2020年2月13日木曜日

敵は我に在り

勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。
                 野村克也
(引用)日本経済新聞 2020.2.12朝刊、「春秋」欄

プロ野球チームの「ヤクルト」を率い、3度の日本一を導いた名監督、野村克也さんが2月11日に亡くなった。
野村さん自身も戦後初の三冠王となるなど、その球界に残した偉業は、どれも華々しい。
しかし、その裏には、歴代最多の1563の負けを喫したことはあまり知られていない。

よく、私はテニスの試合をするのだが、運が運を呼び、なぜか勝ててしまうことがある。「なぜ、この試合に勝ったのかわからない」という不思議な感覚。でも、その勝ち試合の後は、「結果オーライ」ということで余韻に浸るだけで、その試合を省みることがない。

一方、負けるときは、散々だ。「あそこが上手くいかなかった」というのは、言われなくても、自分自身が一番良く知っている。
そこで、次に生かせるかどうか。それが、次の勝利につながっていくのだろう。

ビジネスの世界でも同じことが言える。よく、「多く失敗せよ」と言われる。最近、思うのだが、多くの若い世代の人たちは、失敗を恐れるのか、チャレンジすらしない。
しかし、目の前にある仕事に果敢に挑み、失敗し、反省し、次に活かす。スポーツもビジネスも、このサイクルがなければ、偉大な成果にはたどり着けない。

私の親戚の家には、名監督「ノム」さんの色紙が飾ってある。色紙のサインの横には、ノムさんの力強い字で「敵は我に在り」と言葉が添えられている。
生前、野村克也さんが書かれた本のタイトルにもなっているこの言葉も感慨深い。

目の前の仕事に果敢にチャレンジするのか、それともしないのかは自分自身。
自分を信頼して突き進むのか、それとも怖気づいて立ち止まるのかは自分自身。
さらなる高みを目指すのか、それとも現状維持でいくのかは、自分自身。
「自分はこの程度」とか、「少しでも楽をしよう」と思った時点で、すべての成長が止まる。私は、ノムさんの言葉を、このように解釈した。

まさに、敵は我に在り。
その信条のもと、自身の人生を歩みきった野村克也さんに、改めて敬意を表したい。

偉大な野球選手や名監督であった、そして、今もなお、多くのスポーツ選手やビジネスマンたちに影響を与え続ける野村克也さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
令和2年2月13日 宮本佳久