2019年12月28日土曜日

マネジメント・バイブル


新しい戦略や、新しいプロセスを開発するとき、またシステムを改善するとき、このことだけは憶えていてほしい。「製品を知り、部下を知り、顧客を知る」こと。これを心にとめておけば、道をはずすことはないはずだ。

マネジメント・バイブル、ヘルムート・マウハー著、岸伸久訳、株式会社ファーストプレス、2009年、200

「マネジメント・バイブル」と題する本書は、まさに現代経営学の父でありマネジメントの祖と言われるピーター・F・ドラッカーのマネジメントを進化させ、マネジメントに関する「バイブル」と名を付すにふさわしいものであった。
ネスレ名誉会長であるマウハーは、企業戦略から経営者が果たすべき役割、人事政策、財務やイノベーション、そして広報やコミュニケーションの分野に至るまで、自身の経験から、経営者のあるべき姿を教えてくれる。

この本は、経営者のために書かれた本ではあるが、あらゆる分野で活躍するリーダーに向けられたものとも言える。その一例として、本書では、1000年も昔に聖ベネディクトが修道士や継承者に「価値創造経営」への取り組みに関して書き残した文書を紹介している。
「選ばれし者は心に留めなければならない。」で始まる聖ベネディクトの言葉は、現代の選ばれし者(リーダー)にも通用する原理原則が散りばめられており、大いに役立つ。
私も手帳にこの聖ベネディクトの言葉を書き記しておいた。普段の仕事において、常に心に留めておきたいと思って。

冒頭の引用は、マウハーが引退する際に、幹部全員に伝えたメッセージとされる。このメッセージは、非営利組織にも当てはまる。例えば都庁であれば、「都庁サービスを知り、部下を知り、都民を知る」ことになる。この3者をいつも念頭に置きながら、新しい戦略やプロセスを開発し、システムを改善していかなければならない。

マウハーは、事業の成功のカギは、未来に投資することと言っている。未来に投資とは、これからを生きる若い世代への投資でもある。これもまた、事業経営に限ったことではない。
次代を担う若い世代への投資こそが、マネジメントの基本であり、持続可能な事業経営、そして社会、ひいては世界を築いていくのだと感じた。



2019年12月9日月曜日

小さな英雄

「有名にならなくても小さな英雄はたくさんいる。そういう人になって。」

                           医師 中村 哲
(引用)2019.12.6 日本経済新聞朝刊記事

外務省のホームページによれば、持続可能な開発目標(SDGs)とは、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標である。持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)ことを誓っている。

例えば水。国土交通省によれば、日本を含めて9カ国しか水道の水をそのまま飲める国はないという。SDGsの目標6のターゲットの一つに、「2030年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ平等なアクセスを達成する。」とある。
命に直結する安全で良質な水は、我が国では、蛇口をひねれば当たり前のように供給されている。しかし、全世界を見渡すと、まだまだ未整備な国が多いという事実がある。


先日、アフガニスタンで突然の凶弾に倒れた中村哲医師。彼は、30年近く、医師でありながら、現地スタッフらと井戸1,600本を掘り当て、農業向けの灌漑用水路は13本整備するなど、アフガン復興に多大な功績を遺した。
「100の診療所より1本の水路」。中村さんは、不衛生な水によって乳幼児の死亡率が高いことから、医師という職種を超え、現地で水と食料を確保する活動をしてきた。


冒頭の言葉は、中村さんの母校、福岡高校で生徒たちにエールを送ったものだ。
SDGsのゴールを目指すのは、地球で暮らす人類にとって大切なことだ。しかし、そのゴールの達成を目指し、実際に未開発の地で取り組んでいくということは、誰もができることではない。中村医師にも、ここに至るまで、計り知れないご苦労があったと思う。

中村さんの遺志を引き継ぎ、SDGsの基本理念である「誰も置き去りにしない(No one will be left behind)」世界をつくっていくのは、今を生きる私たちの使命だと思う。

身近な地域のため、そしてこの地球に住むすべての人たちのため、今すぐ、私たちの出来ることから始めなければならない。
一人ひとりが「小さな英雄」になって、中村医師が目指した「真に平和な世界」、そして「みんなで生きる世界」の実現に向けて。


誰よりも、また、何よりも強い信念のもと、アフガンの地で人道支援を行ってきた中村 哲さんのご冥福を、心よりお祈りします。


2019年12月8日日曜日

つながる街

私は、いつも「知ることで、優しさが生まれる」と感じます。本人の事情を知った住民ボランティアは、ゴミ屋敷で言えば、「出ていってほしい!」といった、地域から排除しようとする人々の側には、まず立たなくなります。ひきこもりについても、簡単に「甘えている」とは思えなくなります。
                                                豊中市社会福祉協議会福祉推進室長  勝部 麗子

(引用)孤立する都市、つながる街、保井美樹編著、全労済協会「つながり暮らし研究会」編、日本経済新聞社、2019、91

 近年、都市は、多様な課題を抱えている。
例えば、ひきこもり、支援なき子育て、そして、孤独な高齢者、空き家の増加など。
現代社会における都市の課題とは、社会構造の変化や人間関係の希薄化によってもたらされていることが多い。今こそ、一人ひとりが地域に出て、暮らしを良くするための課題を見つけ、実践しなければならないと感じた。そうすることで、「つながり」が生まれ、街となる。

