいた。この情熱によって、彼は逆境を乗り越え、ビジョンを達成するために全力を尽くした。

 さらに、この情熱は、周囲にも感染し、共感を呼び起こす。稲盛氏の情熱が共感を持つメンバーや協力者を惹きつけ、組織全体が一丸となって目標に向かって努力するエネルギーを生み出したことは、稲盛氏によるJALの経営再生でも語り継がれている。

3 自分を磨き続ける。

 このリーダーシップの条件に触れたとき、私は、リスキリング(再スキル習得)のことを思い浮かべた。

 まず、急速に変化する現代社会において、リーダーは自己磨きを通じてリスキリングに注力することが求められる。リーダーは、自己磨きを通じて最新のトレンドや技術を把握し、組織やチームを変化に適応させる力を持つ必要があると考えるからである。

  また、 リーダーがリスキリングを重視し、新たな知識やスキルを習得する姿勢を見せることで、メンバーや従業員はリーダーシップに対する信頼を高める傾向がある。 

 さらに、リスキリングは、新たな分野や視点を取り入れる機会でもある。リーダーが異なる分野のスキルを身につけることで、クリエイティブな解決策やアイディアを生み出す能力を向上させることができる。例えば、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズは、精神世界にも傾倒し、日本の「禅」に辿り着いた。彼がこの「禅」を学んでいなければ、いまのアップルの誕生はなく、スマホもこの世に存在しなかったのではと言われている。経営は、人間を相手にする。そのため、経営とは一見かけ離れたように見える精神世界や文明・文化、歴史といった分野の学びも必要ではないかと感じた。

4 集団を幸福に導く。

 「集団を幸福に導く」という原則は、リーダーシップにおいて重要な価値観であり、組織やチーム全体の幸福を追求する姿勢を示す。私は、これも稲盛和夫氏のフィロソフィーである「全従業員の物心両面の幸福を追求する」を思い浮かべた。

 まずリーダーは、単に業績や利益だけでなく、従業員の物心両面の幸福を重要視する。それは、組織の一員としての幸福感は、従業員のモチベーションやパフォーマンスに直結するからだ。

  また、 リーダーは、従業員とのコミュニケーションを大切にし、彼らの声を聴く姿勢を持つ。この“傾聴”する姿勢があれば、リーダーは、従業員が自分の意見や考えを尊重される環境となり、共感と信頼が築かれ、集団全体の幸福感が向上する。

 さらに、リーダーは、従業員同士の協力や連帯感を促進する役割を果たす。稲盛氏のフィロソフィーでは、全従業員が幸福を追求する姿勢が組織全体のチームワークを向上させたのではないだろうか。

 そのほか、リーダーは、従業員の幸福を追求するだけでなく、社会的責任を果たす姿勢も重要である。稲盛和夫氏のフィロソフィーは、企業の成功が社会全体の幸福につながるとの信念を表している。

 このように、リーダーが従業員の物心両面の幸福を追求する姿勢を示し、信頼と連帯感を築き上げることで、組織はより良い方向へ進むことができるのだと感じた。

5 犠牲的精神。自分の都合より組織のことを優先する。

 「犠牲的精神」は、リーダーシップにおいて大切な価値観の一つであり、個人の利益や快楽を優先するのではなく、組織やチーム、社会全体の利益を優先する姿勢を指す。このリーダーシップの条件に触れたとき、私は、東日本大震災における福島第一原発事故で、当時陣頭指揮を執った吉田所長のことを思い出した。吉田所長は、目に見えない放射能の恐怖に立ち向かいながら、最悪の事態にもなりかねない原発事故に対して、果敢に立ち向かった。時に自分の命を投げ出してでも、組織、そして人々の安全のために戦う。この精神は、リーダーシップの重要な条件の一つであろう。

 また、「致知」にも登場する東洋思想研究家・田口佳史氏の解説を思い出す。それは、「書経」にある「先憂後楽」という言葉だ。この言葉は、リーダーは即時の快楽や個人的な利益をもとめるのではなく、憂うることは人に先だって憂い、楽しむことは人に遅れて楽しむという意味だ。

  まず、リーダーは組織やチームの一員として、他人の利益や幸福を自身の利益よりも優先する姿勢を持つことが重要だ。他人の視点を理解し、共感することで、信頼と結束を築くことができる。

 また、リーダーは、組織やチームの使命を果たすために、自己の快楽や個人的な利益を犠牲にすることを厭わない覚悟を持つ。困難な決断や責任を負うことに尽力し、長期的な成功に貢献する。

