2019年8月5日月曜日

3000万人の壁を突破したインバウンド

訪日客が急激に増加している今は、日本らしさ、その地域らしさといったものを見直すよいチャンスです。
私たち日本人が何千年も昔から文化を育んできたこの土地を、「歩いて」「遊んで」「食べて」「買い物をして」「触れ合って」「泊まって」体感してもらうことが、「旅游(りょゆう)」のあり方だと思います。

(引用)これからの都市ソフト戦略、藤後幸生著、角川書店、2019年、195

令和元年8月4日付けの日本経済新聞朝刊によると、「インバウンド」と呼ばれる訪日外国人旅行者は、昨年(2018)3,119万人で、3000万人の大台を初めて突破したという。

藤後さんは、著書の中で、普段私達がよく使う「観光」ではなく、「旅游(りょゆう)」という言葉を使っている。「観光」という言葉は、「視察」という意味を持っていたため、「存分に旅を楽しむ」といった、同じ中国由来の「旅游」という言葉のほうがしっくりくると藤後さんは提案される。

訪日客数でダントツなのは、大阪市中央区。実に訪日外国人旅行客の3人に1人が訪れた計算だ。先日、大阪サミット2019も開催されるなど、大阪は、無線Wi-Fiや多言語表示促進など、訪日外国人旅行者を受け入れる体制を着実に整えてきた。

また、大阪の魅力といえば、なんといっても「食」が充実していることであろう。食い倒れの街、大阪を代表する「道頓堀商店街」界隈は、魅惑的な大阪グルメの店で埋め尽くされ、賑わいを見せている。
また、私は、大阪の黒門市場を訪れるたび、訪日外国人旅行者が増えて来ていることを実感する。なお、余談になるが、黒門市場では、なんといっても生牡蠣がおすすめ。その場で買って、捌いてくれたものを、その魚屋さん特製のポン酢で食す。大きな生牡蠣を頬張るとこの上ない幸せな気分になる。

そのほか、同日付の日本経済新聞の記事によると、大阪の訪日客の増加を支えるのは、「日雇い労働者の街」として知られたあいりん地区周辺が、外国人バックパッカー向けのゲストハウスや民泊施設で目立つという。
このことから、訪日外国人旅行者は、安い民泊組と高級ホテル組の「二極化」されてきたと考えられるのではないだろうか。

訪日外国人旅行者の消費単価で3位に躍り出たのは、北海道占冠(しむかっぷ)村だ。恥ずかしながら、私は、日経新聞の記事でランキングされている占冠村というところを知らなかった。一般的に北海道旅行といえば、札幌、函館などの名前を思い出す。
しかし、占冠村を調べていくと、その村には、あの「星野リゾート トマム」がある。
夏は雲海が見られるテラスへ、冬はスキーへと楽しめることから、泊まりながら大自然を体感できることで人気があるのだろう。まさに、高級ホテル組ということができる。

占冠村では、星野リゾートという資源のみならず、近隣の美瑛や富良野などの有名観光地と組み、サイクルツーリズムを進めているなど、点(星野リゾート トマム)から面(広域観光推進)への展開を試みる。また、星野リゾートは、外国籍の従業員も多いことから、占冠村では、多文化共生の取り組みなども求められているという。

それぞれの地区で、それぞれのインバウンド戦略、そして課題がある。課題として、先ほどの占冠村では、星野リゾート以外を周遊してもらい、いかにお金を落としてもらうかということであろう。また、SNSの発達で、いきなり「人気スポット」になってしまい、受け入れ体制が整わないなどの課題、いわゆる「オーバーツーリズム」に対する解決策も求められる。

だが、人口減少などで国内の個人消費が見込めない我が国では、インバウンドブームを好機と捉え、経済の活性化につなげていくことが求められる。

今後、私も各地域のインバウンド戦略を注視していきたい。
それは、インバウンドを一過性のブームで終わらせず、永続的なものとして、まず、私の住む地域に定着させたいと思うからだ。