災害報道には、
①災害は、大ニュースだ。読者・視聴者の関心も高い。
②情報の整理分析よりも速報性が重視される。
③瞬時に大量の紙面または放映・放送時間が割かれる。
という特性がある。
私はそのことを非難しているのではない。取材される側の行政としては、「災害に際して、異常な状態にあるのは、被災者だけではない」ことを認識して事に当たるべきだと言いたいのだ。
(引用)自治体の政策創造、青山佾著、三省堂、2007年、218-219
先日、台風10号が西日本を縦断した。その際、JR西日本は2日前から段階的に運休を予告したため、当日、駅などで目立った混乱はなかったという。
お盆休みのUターン時期と重なり、山陽新幹線だけで約20万人が影響を受けたにも関わらずだ。
影響を受けられたかたには反論を言われるかたも見えると思うが、私は、この措置を大いに歓迎したい。
元東京都副知事の青山氏も災害報道になると報道機関は理性を失う傾向があると指摘する。
台風が迫り、刻々と各地の被害状況が伝えられる中、ややもすると、交通機関の運行状況に関する報道は埋もれてしまい、上手く伝えられない可能性がある。
ゲリラ的な豪雨や大規模地震のように、予知が困難な災害は別にして、気象庁の予測精度が上がっている台風の進路は、数日前から予知できる。
今回のJRの対策は、まさに「災害報道の棲み分け」を上手に駆使し、台風による被害が深刻になる前に予告し、利用客の混乱を防いだ。
この措置は、もっと身近にも広げるべきだと思う。
例えば、学区の運動会や町内会の行事ごとなどにおいても、事前に予知できる災害であれば、「翌日の運動会は中止にします」などと予告すべきではないか。
当日朝決定となると、例えば役員のかたは、「お弁当の手配はどうしよう」とか、保護者のかたは、「もし中止になったら翌々日の仕事の調整をどうしよう」ということにもなる。
このように、事前予告というのは、その決定を受け入れ、次のステップをいち早く検討することができることから、それぞれ関係されるかたのストレスを軽減させる意味合いもあると思う。
実際、運休を決めたのち、当日、新幹線が運行可能であった状況もあるかもしれない。
しかし、オーバートリアージともいうべきことが生じたとしても、「災害報道の棲み分けい」をし、人々の生命・安全を守り、混乱を防ぐことが最優先ではなかろうか。
まだこの措置も改善の余地があると思う。
また、お盆の時期だったから、今回だけ2日前に予告したということかもしれない。
ただ、災害時に影響が大きいと予測される事案については、速やかな決定、速やかな周知が望まれると考える。
(引用)日本経済新聞、2019年8月17日付、朝刊記事