  さらに、犠牲的精神を持つリーダーは、即時の利益だけでなく、将来の発展や繁栄を追求する視点を持つ。短期的な困難を乗り越えて、長期的な目標を達成するために努力する。

  このように、リーダーの犠牲的精神は、他のメンバーや従業員に共鳴し、チーム全体の一体感を高める要因となる。この「犠牲的精神」を持つリーダーは、個人の利益を越えて組織やチームの成功を追求し、将来の発展を見据える力を持っている。この価値観は、組織の繁栄と共に、リーダー自身の尊厳と尊敬を築く要素となる。この犠牲的精神を持つ社員が多い組織は、どんな場面が訪れようとも、強い姿勢を保てるのだと感じた。

6 宇宙の大法を信じ、畏敬(いけい)し、その大法に則(のっと)り、行動する。

 偉大な経営者、松下幸之助氏は、人間には、この宇宙の動きに順応しつつ万物を支配する力が、その本性として与えられていると考えていた。

 宇宙の大法という概念は、この松下幸之助氏の哲学や宇宙観を通じて、リーダーシップの崇高な側面を表現している。彼の宇宙観は、個人と宇宙がつながり、共鳴する一部であるという深い信念に基づいている。この宇宙の大法の考え方は、リーダーシップを単なる経済的な成功や権力の行使だけでなく、より広い視野と哲学的な次元を持つものとして理解することを示唆している 

 まず、宇宙の大法に従うと、個人の行動やリーダーシップは単なる自己満足や個人的な成功だけではなく、組織や社会全体への貢献を追求するものとなる。松下幸之助氏は、個人が組織の一部として責任を持つことで、全体の繁栄と共鳴が実現すると信じた。 

  また、宇宙の大法は、宇宙の秩序や法則に敬意を払い、それに従って行動することを意味する。リーダーシップにおいても、組織や社会のバランスや調和を尊重し、持続可能な成功を追求するために宇宙の秩序を考慮する姿勢が求められる。 

 さらに、宇宙の大法は、個人の成長と組織の繁栄が密接に結びついているとの考え方を含む。リーダーシップにおいても、従業員やメンバーの成長を支援し、それが組織全体の成功に貢献することを大切にする。

 そして、 宇宙の大法に基づくリーダーシップは、一時的な成功や欲望に囚われるのではなく、持続可能な価値と調和を重視する。松下幸之助氏は、個人の行動が経済的な成功だけでなく、社会的な価値や調和にも貢献するべきだと説いた。 このように、宇宙の大法の概念は、個人のリーダーシップが単なる物質的な目標だけでなく、より壮大な価値や調和を追求するものとして捉えることを示している。

 まさに、宇宙の構成員として、私たちがいる。松下幸之助氏は、人間は、絶えず生成発展する宇宙に君臨し、宇宙に潜む偉大なる力を開発し、万物に与えられたるそれぞれの本質を見出しながら、これを生かし活用することによって、物心一如の真の繁栄を生み出すことができると考えていた。このことこそが、私たち人間が地球上に存在する目的であろう。

 この宇宙の法則を常に意識しながらリーダーシップを発揮することは、天からの助けが得られ、ひいては自身の成功につながっていくのだと感じた。

 以上、「致知」の次代を拓くリーダーの条件に触れ、私は、このようなことを思ったので、書き綴っておく。



  


2023年8月18日金曜日

THE GOOD LIFE

 健康で幸せな生活を送るには、よい人間関係が必要だ。以上。
(引用)グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない、著者:ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ、訳者:児島修、発行所:辰巳出版株式会社、2023年、18

「グッドライフ」は、読者に84年にわたるハーバード大学の研究成果を短時間で理解できる貴重な一冊であった。その手軽さと専門的な内容が結びついた本書は、健康で幸せな人生を追求する人々にとって興味深いものであった。

 この本は、著者が厳密な研究と集中的な時間をかけて築き上げた人間関係の重要性に焦点を当てている。膨大な研究時間を費やしたハーバード大学の取り組みが、人間関係が幸福と健康に果たす役割を浮き彫りにしている。被験者たちの人生のストーリーが織り交ぜられ、読者は自分自身の人間関係と照らし合わせながら、本書の中心テーマに引き込まれていく。

本書内で紹介されるWISERモデルは、人間関係の改善を目指す際に実用的な手法を提供している。このモデルを通じて、私たちはより深いつながりを築くためのステップを学び、自己成長の道を歩むことができることになると感じた。また、著者の研究結果が示すとおり、人々は共に過ごすことで幸福感を得ることができることを改めて認識した。

「グッド・ライフ」は、84年にわたる研究を通じて明らかになった人間関係の重要性を掘り下げた書籍であった。読者は、自分自身の生活において人間関係をどのように大切にし、豊かな幸福を追求するかについて考えるきっかけを得ることができる。著者の情熱的な研究と深い洞察に触れながら、本書を通じてより意義深い人生を模索する旅にでかけることができる。そんな、一冊であった。