そのためには、自治体も変わらなければならない。
神戸市では、2019年に「つなぐ課」ができた。
前述の様々な社会的課題から、最新のテクノロージに至るまで、「つなぐ課」は、市役所の組織をオープンでフラットなものとし、そこに住む人たちを「つなぐ」ことで街づくりを行うということであろう。
また、一方では、塩尻市において、MICHIKARA地方創生協働プログラムが進んでいる。市役所の縦割りの組織を打破すると同時に、官民連携ということもキーワードになってきている。

 豊中市では、福祉を中心とした豊中型地域共生社会への挑戦が始まっている。冒頭の言葉は、豊中市の福祉協議会室長の言葉だ。
中高年のひきこもりなど、支援制度のはざまに埋もれ、救いの手を待ち続けているかたたちがいる。

現代は、Society5.0の時代と言われているが、人間とのふれあいによる「優しさ」は、これからも必要になってくると感じ、街づくりの根幹であると感じた。
 大規模災害のときには、「自助」、「共助」、そして「公助」の順で人は助かるという。
インフラや交通が麻痺し、助けを求める人達で溢れかえったとき、公助はどこまで期待できるのだろうか。事実、阪神淡路大震災のとき、神戸市の調査によれば、公助で助けられたかたは2%に満たず、近所の人達に助けられたという「共助」は、3割近かったという。

 「孤立する都市、つながる街」を読んで、普段の生活、そして、いざというときのため、再び、そこに住む人たちが「つながった」街づくりが求められていることを痛感した。


2019年11月30日土曜日

観光ブランドと尖り


強いブランドには、尖りがある。

京都は、「伝統」で尖っている。北海道は、「おいしい」で尖っている。沖縄は、「海」で尖っている。東京は、「活気」で尖っている。
(中略)
尖。「大」の上に「小」が乗っている。小さな地域が、大きな地域を超えるには、尖りが欠かせないということを、この字が教えてくれている。
(引用) 地域引力を生み出す 観光ブランドの教科書、岩崎邦彦著、日本経済新聞社、20198285

全世界のGDPの約10%を生み出すと言われている観光産業は、どの国も、また自治体も積極的に取り組みたい施策であろう。
ただ、やみくもに自分たちの住むまちの良いところを写真に撮り、複数の写真を使ってポスターを製作し、その横にはキャッチコピーを並べたとしても、観光客は来てくれるだろうか。
答えは、「NO」である。

この「地域引力を生み出す 観光ブランドの教科書」は、観光施策の根幹をなす「観光ブランド」に特化した実践本だ。自分の住むまちを観光ブランド化するならどうしたら良いかという視点を持って、読み進めてみた。わがまちには、観光のトップブランドである北海道や京都、東京に勝る観光資源があるのだろうか。そして、どのようにしたら、自分たちの地域を有名観光地に負けない観光ブランド化できるのだろうか。この本には、どこのまちでも“尖った観光ブランド戦略”ができる手法が述べられている。

しかし、ただ、どの自治体も観光ブランド戦略を進め、多くの環境客が訪れれば良いのか。20191027日の日本経済新聞の記事によれば、今、話題になっているオーバーツーリズムの発生メカニズムが掲載されていた。観光客が増えると、公共交通機関が混雑し、観光に対する地域住民の反感や嫌悪感が生まれ、持続可能性が低下するという。
京都市では、京都市観光協会(DMO KYOTO)がオーバーツーリズム対策事業をWebに公開している。その事業ミッションは、「特定の時期や時間帯、一部の観光地に観光客の需要が集中することを和らげ、一年を通して京都市域全域で観光客が楽しめる環境を創り出します。」としている。
「観光ブランドの教科書」でも、独自の分析によって、「観光大国」の幸福度を掲げているが、観光大国と言われるフランス、スペイン、米国などは、外国人旅行者数が多いものの、その地に住む人たちの幸福度は総じて低い。
必ずしも、「観光客が多い=その地域の住民の幸福度」にはつながっていないという実態がある。

岩崎氏は、観光施策の目的について、観光客の数を増やすことではないとし、あくまでも「地域が元気ならないといけない」と主張する。
まさにそのとおりだと思う。これからの時代は、量より質の観光、そして持続可能な観光のスタイルが求められる。
地域住民と観光客がともに満足できる地域づくり。「観光ブランドの教科書」を読み、そのことを理解して、観光ブランド化をすすめる必要があると感じた。

2019年11月17日日曜日

ハートドリブン


ビジネスモデルや事業内容はいつか変わる。なぜならお客様の求めるものも変わってくるからだ。でも変わらないことは、企業っていうのは人が全てだっていうことだ。
いい会社にはその会社の文化がある。哲学や信念がある。それを社員と共有している。そして社員は働くことを楽しんでいる。そこにはいい雰囲気が流れるんだ。会社を測る時は、目に見えやすいビジネスモデルや数字じゃなくて、雰囲気などの目に見えないものが一番大切なんだ。経営者の仕事は、目に見えないものに気づき、それを育める環境を作ることだよ。
 (中略)
人生の目的は、何かを手に入れることじゃない。自分自身の器と可能性を広げていくこと、より大きな自分に出会うことだ。

(引用)ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力、塩田元規著、株式会社幻冬舎、201987-88

