知識はチャンスの扉を開いてくれる。
自分だけのユニークな知識は、永続的なチャンスを与えてくれる。
(引用)エフォートレス思考 努力を最小化して成果を最大化する、著者:グレッグ・マキューン、訳者:高橋璃子、発行所:株式会社かんき出版、2021年、221
「エフォートレス」とは、直訳すれば「努力を要さない」ことである。マーケティングや経営戦略に精通している人ならば、「エフォートレス」とは、CX(顧客体験価値)を高め、顧客満足度を向上させる要素のひとつとして注目されているキーワードだと思うことだろう。例えば、お客様がパソコン関連の商品を購入した際、その購入者が専門知識を有さずとも、努力を要さず(簡単な手順で)、接続させて利用できることを指す。また、コールセンターの社員は、いかにお客様がエフォートレスに問題を解決するかが求められる。
しかし、このたび発刊された「エッセンシャル思考(かんき出版、2014年)」で有名なグレッグ・マキューンによる「エフォートレス思考(かんき出版、2021年)」は、私たち個人が努力を最小化して、成果を最大化することに焦点をあてる。昨今、「働き方改革」やコロナ禍における「リモートワーク」の推進など、ビジネスシーンでは、いかに労働時間を短縮させ、効率化が求められるように感じる。しかも、今までの質をキープし、いやそれ以上の質向上を求められる成果を意識しながら。この反比例とも言えるテーマは、ビジネスシーンにおいて、永遠のテーマともいうべきものであろう。
では、このグレッグ・マキューンが提唱する「エフォートレス思考」を身につければ、どのように自分自身が変化し、最小の努力で最大の成果が得られるのか。私は、惹きつけられるように「エフォートレス思考」を拝読させていただくことにした。
本書は、まず、PART1「エフォートレスな精神」から始まる。
戦後、我が国が奇跡的な経済成長を遂げたのは、私たちの祖父や父の世代の活躍。つまり、高度経済成長期には、会社への忠誠心が高く、私生活は二の次でガムシャラに働く社員、いわゆる「モーレツ社員」の存在が大きかったのではないだろうか。本書では、「頑張りすぎは失敗のもと」と言い切り、「もっといいやり方を探し、余裕で成果を出す」ことに終始している。
エフォートレスな精神は、「どうしたらもっと簡単になるのだろう?」と考えたり、仕事と遊びを共存させたりすることによって養われる。そして、「感謝」の力によって、ネガティブな感情から力を奪い、ポジティブな環境が広がりやすいとしている。不満を一つみつけたら、感謝を一つ見つけるといった、グレッグ・マキューンが提唱する手法は、とても実践的だ。さらには、彼の日課、すなわち1静かな場所を見つけ、2体の力を抜き、3頭を落ち着かせ、4心を解放し、5感謝の呼吸することは、マインドフルネス的な実践法にもつながる。以前、私が読んだある書籍では、感謝の心を持って瞑想すると、脳波がアルファ波になると書かれていた。我が国では、「平常心(びょうじょうしん)」という言葉がある。アップルの創始者であるスティーブ・ジョブズが“禅(ZEN)”に魅せられたように、本書を読み勧めていくうちに、エフォートレスな精神とは、まさに「平常心」を養うものだと気づかされた。
PART2は、「エフォートレスな行動」である。ゴールを明確にイメージし、はじめの一歩を身軽に踏み出す。そして、手順を“限界まで減らす”ことを忘れない。そして、この章で参考になるのは、「早く着くために、ゆっくり進む」ということだ。よく知られたことわざに「急がば回れ」がある。このことわざの真意は、「物事は慌てずに着実に進めることが結果としてうまくいく」ということであろう。本書でも1911年イギリスとノルウェーのチームによる南極点到達レースの様子が描かれている。具体的には、天気が良い日は進めるまで進む、天候が悪ければ休むというチームと、天候に左右されず毎日正確に15マイル進むチームの特徴があった。私は、がむしゃらに働けるときは、しっかり働いてしまうため、前者のチームが優勢だと思っていた。しかしながら、毎日着実に、休息を取りながら進んでいったチームが最後には、勝った。これは、自分の仕事の進め方、つまりエフォートレスになっていなかったと、反省せざるを得なかった。この着実なペースを作るには、「下限値と上限値を決めると良い」という、グレッグ・マキューン氏のアドバイスにつながっていた。例えば、毎日読書をするには、「1日5ページ以上(下限値)、1日25ページを超えない(上限値)」といった目標を決めるのは、とても有効であると感じた。
そしてPART3は、「エフォートレスの仕組み化」である。
この仕組み化では、学習化して一生モノの知識を身につけることを勧める。独自の知識を持つものは、信頼され、人もチャンスも集まってくる。まさに、本ブログの冒頭に記したとおりである。この知識を身につけるといったとき、本書に紹介されているテスラ社等の創業者、イーロン・マスク氏の言葉が深い。知識を一種のセマンティック・ツリー(意味の木)として捉える。そして、枝葉や詳細を見る前に、まず幹や枝、つまり土台となる原理を理解することだと。いま、私たちが得ようとしている知識は、木の根幹部分であるのか、それとも枝葉なのか。枝葉ならば、まず、根幹(土台)を理解しなければ、知識となり得ないということであろう。
突然であるが、私は、テニスが好きだ。私が40代に差し掛かったとき、中学校時代から続けてきたソフトテニスを捨て、硬式テニスに完全に移行した。そのとき、私は、恥も外聞もなく、初心者向けのテニススクールに通った。そのとき、コーチからは、硬式テニスの基礎(土台)を嫌なほど叩き込まれた。現在も私はテニススクールに通っており、中級クラスも脱するレベルに達してきたが、当時の土台がなければ、ここまで硬式テニスも上達しなかったであろうと思う。このような実体験からも、私はイーロン・マスク氏の言葉について、妙に納得させられた。さらには、一生モノの知識を身につけるということは、マネジメントの父であるピーター・ドラッカーが言われていた「強みを生かすことにエネルギーを費やす」ことにもつながっていると感じた。
そのほか、仕組み化で大事なことは、「自動化」することである。勝手に回る仕組みをつくるには、「自動化」が大切だ。例えば、慣れた仕事でもチェックリストを作るなど、自身の健康管理や家庭においても、応用できる自動化が本書には書かれている。まさに、ローテクとハイテクとの融合によって、エフォートレスな仕組みは出来上がっていくと感じた。
最終章では、グレッグ・マキューン氏の娘であるイヴさんについて書かれている。彼女は、神経の病に侵され、マキューン氏も相当心配されたことであろう。発病から2年経っているが、まだ完治はされていない。しかし、マキューン氏は、どんな困難に遭遇しようとも、今何かを選択する力が大切であると説く。それがひいては、エフォートレス思考につながるとしている。
仕事において、そして家庭において、困難はつきものである。しかし、どんなに大きな困難に遭遇しようとも、私たちは選択によって、よりシンプルで簡単な道を選ぶことができる。
エフォートレス思考とは、単なる仕事の省力化させるためではない。もっと人間らしく思考し、行動し、成果を上げる。この本来の「人間らしく」成果を上げるために、私はエフォートレス思考について、これからのビジネスシーンにおいて、最大の武器になると思うに至った。