2023年8月6日日曜日

AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方

 テクノロジー全般に対しての無知・無理解という問題は、日本も他人事ではありません。(引用)AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方、著者;伊藤穰一、発行所:SBクリエイティブ株式会社、2023年、271

私自身、ChatGPTとの出会いは、まさに驚きと感動に満ちていた。これまでのWeb検索エンジンとは全く異なり、ChatGPTは、まるで知り合いとの会話のように自然で親しみやすく、欲しい情報を瞬時に提供してくれる。その即座な反応に、私は一瞬でChatGPTの虜になった。

ChatGPTをはじめとしたジェネレーティブAIの活用方法は、実に多様だ。例えば、「自分は〇〇である。自分にふさわしい座右の銘を示せ」と入力するだけで、ChatGPTが私にぴったりの座右の銘を提案してくれる。そして、「故事成語から案を示せ」と続けて入力すると、ChatGPTは新たな案をサクッと示してくれる。私は、これらの対話が、私の日常にさりげなく溶け込んできたことに気づいてきた。それは、今まで自分の知識や知恵のみで勝負してきた実社会から、私たちの目に見えない、膨大な知識の宝庫にアクセスできるようになったことを意味する。私は、新たな喜びに似た感覚さえ覚えた。

このたび、伊藤穰一氏によって著された『AI DRIVEN(SBクリエイティブ株式会社、2023年)』は、AI時代の到来にふさわしく、興味深い書籍であった。特に、ジェネレーティブAIの活用による様々な局面での役立ち方が詳細に述べられているところが役に立つ。

まず、伊藤氏によれば、ジェネレーティブAIの力が我々の生活にどのように寄り添い、想像力を刺激するかに触れられている。伊藤氏によれば、ジェネレーティブAIの真髄が日常的に感じてきた面倒なことを解消し、着想の源を得て、アイディアを磨きあげることを主張する。普段から私もChatGPTを活用しながら、特にアイディアを磨きあげることの凄さを実感している。そのため、私はChatGPTと対話するときに、深い理論を追求する際のプロンプトが重要であることも経験している。私は、伊藤氏と同様、AIを利用する上で、より的確な情報を得るためには、適切なアプローチが重要だと感じているからだ。

一方で、ChatGPTは「嘘」をつくことがあるため、その出力を見極めることが大切である。そのため、ジェネレーティブAIは、信頼性に対する課題もあるため、AIの出力に対しては慎重な判断が求められる。この「嘘」であるが、私は密かに、本書でも触れられているマイクロソフトのBingに一筋の光を見出している。私は、今までChatGPTのアプリを活用していたが、2023年2月、マイクロソフトは検索エンジン「Bing」とウェブブラウザ「Edge」のニューモデルを発表した。そこには、最新版のChatGPT-4が搭載されており、誰でも無料で利用可能だということを本書で知った。早速、今までChatGPT-3.5を利用してきた私は、マイクロソフトのBingを活用してみた。このBingでは、会話スタイルを「独創性」「バランス」そして「厳密」で選べることが可能となっている。私は、より正確な回答がほしいため、「厳密」を選択してみる。そして、私の専門性のある仕事の質問をしてみると、Webで関連情報を検索し、見事、的確な回答を示してくれた。まだ、精度には、若干の不安があるものの、ChatGPT-3.5より精度の向上が見て取れた。そして、Bingでは、引用したWebサイトまでを示してくれた。また、AIがより精度の高い画像生成に取り組むことで、デザインやアートの領域での可能性が無限に広がっていくことも期待できる。これは、素質がなくとも、誰もが芸術家やデザイナーになれる可能性を秘めていることを意味しており、AIの力によって、私たちの創造性が加速されることに期待が膨らんだ。

一方で、本書で指摘されているとおり、AI生成時代の教育やリーダーシップに対する新たな要請が指摘されていることも重要な課題である。AIの普及により、人間とAIの共存をうまく進めるために、教育や指導者に対する適切なサポートが必要とされている。特に教育については、本ブログの冒頭に、伊藤氏による我が国のテクノロジーの進展が遅いことを懸念した文を引用した。かつて、哲学の父とも呼ばれるソクラテスは、自分に知識がないことを自覚するという概念で「無知の知」という考え方を示した。自分がいかに「無知であることを知っていること」つまり、「知らないこと」よりも「知らないことを知らないこと」のほうが罪深いとした。まずは、我が国も「これまで無知であった」ことを自覚し、未知の可能性に向けて好奇心を持ち続けなければならない。だからこそ、次代を担う子どもたちへの教育のあり方についても、AIとともに成長し、共存していく社会に対応していくものでなければならないのだと感じた。