この本を読み終え、私は、稲盛和夫氏が再建に携わったJALの企業理念を思い出した。

JALグループは、全社員の物心両面の幸福を追求し、
一、お客さまに最高のサービスを提供します。
一、企業価値を高め、社会の進歩発展に貢献します。

塩田氏が率いるアカツキと稲盛氏によるJALの再建には共通点がある。
それは、まず、社員のことを第一に考えていることだ。

この本のタイトルは、「ハートドリブン」。
塩田氏によれば、ハートドリブンとは、「人々が自分の内側のハートを原動力に活動していくこと」だそうだ。人間には、感情がある。その一人ひとりの感情を大切にし、分かち合いながら企業を経営していく。冒頭で紹介した文は、塩田氏が千葉にある化粧品会社のおじいちゃん経営者に教えてもらったものだ。まさに、ハートドリブンの本質をあらわしている。

かのピーター・F・ドラッカーは次のように言う。
「あらゆる組織が、『人が宝』という。ところが、それを行動で示している組織はほどんどない」と。
ドラッカーは、自らの著書「プロフェッショナルの条件」の中で、「科学的管理法の父」と称されたフレデリック・テイラーの知らなかったこととして、継続学習の必要性と自らが教えて学ぶ大切さを説いている。
そして、塩田氏の著したこの本は、ドラッカーの考え方に加え、まず、組織を構成している人たちのハートを大切にする必要性を説く。そして、働く人たちの感情を丁寧に扱う具体的な手法を記している。

例えば、塩田氏は、会議をスタートする前に「チェックイン」するという。チェックインとは、コーチングでよく使われる手法で、メンバーが今、気になっていることや感じていることを簡単に分かち合うというものだ。
会議の前、「いま、実は、風邪気味で」とか、「いま、ちょっと仕事でトラブっていて」などをメンバーで共有し合うことは、有効だと思った。塩田氏は、自分のことを分かち合って、理解してもらえるからミーティングに臨みやすいと言うが、それだけではないと思う。きっと、アカツキでは、誰もが発言しやすい環境を創り出すことにより、上から下への一方的な命令で物事が決まっていくということがないだろうと思う。そして、ミーティングでは、それぞれ参加者で、自分の内面の感情を表現し、相互が理解しあい、結びつくことにより、最適解を導いているのではと思った。

この本の最後には、塩田氏の直筆で次のように書かれている。
「これからの世界で、あなたの魂と人生が最高に輝くことを願って」
本書は、少し、スピリチュアル的な部分も含んでいるが、これからは、心の時代である。
この本は、企業経営者のみならず、知的労働者たちにとって、新たな時代の経営指南書としてお勧めしたい。

2019年11月16日土曜日

トラブルへの対処法

事情のいかんを問わず、怒らず、恐れず、悲しまず。
当該感情の奴隷にならない、自分はあくまでも自己の生命の主人公であるということを実行に移したいためであります。

(引用)中村天風 折れないこころをつくる言葉、池田光解説、株式会社イースト・プレス、2018年、38

突然、予期せぬトラブルに見舞われることがある。
実際、今の自分も大きなトラブルを抱えている。
トラブルに見舞われるということは、自分が築き上げたものが、砂の城のように崩れていく感じがする。
そして、容赦なく、不安や怖れが襲ってくる。

いつも、トラブルに見舞われたとき、私は一冊の本を読み返す。
池田光さんが解説している「中村天風 折れないこころをつくる言葉」だ。
中村天風と言えば、大谷翔平から稲盛和夫や松下幸之助に至るまで、今もなお、幅広い年代や職業のかたたちに影響を与えつづけている。
中村天風の言葉に触れると、不思議と、不安に襲われていた心が軽くなる。

冒頭の天風の言葉。「事情のいかんを問わず、怒らず、恐れず、悲しまず。」がいい。
特に、「事情のいかんを問わない」ことは、大切である。
自分のせいではないがトラブルが発生したときも、事情のいかんを問わない。
自分の大切な「心」を悲しいことや、腹の立つことで満たしてはならないと解く。

それでも不安や怖れが襲ってきたら、
私は、「不安お断り! 心配お断り! 恐れお断り! 出ていってください」と、誰も聞かれない場所で大声で叫ぶ。
これは、「言うだけでポジティブになる」(大和書房、2016年、234)の著者、クスドフトシさんの方法だ。
こうすることにより、自分の心を支配していた心配や恐れが小さくなっていく。

特に、リーダーになればなるほど、幅広い仕事を抱えてトラブルに見舞われる可能性が高くなる一方、責任も重くなっていく。
真のリーダーは、苦境に陥ったとき、誰よりも早く立ち上がり、対応していく。
いま、目の前に立ちふさがるトラブルを乗り越えたとき、また自分が一回り大きく成長できていることを信じて、立ち向かっていこう。



2019年11月9日土曜日

5つの指針

①前例にとらわれず、自ら主体的・自律的にスピード重視で取り組む
②地域に飛び出して、多様な人々と積極的に関わり、信頼関係を築く
③多様な地域の人材をコーディネートして、地域の課題を解決する
④日本国内はもとより世界の先進事例にも目を向け学ぶ
⑤客観的データや合理的根拠等のエビデンスに基づいて政策を立案し、効果を検証して仕事をすすめる
                        中野区長  酒井直人

(引用)なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか? 常識・前例・慣習を打破する仕事術、加藤年紀著、学陽書房、2019、174-175

