しかしここで一つ考えなければならないことで、しかもいつも忘れられがちな重大な要項がある。それは、文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実である。
寺田寅彦 「天災と国防」
寺田寅彦という人は、本当に未来を見据えていた人だと思う。
私たち人間は、文明の進化にあわせ、技術のチカラによって自然の脅威を封じ込めようとした。
しかし、過去の大規模災害において、”人間が自然の脅威に勝る”という幻想は、儚くも脆く、打ち消されてしまった。
そういえば、私の子供のころは、外で遊ぶことばかりで、家の中でインターネットやスマホなどのゲームに没頭することなんて考えられなかった。
現代は、圧倒的なスピードで、マネジメントの神様であるドラッカーが言うところの「顧客の創造」を各々の企業が実践してきたことにより、私たちの生活は、より便利に、より豊かになった。
”いままでこの世に存在しなかったもの”の登場により、私たち人間は、その”もの”に、期待し、頼り、そして生活の一部に組み入れて安心を得ようとしてきた。
しかし、いくら人間の叡智、技術力を結集させても、自然の脅威には、叶わない。
天災は忘れたころにやってくる。
寺田寅彦の警句を胸に、技術のチカラに頼るのではなく、いつの時代にも不変な、そして地道な防災対策をしていくことが肝要である。