『AI DRIVEN』は、ジェネレーティブAIの活用による未来の展望と課題について専門的な知見を示した、興味深い書籍であった。私は、AIの時代の道標となる本書を拝読し、AIの進化に対して、一層の興味と希望を抱くことができた。そして、今後もAI技術の進化を見守りながら、私たち自身や社会の成長とともに、新たなテクノロジーの進展によって、我が国の未来が輝きを増していくことを願った。


2023年7月9日日曜日

クレッシェンド 7つの習慣という人生

 自分の最も重要な仕事は常にまだ先にある

(引用)7つの習慣という人生 『クレッシェンド』 本当の挑戦はこの先にある、著者:スティーブン・R・コヴィー、シンシア・コヴィー・ハラー、発行所:株式会社FCEパブリッシング、キングベアー出版、2023年、30

『クレッシェンド』は、著者スティーブン R. コヴィーの遺作として、人生の後半における成長と可能性の追求を称える感動的な作品であった。

スティーブン・R・コヴィーは、ビジネス書のベストセラーである『7つの習慣』で知られている。『7つの習慣』は、私自身も何度も読み返したバイブルのような存在である。その中でも、私の心に残るフレーズは「インサイド・アウト」である。この考え方によって、周囲の人間関係が改善され、人生に大きなプラスの影響が生まれるのだと感じた。私は、スティーブン・R・コヴィーの世界に、完全に魅了されてしまった一人である。

そのコヴィー氏による遺作『クレッシェンド』は、コヴィー氏の深い洞察力と啓発的なメッセージによって、読者の心に鮮烈な感銘を与えてくれる。この本の冒頭で、コヴィー氏は「自分の最も重要な仕事は常にまだ先にある」と述べ、後半の人生においても新たな目標や使命を追求することの重要性を示唆している。歳を重ねることによって得られる知見と経験は、さらに「他者に幸福をもたらす」という人間本来の崇高な目的に近づく仕事をすることが可能になっていくことに気づかされる。

『クレッシェンド』に生きることは、貢献し、学び続け、影響力を持つことを通じて自己の可能性を拡大させることを意味する。この本は成功の真の意味についても探求している。それは、本書においてもラルフ・ワルド・エマーソンの言葉が引用され、「成功とは、世界を少しでも良くすること、自分が生きたことによって、ほっと息をつけた人が一人でもいると知ること(本書、103)」と結び付けられている。このエマーソンの言葉は、私たちがどの職業に就いていようと、私たちの使命になるものでないだろうか。この使命を全うすることにより、私たち人間は、真の成功を得たということになる。

『クレッシェンド』では、ビル・ゲイツ財団の取り組みやマララ・ユスフザイの信念の強さなど、実際の事例も取り上げられている。特に印象的だったのは、ビル・ゲイツの元妻メリンダの言葉である。「私たちは、自分のみに起きてほしくない、抱えたくない要素をもった人々を探し出し、彼らに烙印を押して追い出してきたのです(本書126)」という言葉には、深い重みがある。実生活において、私たちは、都合の悪い事実を見過ごす傾向がある。福祉政策においても、真に支援の必要な人々に十分な援助が行き渡っているのか疑問である。特に、母親による一人親世帯など、支援の狭間に埋もれ、苦しむ人々がいるのではないだろうか。SDGsでは、「誰一人取り残さない」という目標を掲げているが、言葉だけでは真の福祉政策は実現できない。メリンダの言葉を胸に刻み、一人ひとりが自らの使命を果たすまで責任を持つ必要があると感じた。

また、ビル・ゲイツやマララ・ユスフザイのエピソードは、リーダーシップの重要性や逆境に立ち向かう力の価値を具体的に示している。まだ15歳であったマララ・ユスフザイは命を狙われ、意識不明の重体になるほどの苦難を乗り越えながらも、「すべての子どもに教育を」という強い信念を今も持ち続けている。2014年、17歳でノーベル平和賞を受賞したマララは、なぜ、そこまで強い信念を持てたのだろうか。当時10代であったマララからは、本書にも登場するマザー・テレサやマハトマ・ガンディーにも類似する「真の貢献」の意味を学んだ。

『クレッシェンド』は後半の人生でも「クレッシェンドに生きる」ことができることを教えてくれる。特に本書に登場するRとI、つまりResourcefulness(知恵)とInitiative(率先力)を発揮することによって、たとえ一人でも大きな変化をもたらすことができる。お金や影響力の有無に関係なく、実現させるために行動することが重要だと感じた。

