参謀とは意思決定者を正しく動かす役割を負い、それを実現するために最適な仕事をデザインする人物
(引用)プロフェッショナル経営参謀、著者:杉田浩章、発売:日経BPマーケティング、2020年、25-26
この本は、BCG(ボストン コンサルティング グループ)日本代表の杉田氏によって書かれた。本を読み進めていくうちに、私は、杉田氏による「経営参謀」をテーマにしたセミナーを受講しているような錯覚を覚えた。それは、杉田氏による参謀力のノウハウが、私自身の仕事を振り返る機会にもなったからだ。杉田氏と私の仕事の分野は全く異なるが、杉田氏による経営参謀力のベースは、どの分野の仕事でも通ずるものがある。
これから私は、「仕事の面白みは?」と誰かから聞かれたとき、「経営参謀力」と答えようと思う。
参謀とは、何も管理職に限ったものでもない。意思決定者である上司に対して、いかに伝え、いかに上司を正しく動かし、最適な仕事をデザインしていくか。杉田氏も巻末で書かれているとおり、「経営参謀とは、未来のトップリーダーの予備軍である(同書、308)」ことから、全てのワーカーにとって、経営参謀力は、これからのキャリアアップに欠かせない武器となる。上司の与えられた問いに答えを出すのではなく、上司に正しい問いを突きつけ、経営層に意思決定を迫る。組織全体の方向性を決定づける力こそが、参謀力の醍醐味であると感じた。
本を読み進めていくと、経営参謀の「典型的なコケる10のパターンからの学び」がある。このコケるパターンは、たとえば「トップの指示を鵜呑みにしてそのまま受け入れる(同書、77)」など、日々の仕事で、誰もが経験しているであろう事例に遭遇する。
また、本書の後半に纏められている経営参謀としての「32の能力」にも学びがあり、日々の仕事に意識して取り組んでいきたいと思う事項ばかりが羅列されている。その中で、特に共感できたのが、その道の専門家や有識者と対面し、会話することによって生きた知識を得ることである。私も、職場を異動するたびに、その道の専門家をさがし、対話を重ね、そこから知識を得て、仕事に生かしてきた。その副産物として、それぞれの道の一線で活躍しているかたたちと懇意にさせていただき、自分の人脈にも幅を広げることができたと思う。
さらに、参謀としての能力の一つに「変化を面白いと捉える感受性を持つ(同書、248)」というものがある。新型コロナウイルスの感染による新たな生活様式が求められる現在、私達の暮らしも大きな変化が求められる。その変化をチャンスと捉えるか否か。これは、まさに私たちの参謀力にかかっていることだろう。
惜しみなく経営参謀力のノウハウを教えてくれた杉田氏の本を、多くの人におすすめしたい。