部下がこれまで「絶対にできない」と思っていたこと、部下にとっての長年の懸案、こうしたものを解決することによって、「最初の衝撃」を与えることが重要だと考えたのです。マキャベリも名著「君主論」において、「統治者は最初に衝撃的な大事業を行うべき」という意味のことを語っていますね。
(引用) 実行力 結果を出す「仕組みの作りかた」、橋下徹著、PHP新書、2019年、84
本書は、大阪府庁1万人、大阪市役所3万8千人の組織を動かしてきた橋下氏が、どのように考え、行動し、結果を出してきたかという「仕組み」の作りかたを纏めたものである。
本書を読み進め、読者の対象となるのは、必ずしも自治体の首長のみではないと感じた。
例えば、冒頭の引用文。これは、何も首長に限ったことではない。私も人事異動のたびに、その異動先に何の課題が存在しているのかを把握するところから始める。
そして、異動先の職場が抱えていた課題に対し、私も橋下氏と同じだなと感じたことは、現状が悪いのであれば、ますはこれまでの方針の全否定から入ることだ。このことを橋下氏は、「逆張りの法則」と呼んでいる。
そして、新しい職場環境でいち早く、逆張りの法則によって見つけ出した方針を示し、実行する。ミドルリーダー以上の職員なり社員は、そのことを心掛けてインパクトを与えることが必要だと思う。
その姿勢を見せ、実際に結果を出す。これこそが、リーダーだと橋下氏は言いたいのだろう。
ほかにも、本書には、橋下氏自身が経験し、当時の実例を交えながら、具体的かつ現実的に巨大組織を動かすためのプロセス、そしてリーダーの在り方が描かれている。
自治体職員をはじめ、民間事業者で働く多くのミドルリーダー以上のかたに薦めたい一冊である。