コヴィーは、この本を通じて、今を生きる私たちに「クレッシェンドな生き方をしなさい」というメッセージを送ってくれた。

本のサブタイトルには、「本当の挑戦はこの先にある」とある。いま、自分が、そして貴方が、何歳であろうと、社会を良くするための本当の挑戦は、これから始まる。

そう、「自分の最も重要な仕事は常にまだ先にある」のだから。

偉大なる、そして私の尊敬するコヴィー博士に改めて感謝を申し上げたい。


2023年6月25日日曜日

災害ケースマネジメント

 「災害ケースマネジメント」は、被災者一人ひとりに必要な支援を行うため、被災者に寄り添い、その個別の被災状況・生活状況などを把握し、それに合わせてさまざまな支援策を組み合わせた計画を立てて、連携して支援する仕組みのことである。
(引用)災害ケースマネジメント◎ガイドブック、著者:津久井進、発行所:合同出版株式会社、2020年、6

いま、自治体の防災分野では、「災害ケースマネジメント」が注目されている。では、なぜ注目されているのか。それは、大規模災害が発生して、概ね1カ月ほど経過すると、行政支援が行き届かない被災者が浮き彫りになる。この要因として、発災直後から、次の復旧・復興へのフェーズに移行した際には、主として行政による施策がハード対策に置かれ、被災者に寄り添った支援が行き届かなくなることが考えられる。それ以外にも、被災者は、各支援制度の狭間に位置して支援が受けられなかったり、「生活再建」という行政から用意された多層的な支援メニューを理解することが被災者にとって困難であったりすることも要因として考えられる。

「災害関連死」という言葉がある。これは、災害の生活上の影響で亡くなる社会死のことである。せっかく震災で助かった尊い命が、その後の災害後の生活によって亡くなっていく。内閣府では、「災害関連死事例集」を公表している。この事例集によれば、災害関連死されたかたの年代別では、東日本大震災で約 87%。熊本地震で約 78%のかたが、70歳以上の高齢者となっている。また、災害関連死の区分別では、「避難生活の肉体的・精神的負担(被災のショック等によるものを含む)」、「電気、ガス、水道等の途絶による肉体的・精神的負担」による死亡が約7割にものぼる。また、2016年に発生した熊本地震では、医療機関の機能停止等による初期治療の遅れも目立った。

本書によれば、復興のプロセスで新たな苦難を背負った人々の二次被害を「復興による災害」という意味で「復興災害」と呼ぶ。いま、行政としては、この「復興災害」対策にも力点を置くことが求められるようになった。

その「復興災害」の解決策として注目されるのが、「災害ケースマネジメント」であろう。この災害ケースマネジメントの発祥は、アメリカである。アメリカの危機管理マネジメントについては、大にして学ぶべき点が多い。例えばFEMA(アメリカ合衆国連邦緊急事態管理庁)による災害対応マネジメント、いわゆるICSは、一元的な指揮統制と目標管理型の導入といった特徴があげられる。特に、目標管理型については、行政の縦割り組織も一因となり、我が国における危機管理対応で最も不得手とするところではないだろうか。このICSでは、標準化された業務に対して、発生した災害を情報分析し、その対応について目標を掲げて対処する。ここでは詳細に触れないが、アメリカの危機管理マネジメントは、今後我が国の災害対策において、大いに参考になるものばかりだ。

その先進的な災害対応をしているアメリカを例とし、我が国においても、災害ケースマネジメントが注目されつつある。この6月(2023年6月)には、国による自治体に向けた災害ケースマネジメントの研修会を開催した。ただ、それより先んじて、鳥取県や仙台市などでは、既に災害ケースマネジメントが取り入れられている。特に、鳥取県は、ホームページ上で災害ケースマネジメントの手引きを公開している。まさに、この手引き書は、鳥取県内の市町村のみならず、これから災害ケースマネジメントに取り組む自治体にも大いに参考になる。特に、手引きの市町村版は、〇〇課と書かれたところを自身の自治体の担当課名に変えていくだけだ。津久井氏による著書とあわせ、鳥取県の手引きを組み合わせると、災害ケースマネジメントをスタートさせるための格好の材料となる。

災害ケースマネジメントが求められる背景として、本書でも指摘しているが、私は次の2点あると思う。1点目は、役所による「申請主義」だ。被災者は、自分の家の片付け等があるにも関わらず、役所に行って罹災証明などの交付を受けるための申請しなければならない。つまり、普段、私たちがよく手にするスマートフォンでは、プッシュ型通知があり、ニュースの速報や届いたばかりのLINEなどがトップに表示される。しかし、役所は、申請主義のため、被災者が自分の該当する手続きを「漏れなく」探し出し、それぞれの窓口に出向いて申請を行わなければならない。高齢化が進む現在、役所の手続きが複雑すぎて鬱陶しがる人たちも多い。一方、役所では、高齢で役所まで行けないという方々の声を聞いても、「申請がなければだめだ」と判断する担当者がいることも事実だ。そのような状況下の中、被災者と行政や支援機関を「繋ぐ」役割を果たすことが、災害ケースマネジメントの求められる要因の一つであろう。