「なぜ、彼らは『お役所仕事』を変えられたのか?』」という本には、組織の壁を超えたフロントランナー10人の姿が描かれている。
かつて、私はこの本の最初に登場する塩尻市公務員の山田崇氏の講演を聞いたことがある。山田氏は、業務時間外に市民活動を始め、シャッター商店街の空き家を活用した「nanoda」というプロジェクトの話をされ、「本当に山田さんは公務員?」と思えるほどの巧みな話術で聴衆者を魅了すると同時に、その山田氏の行動力に圧倒された。その山田氏の行動に感銘を受けた職員が、わが町でも同じような取り組みを展開していた。そして、わがまちの公務員も町に”ダイブ”して、一緒に地域のかたたちと語らいながら、町の未来を創造しはじめている。

また、本書には、「日本一負けず嫌いな公務員」と称される生駒市の大垣弥生氏も登場する。行政の広報という部署は、一眼レフカメラを持って現場に行き、記事におこして、文字数を数え、レイアウトをする。今は、その作業を民間委託している自治体も多いが、かつては、私も同じことをしていたと懐かしく思った。しかし、広報という部署は、取材を通じて市民とふれあい、信頼関係を築く中で、積極的に情報を発信し、声を拾う。仕事を通じて、行政と市民とのパイプ役になる要の部署だと思うことを、改めて大垣氏は教えてくれた。

公務員の世界には、「前例主義」という慣習がある。しかし、時代の変遷とともに市民ニーズは変化し、前例主義では、行政という組織が立ち行かない。
本書の中で、一番心に響いたフレーズが、冒頭の中野区長の酒井直人氏が職員時代から大切にしている5つの指針だ。
公務員は、前例に取らわれず、地域に飛び出して、地域課題を解決していく。まさに、これからの公務員に求められる姿ではないだろうか。さらに、私は、この5つの指針の最後も重要だと考える。「客観的データや合理的根拠等のエビデンス」に基づくことである。その施策の背景に客観的データやエビデンスがあれば、説得力が増す。実は昨日、私もある施策の展開で、エビデンスが欲しかったので、他部署に資料提供を依頼したばかりだ。「ひとりよがり」になりがちな施策立案ではなく、市民のニーズに応えられる真の施策の展開が行政には求められる。

釈迦は、臨終に際し、弟子に次のように語ったという。
「すべてのものは移りゆく。怠らず努めよ」
時代の変化とともに、ライフスタイルも変化し、行政に求めるニーズも多様化している。
市民感覚で行政施策を展開してくために、まず、公務員がどのように変化しなければならないのか。本書は、10人のフロントランナーの姿を通じ、教えてくれている。

2019年11月4日月曜日

コリン・パウエルの教訓

なにごとも思うほどに悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。

(引用)コリン・パウエル リーダーを目指す人の心得、トニー・コルツ著、井口耕二訳、飛鳥新社、2012年、13

先日、雑誌「PRESIDENT(プレジデント)」を読んでいたら、「『人間の器』を広げる1冊」という特集が組まれており、官房長官の菅義偉氏のバイブルが紹介されていた。
その中で、菅氏は、コリン・パウエルを描いた著書をバイブルとしてあげ、パウエルが考案した13ヵ条のルールの一つである「なにごとも思うほどに悪くない。翌朝には状況が改善しているはずだ。」という言葉に助けられたというエピソードを紹介していた。

実は、私も幾度となく、この言葉に助けられた。コリン・パウエルや菅氏のような国家的な問題ではないが、それなりに大きなトラブルは、私にも容赦なく襲ってくる。詳細を話すことはできないが、最近でも、周りから「できない」と言われ続け、自分を追い込み、背水の陣をしいて挑んだ仕事の案件がある。結果的には、上手くいったが、そのとき、私を支えてくれたのは、何を隠そう、パウエルのこの言葉であった。

なぜ、この言葉が支えになったかと言うと、突如、襲ってくる仕事上のトラブルや問題は、出会った直後、途轍もなく大きく、途方に暮れることがある。そのとき、少し、時間を置くということも大切だ。そうすると、時の流れとともに、徐々に抱えていたトラブルや問題が自身の中で次第に小さくなっていき、僅かながらの希望の光が差してくるといった経験を幾度となくしてきた。また、この言葉は、ストレスフルなワークからも解放され、的確な判断が下せるようになると同時に、自身の健康状態を維持することにも役に立つ。

ほかにも、菅氏は、パウエルの13ヵ条のルールの一つ「小さなことをチェックすべし」も紹介していて、自身のエピソードを語っている。私もおおらかに見えるが、特に上司に報告するときは、小さなことまでチェックする。私は、上司が「私からの情報の何を必要としているのだろう」、「判断する材料として、なにを欲しているのだろう。」ということを意識して報告をあげようと努力している。参謀として、自身が理解し、重要となるポイントを把握していないと、組織全体が誤った方向に進むリスクさえ生じてしまう。

菅氏同様、「コリン・パウエル リーダーを目指す人の心得」は、私にとっても、大切なバイブルである。

(参考文献)
・雑誌「PRESIDENT(プレジデント)」 2019.10.4号、プレジデント社




2019年10月29日火曜日

老いる準備

「歳をとる」というのは、誰も皆、やったことないですから。誰もがみんな初体験。
私も、ここから先は初めての道です。
「初めてのことなんだから、楽しんでやっていければいいな」
そう思っています。

(引用)まあまあふうふう。、八千草薫著、主婦と生活社、2019

昨日、女優の八千草薫さんが膵臓がんで亡くなった。88歳だった。
訃報をお聞きして、ふと、八千草さんの大ファンだった自分の祖父のことを思い出した。
温和で上品で、そして映画やテレビなどでひたむきに生きる日本の女性の美しさを演じきった八千草さんは、幅広い年代に親しまれた。

