2019年6月29日土曜日

無子高齢化


要するに、何よりも男女ともに安定した仕事を得ること、結婚して二人で働けば出産・子育てもできる経済力、それこそが少子化対策に必要なのである。

(引用)
無子高齢化 出生数ゼロの恐怖、前田正子著、岩波書店、2018

まず、「無子高齢化」というタイトルを見て、私は、「やられた」と思った。
そう、これから日本が直面する最大の加田は、「少子」ではなく、「無子」なのである。

この本が、他の「少子化本」と一線を画しているのは、著者の前田氏が横浜市副市長という経歴の持ち主であることから、行政的な立場から「少子化」の解決策についてのアプローチを試みている点である。
実際、本書で著者は、その対策案として、行政的な視点から5つの案を提起している。
その提起された5つの案から、私は、非正規社員や外国人労働差の増加、奨学金の返済問題、家事・育児時間の増加など、様々な要因が重なり合い、我が国は少子化が進展してきたことを改めて認識させられた。そして、少子化対策は、行政において、子育て担当部署のみならず、経済振興、教育委員会、そして男女共同参画や国際を担当する部署が連携をして対策を講ずる必要があるのではと感じた。まさに、あらゆるエビデンスを得て著者が主張するように、まず、少子化対策とは、若者が経済力をもつような基盤整備が求められるのではないだろうか。

2017年の合計特殊出生率は、1.43である。このままだと、早くも3世代目の時点で、日本で生まれる子供の数は半分になってしまう。

無子高齢化時代の予兆は、すでにわが国で始まっている。生産年齢人口の減少に伴い、外食産業やコンビニエンス業界では、人手不足により、営業時間の短縮などに迫られている。
今まで当たり前と思っていたサービスが受けられなくなる。著者は、このまま日本の農家の減少と高齢化が進めば、畑が急な傾斜にあって、機械化も難しいミカンが食べられなくなるのではと危惧している。

「無子高齢化」時代の到来。我が国は、他の諸国と比較し、いち早く、その時を迎える。
その時を変えるべく、私たちは、行動を起こさなければならない。
本書を読んで、いま、始めるべきことを始めなければと思った。