強いブランドには、尖りがある。
京都は、「伝統」で尖っている。北海道は、「おいしい」で尖っている。沖縄は、「海」で尖っている。東京は、「活気」で尖っている。
(中略)
尖。「大」の上に「小」が乗っている。小さな地域が、大きな地域を超えるには、尖りが欠かせないということを、この字が教えてくれている。
(引用) 地域引力を生み出す 観光ブランドの教科書、岩崎邦彦著、日本経済新聞社、2019、82-85
全世界のGDPの約10%を生み出すと言われている観光産業は、どの国も、また自治体も積極的に取り組みたい施策であろう。
ただ、やみくもに自分たちの住むまちの良いところを写真に撮り、複数の写真を使ってポスターを製作し、その横にはキャッチコピーを並べたとしても、観光客は来てくれるだろうか。
答えは、「NO」である。
この「地域引力を生み出す 観光ブランドの教科書」は、観光施策の根幹をなす「観光ブランド」に特化した実践本だ。自分の住むまちを観光ブランド化するならどうしたら良いかという視点を持って、読み進めてみた。わがまちには、観光のトップブランドである北海道や京都、東京に勝る観光資源があるのだろうか。そして、どのようにしたら、自分たちの地域を有名観光地に負けない観光ブランド化できるのだろうか。この本には、どこのまちでも“尖った観光ブランド戦略”ができる手法が述べられている。
しかし、ただ、どの自治体も観光ブランド戦略を進め、多くの環境客が訪れれば良いのか。2019年10月27日の日本経済新聞の記事によれば、今、話題になっているオーバーツーリズムの発生メカニズムが掲載されていた。観光客が増えると、公共交通機関が混雑し、観光に対する地域住民の反感や嫌悪感が生まれ、持続可能性が低下するという。
京都市では、京都市観光協会(DMO KYOTO)がオーバーツーリズム対策事業をWebに公開している。その事業ミッションは、「特定の時期や時間帯、一部の観光地に観光客の需要が集中することを和らげ、一年を通して京都市域全域で観光客が楽しめる環境を創り出します。」としている。
「観光ブランドの教科書」でも、独自の分析によって、「観光大国」の幸福度を掲げているが、観光大国と言われるフランス、スペイン、米国などは、外国人旅行者数が多いものの、その地に住む人たちの幸福度は総じて低い。
必ずしも、「観光客が多い=その地域の住民の幸福度」にはつながっていないという実態がある。
岩崎氏は、観光施策の目的について、観光客の数を増やすことではないとし、あくまでも「地域が元気ならないといけない」と主張する。
まさにそのとおりだと思う。これからの時代は、量より質の観光、そして持続可能な観光のスタイルが求められる。
地域住民と観光客がともに満足できる地域づくり。「観光ブランドの教科書」を読み、そのことを理解して、観光ブランド化をすすめる必要があると感じた。