2019年3月20日水曜日

成就

強烈な意志、強烈な熱意、こうありたいという強烈な願望というものが伴ったときに、初めて物事というのは成就するんだと思います。

(引用)
誰にも負けない努力 仕事を伸ばすリーダーシップ、稲盛和夫著、PHP研究所、2019年、190

本書は、稲盛氏が社内外の主にリーダーに向けて話し続けてきたものをまとめたものである。

稲盛氏によれば、素晴らしいリーダーとは、
まずは、潜在意識に透徹するほどの、強く持続した願望を持つこと。
そして、自分の周囲にいる人たちに目標をはっきり指し示し、自分がシミュレーションしたことを集団の全員に説明して、それが成功するのだということを信じ込ませる雰囲気をつくることだと説いている。

稲盛氏は、自身が影響を受けた中村天風の考えかたを踏襲しつつ、リーダーのあるべき姿を確立した。

中には、物事がうまくいかなかったとき、周りの人のせいにして、誹謗中傷だけを繰り返すリーダーがいる。
中には、進むべきビジョンを示さず、組織に無関心なリーダーがいる。
中には、部下と意思疎通を図らず、組織のモチベーションをあげないリーダーがいる。

そんなリーダーに、人はついてくるだろうか。
いや、そんなリーダーには、誰もついていかない。

経営破綻したJALまで復活させた稲盛さんが確立した哲学は、どのような組織、どのような立場、そして、どのような仕事をしていても共通するものがあり、大いに参考になる。

誰しも、仕事を進めていく上で、大きな壁が立ちはだかり、それを乗り越えていけるか不安になる。

よく、人は言う。
仕事は、自己実現である、と。
しかし、仕事は、社会を創造することにもつながる。
よりよい社会を創るためには、そのビジョンを描けるリーダーが必要だ。

稲盛氏は、自身の哲学で、とてつもなく大きな壁を乗り越えた。

自問してみるといい。
いま、現実に私たちの前に立ちはだかる壁は、JALを復活させた稲盛氏が経験した壁より高いものであろうか。

いや、そんなことはないはずである。

そうすれば、自分の抱えている課題も小さく見えてくる。
稲盛氏からは、リーダーシップのあり方と同時に、勇気を持つことの大切さも教えていただいたように思う。

私の尊敬する稲盛和夫さんに、あらためて感謝したい。







2019年3月13日水曜日

思い込み

人の心にしみついた根拠のない思い込み。これが一番怖いんですね。
宮城県名取市 資料館「閖上の記憶」 語り部 渡辺成一さん

(引用)
日本経済新聞朝刊、平成31年3月11日朝刊、「春秋」欄

東日本大震災の発生から8年が経過した。
あっという間の8年だった。
しかし、被災者の方からすれば長い8年だったことだろう。
そして、今でも避難生活を余儀なくされてみえるかたも大勢いる。

本当にあの震災があって、津波があって、原発事故があったのだろうか。
8年という時が流れ、一番怖いのは、その事実が風化されていくことだろう。
風化させないために、渡辺さんのような語り部は、震災の怖さ、恐ろしさを伝承するうえで欠かせない。

東日本大震災発生当時、私も被災地支援のため、幾度となく、東日本を訪れた。
しかし、訪れることのできなかった土地が二つある。一つは福島。そしてもう一つは、閖上だ。
福島県は、当時、原発事故の関係で、立ち入りが制限されていた。
かつて研修で知り合った仲間が浪江町に住んでいた。
しかし、当時の福島の状況があまりに凄惨で、連絡も取れずにいた。

昨夏、私は、御縁をいただき、福島の地を訪れることができた。
いわき市から入り、第一原子力発電所の近くを通り、浪江町へと進んだ。
第一原子力発電所近くのバスからの車窓は、どの家の前にも厳重にグレーの大きな柵がしてあった。
自分の家なのに帰れない。
未だに復興途中であることを痛感させられた。

浪江町役場で研修仲間のことを聞いてみた。
残念ながらお会いできなかったが、彼女は、結婚して子供もいて、そして浪江町に戻ってきていた。
そのことを伺い、福島に一筋の希望の光が見えた気がした。

もう一つの場所が閖上だ。
訪れることができなかった。
いや、正確に言えば、閖上も訪れた。
つまり、閖上まで行ったのだが、その先が立ち入り禁止区域になっていて、警察官が通行止めを行っており、進むことが許されなかった。

その閖上を訪れる直前のこと。
私は、宮城県七ヶ浜町でボランティア活動をしていた。
その時に、偶然、閖上のかまぼこ工場で働いていたという女性と同じボランティアグループになった。
彼女は、東日本大震災直後、働いていた工場が流されたが、何とか自分自身も高台に逃げ込み、一命を取り留めた。
しかし、震災によって、失うものも多く、その後、彼女は、引きこもりになってしまう。