もう一つは、先にも述べたが、被災者に対して、行政支援の行き届かない人が発生するということだ。こちらも本書で指摘されているが、被災者再建支援法では、「半壊」や「一部損壊」の世帯には、支援金が全く支給されない。また、指定避難所が開設されている間しか行政支援が被災者に届かないという声もよく聞く。

大規模震災後における被災者の生活再建は、概ね震災発生から1カ月を超えてからになるケースがほとんどだ。災害関連死を防ぐためにも、中・長期的に多層的な課題を抱えた被災者に寄り添うためには、行政のみならず、福祉関係機関、弁護士、ファイナンシャルプランナー、工務店などが連携して、被災者の生活再建をしていく必要がある。それこそが、本ブログの冒頭に記した、災害ケースマネジメントが求められる所以である。

SDGsの理念である「誰一人取り残さない」というフレーズは、よく見かけるようになった。このフレーズは、災害ケースマネジメントの導入によって、防災分野でも当てはめることができる。行政による防災施策は、ややもするとハード整備などに目が向けられがちだ。しかし、真の防災施策といえば、私は良好な避難所を整備したり、被災者に寄り添った支援をしたりする地道なものだと思う。

災害ケースマネジメントという施策に、派手さはない。しかし、私は、津久井進氏による書籍を拝読し、市民や県民、そして国民が求めている防災施策の今後の大きな柱として、災害ケースマネジメントは、これから我が国の防災施策の根幹を担っていくものだと感じた。



2023年6月3日土曜日

逆境リーダーの挑戦

 自ら返(かえり)みて縮(なお)くんば千万人と雖(いえ)ども吾(われ)往(ゆ)かん

(引用)逆境リーダーの挑戦 最年少市長から最年少知事へ、著者:鈴木直道、発行所:株式会社PHP研究所、2023年、127

著者の鈴木直道氏は、1981年生まれで埼玉県三郷市出身。その彼の経歴は、東京都庁、353億円の赤字を抱えて財政破綻した夕張市長に30歳で就任、そして38歳からは北海道知事に就任している。当時としては、本書のタイトルになっている「最年少市長、最年少知事」であった。現在は、芦屋市の高島崚輔氏が全国歴代最年少26歳で市長就任している。

鈴木氏は、夕張市におけるコンパクトシティなどの手法を用いた再生、そして北海道知事に就任してからは新型コロナウイルス対策で注目を浴びた。

この若きリーダーの施策はもちろんのこと、なぜ、彼はここまでの信念を持ち、北海道のトップとして、道政を担う人物になり得たのか。私は、大変興味をそそられ、鈴木直道氏による「逆境リーダーの挑戦(PHP新書、2023年)」を拝読させていただくことにした。

まず、本書では、新型コロナウイルスを題材として、彼の考える危機管理論に話が及ぶ。鈴木氏が本書で淡々と語られる言葉には、危機管理の要諦が詰まっている。例えば、「前例なき対策を打ち出すときは、誰かが腹をくくらなければならない」、「手さぐりの状態でもやれることはすべてやる」といったリーダー論から、「組織のトップはまさに広報マンとして伝える力が求められている」といったリーダーの役割に至るまで、参考になる言葉が並ぶ。北米大停電の際、当時のニューヨーク市長は、復旧の見通し、安心感をもたらす情報、二次災害への呼びかけなど、戦略的に市民への広報を実施し、高い評価を得た。危機管理時は、このようなトップによる戦略的な広報が重要なアウトプットになる。まさに、北海道から全国にまん延した新型コロナウイルスの対策に迫られた鈴木知事は、マスコミの前においてもわかりやすく道民に状況を伝え、感染拡大防止のお願いをした。まさに、危機管理時における戦略的広報が功を奏した新たな事例になったと思う。

現在、鈴木氏も直面しているのが行政の縦割りではないだろうか。鈴木氏は、夕張市長時代、国・北海道、そして夕張町の三者が年に1~2回、夕張に集い、その実情をその目で見た上で課題を出し合い、方向性を決めていった。鈴木氏は、「異なる環境で起きている問題を、異なる環境にいる人間の感覚で理解するのは難しい(本書、109)」と言われる。まさに、実際に現場を見て、「当事者」として必要な具体策を考え、方向性を共有する仕組みが必要だと鈴木氏は説く。まさに、いま、行政は、多様化する行政ニーズに対応するため、横串の対策に迫られる。その際、大にして、それぞれのセクションがそれぞれの立場で主張して、纏まらないケースが多々ある。それは、夕張であれば市民を見るべきなのに、自分のセクションを守ろうとする意識が強いことも要因の一つとしてある。まさに、鈴木氏が指摘する一つの課題解決のため、複数の関係機関が関係してくる場合、現場を知らないそれぞれの立場からモノを言われても、現場から一番近い立場の意見が伝わりにくい。すべての関係者が「当事者意識を持つ」ということ。その意識がないと、一つの課題でも多様化する現代においては、行政サービスが機能しないのだと感じた。