誰しも老いはやってくる。楽天インサイトが行った20-60代、男女1000人に行った「終活アンケート」によれば、終活をする意向があるかたが40.3%にのぼり、その理由として「家族に迷惑をかけたくない」が75.9%であった。
意外だったのは、終活の意向がある年代別でトップだったのが30代で46%。家庭を持ち、子供ができて、自分の生き方に責任が生まれてくる年代だからだろうか。

一方、終活の中で、「何から手を付けて良いかわからない」が36%、「相談できる相手がいない」が18.6%にのぼっている。「終活」というキーワードは、今後さらに民間事業者にとってビジネスチャンスになっていくだろうし、公共機関は、終活セミナーの開催など、八千草さんの言われた「楽しく老いる」ためのサポート支援をより一層、充実させていくことが求められるのではないだろうか。

終活というのは、何も気張らなくてもいいというのが私の考えだ。例えば、我が家の例で言えば、エクセルを使って取引金融機関、口座番号、残高、金融機関の連絡先を一覧にして、家族で共有するだけでも終活になる。また、加入している保険、種類、保険番号、保険会社、保険会社の連絡先なども一覧にしておけば、終活のみならず、災害にあったときなどにも役に立つ。これは、以前、危機管理研究所の国崎信江さんに教えてもらったことだ。

八千草さんが著された本のタイトル、「まあまあふうふう」という言葉は、中国語からきていて、「いい加減な」という意味があるようだ。しかし、「いい加減」というのは、「気張らない」という意味にもつながると思う。
このブログを書いている時、どこからか、あの、八千草さんの優しい声で「これからも楽しんで歳を取っていってくださいね」と囁かれた気がした。
私は、少しでも八千草さんのように素敵に歳を重ねていきたいと思った。

八千草薫さんのご冥福を、心よりお祈りします。

(引用)2019.10.26付、日本経済新聞朝刊記事、Pickデータ 「終活する」全体の4割










2019年10月26日土曜日

渋沢栄一と茂木友三郎とピーター・F・ドラッカー

成名毎在窮苦日 (名を成すはつねに窮苦の日にある)
敗事多因得意時 (敗れること多くは得意のときに因る)

渋沢栄一

10月24日(2019)のTV東京系「カンブリア宮殿」では、キッコーマンの茂木友三郎名誉会長が出演された。
キッコーマンは、我が家の食卓にも欠かせないものを多く世に送り出している。特に、新型ボトルでヒットさせた醤油、「いつまでも新鮮」シリーズは、マーケティングで言うパッケージングで醤油が酸化するという課題を見事に克服している。そのおかげで、各家庭では、いつまでも醤油本来の美味しさを味わうことが可能となった。

キッコーマンの茂木友三郎氏は、「需要創造」という言葉を多用する。この言葉を聞いた時、私は、「あー、茂木さんも『ドラッカリアン』」なのだと思った。ドラッカリアンとは、現代経営哲学の父であるピータ・F・ドラッカー氏を崇拝している方たちのことを言う。後ほど調べてわかったが、やはり、茂木氏もアメリカの大学で学ばれるなど、立派なドラッカリアンであった。

ドラッカーは、自身の著書「チェンジ・リーダーの条件」の中で次のように言う。
「企業はまず、顧客を創造しなければならない。」と。

茂木氏によれば、経営者の思いつきのアイデアだけで商品を出してもヒットしないという。
ヒットの秘訣は、「潜在需要を有効需要に」まで高めていくこと。
そのためには、経営者のフラッシュアイデアで商品を市場に送り出してはいけない。
まず、試作品をテスト販売するなどして、この新商品は、「本当に市場に受け入れられるのか」、「新たな顧客を創造できるのか」を探る。
そして、満を持しして新商品を市場に投入したら、「絶対にナンバーワンになる」という自信が必要だとも言われる。
そのことは、何も民間事業者に言えることではない。市民や国民のニーズに政策で応えるといった公共などの分野にも言える。

茂木友三郎氏の座右の銘は、冒頭に記した渋沢栄一氏の言葉だ。
要約すれば、苦しいときを乗り越えたとき、名を成すことができる。
得意のときには敗れることが多い。

かつて、ピーター・F・ドラッカーは日本に興味を持ち、日本を訪れ、偉大な経営者の研究をしている。そして、自身の著書においても、「企業の社会的責任」の先駆者として紹介している。
その人物こそ、渋沢栄一氏だ。

ピータ・F・ドラッカーは言う。
「日本が50年代、60年代に発展させたシステムは、他のいかなる国のものよりも大きな成果をあげた。(中略)私は、21世紀の日本が、私と本書に多くのものを教えてくれた40年前、50年前の、あの革新的で創造的な勇気あるリーダーたちに匹敵する人たちを再び輩出していくことを祈ってやまない」

我が国の食卓から醤油離れが著しい。ただ、茂木氏の率いるキッコーマンは、毎年着実に利益を伸ばし、地元千葉県野田市に市民会館を寄付したり、キッコーマン総合病院を開院させるなど、大きな社会貢献も果たしている。
これは、窮苦のときこそ頑張る。それを乗り越えたとき、私たちの活動を通じて、社会をより良くすることができるという精神を貫いてきたからこそだと思う。

