2012年9月3日月曜日

津波てんでんこ

東北地方には、「津波てんでんこ」という言葉がある。
津波が来たときは、親や子供たちに構わず、てんでんバラバラに逃げなさいということだ。

9月1日に放映された、NHKスペシャルにて、群馬大学の片田敏孝教授が次のようなことを言っていた。

確かに、「津波てんでんこ」という言葉は、ある意味、無情に感じる。
普通、災害にあったとき、まず、親は子供を探そうとし、子供は親を探そうとする。
「津波てんでんこ」の教えは、その行為を、一切否定しているからだ。

だが、あえて、親は、子供を信頼して逃げる。
子供は、親の迎えを待たず、信頼して逃げる。

生きていれば、また会えると信じて。
それが、先人たちが残してくれた「津波てんでんこ」の本当の意味だと思う、と。

災害が来る前から、いかに親子の関係を築けるのか。
普段からの備えが、信頼を生む。

実際、釜石市でも、親は子供を、そして子供は親を信じて、それぞれの場所から、一目散に津波避難所に逃げ、再会できたケースがあった。

先日、南海トラフにおける巨大地震の被害想定が発表された。
死者、最悪のケースをたどれば32万人。
しかし、死者32万人は、人々の避難行動によって、減らすことができる。

それは、釜石の子供たちが起こした避難3原則、

①想定にとらわれるな(ハザードマップを信じてはいけない。それを超えた災害が発生するかもしれないから)
②最善をつくせ(今置かれた状況でベストを尽くす)
③率先避難者たれ(まっさきに逃げることにより、ほかの人たちもついてくる。結果的に多くの人を助ける)

の実践にほかならない。

自分が被災しなければ、ほかの人を助けることができる。
災害大国日本において、少しでも私たちができること。
それは、ただ、最善を尽くして逃げるしかない。
逃げることを実践すれば、悲劇を最小限に食い止めることができる。
そんなことを、釜石の子供たちは、身をもって教えてくれた。

つぎの巨大地震が発生したとき、
第ニの「釜石の奇跡」を起こすのは、私たちだ。