私がボランティアに参加したのは、震災発生から4か月後の夏。
ちょうどそのころ、彼女も精神的に落ち着き、自分自身を変えようとしてボランティア活動に参加したそうだ。

昨今、私たちの住む東海地方では、南海トラフ地震の発生が叫ばれている。
実際に発生すると、その被害状況は、東日本大震災より上回る可能性が高い。

何気ない日々の生活を送り、ありふれた幸せすら気づかないときがある。
しかし、大震災によって、人々の生活、そして考え方が一変する。
東日本大震災での経験は、私にそのようなことを教えてくれた。

天災は忘れたころにやってくる

もし、いま、南海トラフ地震が発生したら、
そのとき、「自分や家族だけは被災しない」と思い込んでいた自分を責めることになるだろう。

そうならないために、いま、できること。
日常の何気ない生活が送れ、自分の周りにいてくれる人たちに感謝し、大規模災害にも備える暮らしをしなければならない。

冒頭の渡辺さんのコメントを聞いて、ふと、そんなことを感じた。







2019年3月10日日曜日

AIM

A=Audience(聴衆):どんな属性の人に伝えるのか
I=Intent(目的):伝えることによって相手に何をしてほしいのか
M=Message(メッセージ):どんなメッセージを伝えてれば相手は行動してくれるのか

(引用)
スタンフォードでいちばん人気の授業、佐藤智恵、幻冬舎、2017年、265

AIMとは、ダートマス大学のメアリー・マンター名誉教授らが紹介したフレームワークだ。
このAIMは、今後、人とコミュニケーションをはかる際に意識したい。

このことについて、自分なりに解釈してみたい。

まず、A。それは、誰を相手に話すかということだ。
相手は単数か、それとも複数か。相手の年齢は、どこに住んでいるのか。
そして、忘れていけないのは、相手は「何が知りたくて私の話を聞きたいのか」
ではないだろうか。

次にI。なぜ、これを伝えなければならないのか。また、伝えることによって相手に何をしてほしいかである。
このことを明確にしなければ、相手に伝わらない。

そして最後にM。一番気を遣う部分である。また、多くの人は、このMに力点を置く。
相手に行動を起こしてもらうためには、ウィンウィンによるメッセージの構築を考えなければならない。
しかし、常にウィンウィンによるメッセージが構築できるわけではない。
中には、こちら側の一方的な理由で事業を廃止させ、住民の理解を得る場面も想定される。そのとき、相手側のウィンが見いだせないときがある。しかし、事業を廃止して、相手方にどのようなメリットがあるのかを執拗に探さなければならない。
そうしなければ、相手は動かない。

時として、人とのコミュニケーションは難しい。
意思疎通が図れないときもある。

しかし、このAIMを意識することによって、「伝える力」そして「相手が行動してくれる力」が芽生えてくる。

コミュニケーションを必要とする場は、仕事上ではもちろん、日々の生活にも数えきれないほどある。

相手は誰か。なぜ伝えなければならないか。そしえ、相手にどのように行動してほしいか。

常に意識しようと思う。




10箇条

1 自らが高潔な人物になることから始める
2 尊敬を得られることに投資する
3 周りの人を啓発する
4 達成したい目標を明確にする
5 共通の夢を形成する
6 全社員に情報を共有する
7 建設的な意見の相違を尊重する
8 謙虚にふるまう
9 ウィンウィンとなる交渉をする
10 信頼できる人を見極め、10箇条を注意深く実行する

(引用)
スタンフォードでいちばん人気の授業、佐藤智恵、幻冬舎、2017年、186-187

ジェットブルー航空は、アメリカのLCC航空会社であり、「北米エアライン顧客満足調査」1位の常連である。
インターネット検索をしてみても「ジェットブルー航空の神対応」ということで、多くの事例が紹介されている。
社員一人ひとりにホスピタリティ精神があったからこそ、ジェットブルー航空は、競争が激化しているアメリカの航空業界で生き残り、勝ち進んできた。

なぜ、ジェットブルー航空は、他社と差別化を図り、ホスピタリティ精神に満ち溢れているのだろうか。
これは、創業者のデビッド・ニールマン氏とスタンフォード大学経営大学院でジェットブルー航空の取締役を務めるピーターソン教授が築き上げた社風によるところが大きい。
では、どのように社風を築き上げたのだろう。
これは、デビッド・ニールマン氏らが前述の10箇条を実践してきたからにほかならない。
その10箇条の核には、「人間性」がある。

3月24日は、ホスピタリティの日である。
人にあたたかな会社は、これからも継続し続ける。
そのために、この10箇条を意識していこう。

3月の静かな雨が降る休日に、そんなことを思った。