渋沢栄一とドラッカー、そして茂木氏の意思は、これからを生きる私達が引き継いでいかなければならない。これからも、幾多の窮苦を乗り越え、あの革新的で、創造的な勇気あるリーダーが一人でも多く、我が国から輩出されていくために。

(引用)
・2019.10.24、TV東京系、「カンブリア宮殿」
・チェンジリーダーの条件、ピーター・F・ドラッカー著、ダイヤモンド社、2000年、39
・(エッセンシャル版)マネジメント 基本と原則、ピーター・F・ドラッカー著、2001年、Ⅳ


2019年10月22日火曜日

読みたいことを、書けばいい。


「感動が中心になければ書く意味がない」

(引用) 「読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術」、田中泰延著、ダイヤモンド社、2019年、180

私には、好きな曲がある。手嶌葵さんが歌う「明日への手紙」だ。少し前のことになるが、偶然、「音楽チャンプ」というテレビ番組を見ていたら、高校生シンガーの琴音さんが「明日への手紙」をカバーしていた。今まで幾度となく聴いてきた名曲だが、琴音さんが歌いだすと、会場の空気がガラッと変わり、シンガーの創り出す世界に引き込まれ、私も強く胸を打たれた。
歌い終わったあと、審査員の菅井秀憲氏は、琴音さんに次のように伝えた。「人のためによく歌えって言われるんだけど、それはコントロールであって、自分のために歌っていくべきなんです。あなたが自分のために歌うことによって、ここまで周りの人に響かせられるのは奇跡です」と。

この度、田中さんの書かれた本を読み、文章を書くこと、そして歌うことには、共通点があると思った。その共通点とは、どちらも、「感動」が中心になければならないのだ。
田中氏によれば、文章を書く際に収集する一次資料には、「愛するチャンス」が隠されていると言う。そして、文章を書くには、自分が一次資料から発掘し、愛した部分を全力で伝えるという作業が必要だと言う。
それは、シンガーにとっても同じであろう。曲にはストーリーがある。そのストーリーとなる歌詞をシンガーは理解し、あるいは自分でストーリーを歌詞として創作し、その歌詞にメロディーを付した曲を歌うことで伝えていく。その歌詞の中には、歌い手の愛すべき箇所があるはずである。その愛すべき箇所に特に思いを込めて歌い、感動が生まれ、人々の心に伝わっていく。

また、文章は、誰に向けて書くのか。
田中氏によれば、「自分のために書きなさい」と言う。
これも、先ほどの琴音さんを審査した菅井氏の言葉と共通する。
「歌は、自分のために歌っていくんだ」という言葉と。
自分のために文章を書く。また、歌うことによって、自分が満たされ、その姿を見た人たちが感動していく。

SNSなどの普及によって、誰もが文章を書き、容易に情報発信できる時代を迎えた。
現に私も、こうして本の感想をブロクに書いて、情報発信している。
しかし、情報技術が進歩しても、伝わる文章を書くのは、人間だ。
その文章を書くという術(すべ)は、何も今、はじまったことではない。
古(いにしえ)より、文章を書くことは、人間しかできない作業であり、その術は、不変的なものだ。
情報が氾濫している現代だからこそ、今一度立ち止まって、私たちは、真の文章を書くべく、術を確認する必要がある。その一冊として、本書は、大変有効であると感じた。



2019年10月14日月曜日

進化し続ける日本のラグビー

「このときのためにすべての時間を犠牲にして、この勝利のために頑張ってきた。本当に最高です。」

                      ラグビー日本代表 福岡堅樹選手
 
 昨日、我が家では、テレビの前にかじりついて日本チームの活躍を応援した。ラグビーW杯日本大会1次リーグA組の日本は、スコットランドと戦い、28-21で競り勝った。後半は、スコットランド勢の猛攻により、最後までハラハラしたが、日本は7点を守りきった。これにより、日本は、4連勝でA組1位通過し、悲願の「初の8強」を果たした。

 昨日の試合では、特に、俊足を飛ばしてトライをあげるフィニッシャーのWTBの二人の活躍が光った。その二人とは、福岡堅樹、松島幸太朗の両選手だ。福岡選手は、後半2分、スコットランドの選手を置き去りにしてトライを奪うなど、2トライを決め、日本の勝利に貢献した。

試合後、福岡選手は、早口で「このときのためにすべての時間を犠牲にしてきた」と語った。
その言葉を聞いたとき、私は、ナポレオン・ヒルの「願望を手に入れるための6箇条」を思い出した。
この有名な6箇条では、願望を実現するために目標を数値化することや目標の最終期限を決めることなどを掲げている。

その6箇条の中には、「目標を達成するための代償を決める」ことも掲げられている。
目標実現のために労力、そして時間を差し出すことによって、得られるものがある。
そのことを福岡選手は、身を持って教えてくれた。

福岡選手は、2020の東京五輪でラグビーを引退し、医師を目指すと公言している。
厳しい練習に耐え、今はラグビーにすべてを捧げてきた彼なら、まずは来年の五輪出場、そしていつか医師になって多くの人を助けるといった目標も叶えることができることだろう。

何も福岡選手に限ったことではない。日本ラグビー史上初の8強は、ラグビーの日本選手全員が持ち続けている強固な意志と犠牲心によって得られた。

日本チームは、”ONE TEAM”というスローガンを掲げ、強固な意志と犠牲心を持ち続けたメンバー31人が結束し、戦いに挑み続けている。さあ、次は、10月20日開催の決勝トーナメントで南アフリカとの決戦だ。
引き続き、進化を続ける日本ラグビーの活躍を心から応援していきたい。