では、鈴木氏は、どうしてこのようにして一介の都庁職員から北海道知事まで登りつめることができたのだろうか。私は、本書を拝読して、2人の師匠の存在が大きいと感じた。その二人とは、鈴木氏が都庁時代に知事であった石原慎太郎氏と北海道で彼を財政面でも支えたニトリの会長、似鳥昭雄氏の二人の存在であろう。

まず、似鳥氏がよく口にする言葉は、「ロマンとビジョン」だと言われる。「ロマン」とは、世のため、人のために人生を懸けて「志」を持つことが「ロマン」。「ビジョン」とは、ロマンを持って仕事に向き合い、それを実現するために必要な目標や計画を持つことが「ビジョン」だと言われる。私は、「なるほど」と思った。「ロマン」とは、私たちが抱いている甘いムード漂う「ロマン」のイメージとは違う。似鳥氏の言われる「ロマン」とは、まさに男性的な意味合いであり、ビジネスで成功するための秘訣であった。

また、鈴木氏の父親的な存在が石原慎太郎氏であろう。都庁職員であった鈴木氏が「夕張市長に立候補する」と報告した際、石原氏は「裸ひとつで挑戦する若者を、俺は、殺しはしない」と言われたという。地方公務員が市長選に立候補とすることは、地方公務員を離職することを意味する。安定した都庁職員という立場を捨て、背水の陣で夕張市挑戦に挑んだ鈴木氏は、石原氏の応援が何より響いたことだろう。

また、冒頭、石原氏の座右の銘を紹介した。これは、孟子の言葉を引用したとのことだが、「自分自身を省みて、自らの行いが間違っていないと信念が持てるなら、たとえ相手が千万人いようとも敢然と突き進んでいく」という意味だ。ここで「信念」とある。鈴木氏も言われているが、リーダーは、孤独でありながら、決断を迫られることがある。その際、情報を収集し、自分自身の能力を最大限に生かし、その決断が間違いないという「信念」を持つ。そこまで確信をした信念であれば、あとは突き進んでいくだけだ。私は、孟子から石原氏、そして鈴木氏に引き継がれた言葉の重みを知った。

鈴木氏は、「良きリーダーは、人を勇気づけ、行動に駆り立て、周囲をも巻き込んでいく言葉を知っています(本書、127)」と言われます。

まさに、私もそのとおりだと思う。リーダーとは、決して、個人で何かを成し遂げようとしない。先ほどの「ロマン」を語り、周りの部下たちを”資源”と思いながら鼓舞し、「ビジョン」に沿って周囲を巻き込んでいく。そのようなリーダーこそが、これからの時代に必要だと感じた。まさに、財政破綻した夕張を変え、北海道を変えようと奮闘している鈴木直道氏、そのものだ。

裸一つで、誰一人知る者がいない北海道に乗り込んだ若者は、広大な大地に住む道民を巻き込み、リーダーとして率いるまでになった。

その鈴木氏の偉大なる足跡は、リーダーシップが何かを教えてくれる。

鈴木直道氏の書籍は、とても学ぶべきことの多い一冊であった。

ニューリーダーの今後ますますの御活躍を御祈念申し上げたい。


2023年4月22日土曜日

誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命

 鬼のようなリーダーシップを発揮するには、”覚悟“と”能力“の両面において、周囲よりも突出した強さを持つことが前提になります。
(引用)誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命 著者:森岡毅、日経BP、2020年、182

森岡毅氏といえば、USJの再建で有名だ。その手法は、コストを掛けずに、ジェットコースターを後ろ向きに走らせるなど、アイデアを連発したものであった。また、森岡氏は、グリーンピア三木と呼ばれた年金福祉事業団施設(現在はネスタリゾート神戸)を再建したことでも有名だ。その森岡氏によるリーダーシップの書籍を偶然、書店で見つけた。タイトルは、「誰もが人を動かせる! あなたの人生を変えるリーダーシップ革命(2020年、日経BP)」である。

リーダーシップに関する書籍は、ハーバード・ビジネス・レビューを始め、数多く存在する。しかし、森岡氏自身が「実務者が、本当に本人の言葉で書き綴った書籍は極めて稀(まれ)」と言われるように、数々の難題を解決してきた森岡氏ならではのリーダーシップとは、どんなものであるのか。私は、森岡氏のリーダーシップの真髄に迫るべく、本書「誰もが人を動かせる!」を拝読させていただくことにした。

