厚生労働者の担当者
(引用)2019年8月1日付 日本経済新聞社夕刊記事
昨年度、全国の児童相談所で対応した児童虐待件数は、前年度比19.5%増で過去最多の15万9,850件であったという。
このような数字を見るとき、私は、「ハインリッヒの法則」が当てはまるのではと考える。この法則は、主として病院などのアクシデントの発生についての経験則によるものだ。1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというものである。
このハインリッヒの法則を当てはめてみると、顕在化した約16万件の児童虐待件数に対して、464万件の軽微な虐待の事例が隠れており、さらにはその背後には虐待に至る寸前だった4,800万件の異常が隠れている可能性がある。
もちろん、約16万件の件数には軽微なものも含まれているだろうし、一概に児童虐待件数にハインリッヒの法則を当てはめるのも無謀であると承知している。
しかし、私は、2019年4月1日現在の我が国の子供の数(14歳以下)は1,533万人ということから考えると、約16万件の児童虐待件数は異常に高いものと考える。また、その背後に隠れた、顕在化していない児童虐待数は、計り知れないものがある。
その虐待の対応に追われる児童相談所の体制が整わない。先ほどの記事によると、この18年間で児童の虐待件数は9倍も増加しているのに対し、児童相談所で対応する児童福祉司は2.6倍の増加にとどまっているという。
さらに、いまの児童相談所は保護者や子どもへの対応、関係機関との連携を一手に担わされていている感がある。
一般的に、子どもへの虐待が起こる要因としては、次の3つに分類されるといわれている。まず、1つ目は育児不安を抱えるなどによる「親の要因」、2つ目は経済的不安や核家族化の進展に伴う「家族の要因」、そして3つ目はお子さんが障害などを抱えてみえるなどの理由による「子どもの要因」である。
また、児童虐待のケースはこれらの要因が複雑に絡むことも多い。
児童相談所は全国で215箇所(4月1日現在)であるという。
そこで働かれているかたの負担を軽減するためにできることはなにか。
虐待防止は、行政や学校、そして児童相談所だけの責任ではない。
個人、家庭、地域社会、さらには子ども虐待防止を目的とするオレンジリボンのような非営利活動法人が一丸となって、まず、身近にいる子育て中の親や子どもたちを守り支えていくという「意識」を持つことから始めることが重要であると思う。
そこに住む人達が、次の地域を創る子供達を育てていくという当事者意識を持つことを。