2019年10月12日土曜日

台風計画運休

「(台風の中)営業を続けて事故を起こすほうが、企業の安全管理に対する信頼を損ない、ダメージは大きい。こうした対応が定着していくだろう」

第一生命経済研究所 永浜利広主席エコノミスト

(引用)2019年10月12日付 日本経済新聞 朝刊

私は、夏から秋にかけての旅行や出張があると、計画する段階から不安に襲われる。それは以前、高知に出張に行った際、台風に追われ、ギリギリ封鎖寸前の瀬戸大橋を渡り、帰宅することができた苦い経験をしているからだ。しかし、いくら悩んでも2週間以上前に計画する出張や旅行では、当日に台風が接近するかなどの予測は、残念ながら誰もできない。

今年の台風19号は、大型で非常に強い勢力を保ったまま、体育の日を含む3連休の初日(つまり本日)から日本列島を襲っている。
この台風の接近に合わせ、交通機関や工場、店舗などの「計画運休」が定着し、最大規模となった。新幹線は、東海道新幹線が名古屋・東京間で終日運休、首都圏の在来線の一部も終日もしくは一部運休となった。
この3連休、首都圏を中心とした公共交通機関が運休となったことで、影響を受けられたかたは、おそらく何万人にものぼるだろう。

それでも私は、この「計画運休」に反対の立場ではない。事前に利用者に情報が伝われば、当日、駅などにおける大きな混乱を防ぎ、無理な運行を続けたが故に発生する帰宅困難者対策にもつながっていく。また、市民の集う大型イベントなども事前に休止などの告知をすれば、来訪者や関係者の負担も軽減させることができる。

いまや、台風は、技術の進展とともに、気象庁や民間予報会社の精度が上がり、きめ細やかな予測が可能となった。そのため、「計画運休」も利用者の理解とともに、実行しやすくなったのだろう。

災害は、早めの判断、早めの行動が何より重要である。
「計画運休」は、企業のリスク回避だけではない。台風の最中(さなか)に人々の動きを抑える効果もあり、結果的に多くのリスク回避効果をもたらす。現在、「計画運休」は、最善の台風対策であると言えるのではないだろうか。しかしながら反面、人々の動きが限定的になることから、経済停滞を招くことにもつながるといったことなどの課題もある。

これからも、我が国では、試行錯誤を繰り返しながら、すべての人々にとって最善となる台風対策の模索が続いていく。









グッドマンの法則

苦情処理のフレームワークとしてよく知られる「グッドマンの法則」によると、クレームを言わずに立ち去った人のリピート率は低額商品37%、高額商品(およそ1万円以上)9%でしたが、クレームを言ったものの、その対応に満足した人のリピート率は低額商品95%、高額商品82%でした。

(引用)クレーム対応 最強の話しかた、山下由美著、ダイヤモンド社、2019年、55

先日、私は、ある中古本屋さんで中古CDを購入した。12月が近いため、家族用にリビングで聞こうと、クリスマスソングを購入したのだ。早速、購入後、家に帰ってCDを聴いてみた。流れてきた曲は、ショパンのノクターン(夜想曲)。「あれっ?」と思った次の瞬間、私は、CDケースと中身が違っていることに気づかされた。

すぐに、中古本屋さんにクレームの電話を入れた。中古本屋さんで受話器をとったのは、アルバイト定員らしき人物であった。私がクレームの主旨を説明すると、「申し訳ありません。お代金は、明日、現金書留で郵送させていただき、返金とさせていただきます。また、CDのケースと中身の返却のことがありますので、明日、責任者から連絡をさせます」とのことであった。
次の日は、土曜日ということで、中古本屋さんからの郵便物と責任者からの電話を待ち続けた。しかし、土曜日、日曜日、そして月曜日になっても一向に連絡をいただけなかった。
痺れをきらした火曜日、私は、再度、中古本屋に電話を入れることになった。また、アルバイトらしき人物が電話に出たが、今度は、すぐに正社員のかたに電話を回してくれた。
正社員の方は、電話代がかかるからと、向こうから電話をかけ直し、「申し訳ありません。私が責任を持って現金書留を送付させていただきます。また、お買い求めいただいたものは、ご面倒でなければ破棄していたければと存じます」とのことであった。
その二日後、お詫び文と現金書留が我が家に届いた。

このたび、クレーム対応の本を読む機会に恵まれた。その中で、クレーム対応の基本は、「お客様の気持ちを代弁する」ことが重要と記されている。
確かに、私は、クレームの電話を入れたのは、別に代金を返してほしかったわけではない。「せっかく、楽しみにされていたCDをお買い求めになられたのに、私達の確認不足でお客様に不快な思いをさせてしまい、申し訳なく思っております」の一言が欲しかっただけなのだ。

いくらアルバイト店員といえども、そのクレームの対応如何によっては、そのショップのブランドイメージを損なうことになる。
顧客がショップから離れていくか、それとも店員の立派なクレーム対処によって、顧客をショップのファンにさせるか。類似店が多く、どの種類のショップも生き残りに必死であると聞く。その中で、他のショップと差別化を図っていくためには、クレーム対応の技術的なスキルは益々重要になっていくと感じた。