まず、森岡氏によるリーダーシップを身につけることによって得られる絶大な3つのメリットが面白い。当然、森岡氏が言われるとおり、リーダーシップを身につけることは、「一人ではできないことでも実現できるようになる」こと、「劇的に経済的に豊かになっていく」ことは理解できる。3つめは、「自分の人生を生きる幸福感を激増させる」ことが可能になるという。さらに森岡氏は、「この宇宙は、本当に自分を中心に回っていたんだ」と思えるようになると言われる。本文中、この表現に出会い、私は正直、虚を衝かれた。故稲盛和夫氏は、「謙虚」、「利他の心」を重んじる。それは、天の代わりに、地上にいる私たちが選ばれ、リーダーシップを発揮するという中国の経書にもつながる考え方だと思う。しかし、森岡氏は、自分を中心として天が回っているといった考え方は、例えばイーロン・マスク氏のような西洋的なリーダーシップの考え方に近い気がしたと同時に、新しいリーダーシップの考え方だと感じたからである。

森岡氏のなかで共感したことは、3WANTSモデルである。これは、リーダーシップを発揮したいとき、「どうしても実現したいと本気で思える目的が明確であること」が大切であると森岡氏は説く。そして、これこそが「人を動かす根源」でもあると言い切っている。そのためには、3つの条件を同時に満たすことが必要で、3WANTSモデルの登場となる。この3条件とは、「巻き込みたい人々にとっても魅力的である」こと、「集団としての能力を必要としている」こと、そして「あなた自身が本気になれる」こととしている。この3WANTSモデルを聞いて、なるほどと感じた。仕事柄、私は、大学やコンサルトが連携する仕事も多い。しかし、私たちは、自分たちが困っていることの課題解決を提案しても採用されるケースが少ないことも実践知で知っている。それは至極当然で、相手方にとっても魅力的であると同時に、集団で能力を必要としているかどうかを満たしていなければ、相手は動かない。

森岡氏による書籍においては、「リーダーはやみくもに褒めることを主眼に置くべきではない」という視点も興味深い。本書でも触れられているが、「デール・カーネギー」による「人を動かす」では、「人を褒めること」が最も大切であると説いている。私は、自分の子供達も甘く育てている。つまり、「褒めて育てる」である。昨今、部下に対して叱ることも少なくなってきた。これは、叱るとパワハラと呼ばれ、叱られた部下も精神的に弱いのではと感じてしまうからである。それは、学校教育現場も同じで、部活動においても先生から叱られることはない。では、「褒める」ことにより、人は動き、伸びるのだろうか。

出口治明氏は、「座右の書『貞観政要』 中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」 (角川新書) 新書 (2019年)」の中で、心理学者マーシャル・ロサダによる「ロサダの法則(3:1の法則)を用い、「1回叱ったら3回以上褒めることが必要で、それ以上叱ってしまうと、人は自信を失ってしまう(108)」と言われる。いずれにせよ、「褒めるだけ」、「叱るだけ」という育て方は、自分の子供にも、部下にも共通することなのかもしれない。そのロサダ比が適切であるかどうかは、自身の実践知によって導き出すことが必要なのだろう。ただ、偏りはよくないということを森岡氏から学んだ。

森岡氏は、新型コロナウイルスのことも振り返り、危機時のリーダーシップにも触れている。人間は、恐怖によって、支配されてしまう。つまり、森岡氏は、「どこまで世間の非難に耐えられるのか」といった「社会的恐怖」に立ち向かうことの大切さについて解く。このことは、大規模災害時においても言える。近年、地球温暖化の影響等により、全国の風水害被害も甚大化している。その際、基礎自治体である市町村は、災害対策基本法に基づき、避難指示や緊急安全確保などの避難情報を発令する。その際、リーダーである首長は、寄せられた気象情報や被害状況をもとに決断を迫られる。そのとき恐らく首長らが考えることは、避難情報を発令しないことのリスク、つまり住民やマスコミからの非難を避けることを主眼において考えてはならない。あくまでも情報を取捨選択し、現在の状況と今後の見通しを総合的に判断し、本当に必要な発令をしなければ、住民は、乱発される避難情報について、“オオカミ少年”になってしまう。備えと同時に、どこまでのリスクに耐えられるのか。私は、森岡氏が責任回避だけのリーダーシップは必要ないと解いていると理解した。

私は、本ブログの冒頭に、森岡氏によるリーダーシップに必要な要素、つまり”覚悟”と”能力“について引用した。実践知によって得られた森岡氏のリーダーシップ論は、「自分が動くこと」ではなく、「人を動かすこと」についてのノウハウであった。そのために、リーダーは、リーダーシップを発揮し、人に動いてもらい、一人ではなし得なかった域に到達する。森岡氏によるリーダーシップは、数々の事業再生の経験から得られた貴重なものばかりだった。

リーダーは、”覚悟“と”能力“を持つべし。

私も肝に銘じておきたい。