2021年10月17日日曜日

危機管理広報

危機管理広報の要諦は、「初動が大切である」の一言に尽きる。

危機発生直後は、危機の全容が分かっていないことが多い。
しかし、なんとなく、断片的な情報や事実から、憶測が立ち始める。
そして、状況が判明するにつれ、当事者の不安が広がる。

では、危機の全容が明らかになる前に報道機関に公表すべきであろうか。
自分の答えは、絶対に「イエス」である。

なぜ、危機の全容が明らかになる前に報道すべきか。
それは、当事者の身を守ることにつながるからだ。
報道の第一報は、「いま、このような状況が発生しています」と伝えるだけでいい。
客観的な事実のみを伝え、「原因は今のところ不明です」でもよい。
そして、いま、私たちがどのような対処をしているのかを伝えるだけで、立派な危機管理広報と言える。

偶発的かどうかを問わず、危機に遭遇したとき、速やかに報道機関に公表することは、マスコミからの追撃を最小限に抑えることができる。そして、包み隠さずに早い段階で公表することは、「当事者側は紳士的に危機に対処していくんだな」という安心感にもつながり、ニュースを受け取る側の感情も和らいでいく。その後は、続報というかたちで、報道機関に公表すれば良い。

ここで間違いを犯しやすいのは、憶測と再発防止だ。
まず、第一報のときは、憶測を立てて報道機関に発表してはならないということだ。

「いまは、ここまでしか分かっていません」
「なんで、こんなことが発生したのか、現在調査中です」
第一報は、こんな感じで良い。
極力、憶測を排除して、客観的な事実のみ、報道機関に伝えることが肝要だ。

次に、再発防止についてである。
危機管理広報は、再発防止策とセットで考える人が多い。
しかし、原因も特定できていない段階では、再発防止策は必要ない。
再発防止策を考えて報道発表しようとすると、いたずらに時だけが流れていく。
また、もしかしたら当事者側に瑕疵がないのかもしれないのに、なぜ再発防止策が必要なのかといったマスコミ側の質問にもつながる。
再発防止策は、原因が明らかになった段階で、公表すれば良い。
ただ、普段からの対策で、危機が未然に防げた場合もある。
その際は、普段からの対策について、しっかりと報道機関にアピールすることが必要だ。

自分たちの組織を守ろうとして、報道機関へ公表することを躊躇うリーダーも多い。しかし、速やかに公表しないと、危機発生から現在に至るまで、自分たちの組織が隠蔽していたとも受け取れられかねない。

実際に危機が発生したときは、勇気がいる。しかし、リーダーは、勇気を振り絞って、適切な時期に適切な内容を公表しないことのほうが、ダメージが大きいと心得たい。
このことは、今までの私の経験から、そう言える。