「勝てば官軍」というと、なにかむきつけな感じがするかもしれないが、そうではない。
ビジネスは勝たなければ価値はない。人生もまたしかり。
(引用)
勝てば官軍(新装版)、藤田田(でん)著、KKベストセラーズ、2019年、7
いま、経営本と言えば、哲学やVISIONを社長と社員と共有すること。また、いつも感謝の心を持つなどの類が多くを占める。
もちろん、私は、これらの本を否定するわけではない。むしろ、「心の時代」と言われる現代社会において、求められるのは、社員と顧客、双方が幸せになることであろう。
顧客を創造し、幸福を追求していくことこそが企業の持続的な繁栄につながっているということは、大いに共感できるし、私も実践していきたいところだと感じている。
しかし、藤田氏の本は、これらの経営本と一線を画す。そこには、現場で戦ってきた一人の男の想いが綴られている。そこに、「綺麗ごと」はない。
この本の復刻版が出版されたということは、藤田氏の考え方、数々の経営手法、そしてリーダーとしてのありかたに至るまで、今の時代にも求められているということであろう。
不思議なことに、本を読み始めると、藤田氏の情熱が溢れ出し、その情熱が瞬時に読者に伝わり、藤田ワールドに引き込まれる。まるで、藤田氏が目の前に立って、熱く話しかけているかのように。
なぜ、引き込まれるのか。
藤田氏にとって、経営とは、「戦い」なのであろう。その戦ってきた姿、そして勝ちにこだわる姿は、共感を覚える。と同時に、改めて経営の難しさも教えてくれる。
なぜ、藤田氏は、ここまで戦い続けたのだろうか。
きっと、藤田氏の根底にあるのは、アメリカや西欧文化の良いところを日本に取り入れ、「日本をもっと豊かにしたい」という想いがあったのだろうと思う。
では、なぜ、藤田氏は、勝ちにこだわり続けたのか。
藤田氏は、自分が勝たなければ、いつまでも諸外国から日本が取り残され、私たちの暮らしが豊かにならない。だからこそ、変えていかなければならない。という、壮大な使命がったのではないだろうか。
マクドナルドやトイザらスを日本に広めるなどした藤田氏は、残念ながら、もう、この世にはいない。
しかし藤田氏の遺した言葉や考え方は、これからも本書を通じて広く伝えられていくことだろう。
藤田氏が設立した「日本マクドナルド株式会社」は、アメリカで開かれたマクドナルド世界コンベンションで「世界一」だと紹介された。
ビジネス、そして人生は勝たなければ価値はない。
そう教えてくれる藤田氏の考え方を、今度は、「今を生きる」私たちが実践していかなければならない。
それが、牽いては、社会が、そして日本が豊かになることにつながるから。