「決める」というのは、リーダーしかできないことです。
(中略)
私の決断や市の決定を、きちんと市民の皆さんに伝えること。できる限り誤解のないように伝えて、納得していただくこと。これは行政としての大切な役割です。
(引用)
福岡市を経営する、高島宗一郎著、ダイヤモンド社、2018年、78-79
これは、行政に限らず、どの組織でもいえることではないだろうか。
ただ、誤解してはいけないことは、全てがトップダウンではない。
様々な情報を集め、分析し、今後の方針案を取り纏める。
そして、このような施策をしたいと上司にお伺いを立てるボトムアップも大切である。
あくまでも、「決める」のはトップということだ。
それぞれ組織には役割がある。
行政でいえば、「伝えること」が大きな役割である。
高島氏は、アナウンサー出身の福岡市長ということもあり、分かりやすく伝えることにこだわる。
「広報戦略」という言葉がある。
かつて、私も広報部署に配属されたことがあるが、私は広報には、次の3つの役割があると考える。
一つ目は、自治体が行う政策を市民のみならず、市外にも発信する役割である。
自分たちのまちの魅力を発信する。それにより、観光や企業誘致などにつながる。そして、そのことが持続可能な社会を創ることにもつながると思う。
これは、シティプロモーション的な考え方であろう。
二つ目は、市民とコミュニケーションを図り、信頼関係を築く役割である。
かつてから、多くの自治体の広報は広聴機能も有しており、広く市民の声を積極的に聴こうという姿勢が見受けられている。現代でいえば、広聴機能の代表格は、双方向のやり取りが可能なSNSであろうか。
これは、シビックプライド的な考え方でもあろう。
シビックプライドとは、その名のとおり、市民が自分たちのまちに誇りを持つことである。そして、市民が主体的に動き、自分たちのまちを良くしていこうとすることも、シビックプライドの概念に含まれる。さらには、そのまちの構成員である事業所も住民と一体となって、まちを創造していく事例もある。
行政が総合計画などで描く未来の姿(VISION)を共有できているからこそ、住民たちが自分たちのまちに愛着を持ち、そして自発的に良くしようとするシビックプライドが醸成されていくのではないだろうか。
三つめは、危機管理的なものである。
これは、危機管理広報と言われるものである。とりわけ、危機管理広報のうち、クライシス・コミュニケーションは、重要である。
以上、三つの要素を踏まえ、各自治体は、広報戦略を立てていく必要がある。
高島市長は、特に危機発生時にSNSを使うことに積極的だ。
「広報の顔」が見えるからこそ、その情報を欲する人たちに届き、よく伝わっていく。
私は、防災部署にも配属されたことがある。
その際、危機管理時に情報を発信する際に気をつけることは、いかに迅速に、いかに的確に、そしていかに簡潔に、ということを学んだ。
「決める」ということ。そして決まったことを「伝える」ということ。
この当たり前の大切さを、改めて、高島市長から学んだ。