2019年10月8日火曜日

心。


災難が起こったということは、業が消えたということです。だからこそ、大きなことはもちろん、ごく小さなことであっても、それによって業がなくなったことを「喜ぶ」べきなのです。たとえ心からそう思えなかったとしても、理性を使って喜ぼうとする思いをもつことが大切です。
喜ぶことができれば、おのずと感謝することができます。どんな災難でも喜び、感謝すれば、もうそれは消えてなくなるのです。

(引用) 「心。人生を意のままにする力」、稲盛和夫著、サンマーク出版、2019年、42-43


先日、本ブログに世界的指揮者の佐渡裕氏による次の言葉を紹介した。
『奇跡を起こせる人間は、失敗した時にこそ、「ありがたい」と感謝できるんです。』

実は、この佐渡氏の言葉の真意について、私は、あまり理解できていなかった。なぜ、失敗したときに感謝をしなければならないのか、と。

しかし、このたび、稲盛和夫氏の「心。人生を意のままにする力」を拝読し、その真意が理解できた。

災難が起こったということは、「業」が消えるというのだ。
「業」とは、一言でいえば「前世の悪行の報い」ということであろう。

このことを稲盛氏は、元臨済宗妙心寺派管長の西片老師から教わったという。
当時、京セラが医療用の人工膝関節を認可を受けずに製造、供給してマスコミに叩かれた時、心身ともに疲れきった稲盛氏は、老師のところに相談に行った。そのとき、老師は、「それはよかったですね。災難が降りかかるときは、過去の業が消えるときなのです。それぐらいのことで業が消えるのですから、お祝いしなければなりませんな」といわれたという。

「心。」
80を過ぎた稲盛氏がたどり着いた結論は、「心がすべてを決めている」ということだ。
このことは、稲盛氏が歩んできた京セラ、KDDIという会社をこの世に送り出し、経営破綻した日本航空(JAL)を復活させたという偉大な実績が証明している。

2019年10月5日土曜日

FACTFULNESS


「じゃあ、わたくしの夢を言ってさしあげましょうか。それは、わたくしの孫がヨーロッパに観光に行って、そちらの新幹線に乗ることですよ。スウェーデンの北に氷のホテルがあるっていうじゃありませんか。うちの孫がそこに泊まるようになるんですよ。だいぶ先のことですけど、きっとそうなります。(中略)でも50年もすればアフリカの人たちは観光客としてヨーロッパに歓迎される存在になります。難民として嫌がられるんじゃなくてね。それがビジョンというものよ」

アフリカ連合委員会 ノーサザーナ・ドラミニ・ズマ委員長


(引用)FACTFULNESS 、ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド、日経BPマーケティング、2019年、234235


本書を読み、レベル4(先進国)に住む私達にとって、世界に対する自分の常識が間違っているということを認識させられた。

その常識とは、例えば、世界中で電気が使える人はまだまだ少ないだろうということなど。

しかし、すでに80%の人がすでに電気を使用しているし、世界の姿は一変している。家族形態も、先進国のように少人数の家族が当たり前になり、普通の暮らしができるようになっているということを理解した。

実は、私も毎月いただく給料の中から、些少ながらユニセフに寄付をさせていただいている。そのユニセフは、製薬会社と長期的な収益を約束する代わりに、1回あたりの予防接種コストを下げる交渉が成立していたことを知った。しかも、ユニセフの薬は、売値のほうが原価より安い。そのユニセフと契約している製薬会社の「世界に貢献しよう」とする思いから、どのように企業を維持させているかというマジック(企業努力)にも感銘を受けた。善意による寄付金を有効に活用し、多くの子どもたちに予防接種をする努力も実を結び、今では、世界中の1歳児の中で何らかの病気に対して予防接種を受けている子供は80%にものぼるという。



「世界はどんどん悪くなっている?」

いや、この本を読めば、裏付けられた様々なエビデンスによって、良くなってきていることが理解できる。

そう、「私たちの住む世界は、どんどん良くなっている」のだ。

そして、いつの日か、我が国もソサエティ5.0の時代を全世界に先駆けて進展を遂げ、さらに生活が豊かに快適になること。そして、私が生きているときには間に合わないかもしれないが、我が国が多くのアフリカ観光客で溢れかえる日が来ることを楽しみに待っている。




2019年9月15日日曜日

老朽インフラ

過去の被害規模から過小な想定をしてしまった。複雑な難工事に直面している。
東京電力パワーグリッドの記者会見にて

台風15号による大規模停電が続く。復旧について、東京電力パワーグリッドは、当初、2日程度で全面復旧すると見通していたが、「今後、2週間以内におおむね復旧の見込み」と再度、修正の記者会見をした。

昨日、私は、千葉に住む知り合いのFacebookを見た。投稿されていた写真は、千葉県君津市内のコンビニエンスストアのものであったが、電気が復旧していないため、店内の棚には商品が並んでいない。家庭内でも同様に、冷蔵庫が一つ動かないだけで、食品は腐ってしまい、食品のストックすらできない状況だ。
また、オール電化の家では、調理することすらできない。また、井戸水があっても、吸い上げるポンプも使えない。連日、被災地から報道されているさまざま情報から、私達の暮らしには、電気が欠かせないことを痛感させられた。

日本経済新聞によれば、迅速な復旧を妨げる理由の一つとして、送電設備の老朽化もあげている。多くの送電設備は、1970年代のもので、同社の記事では、今後、巨額投資によりインフラをどこまで維持できるかの判断が迫られているとしている。

災害対策には、「予防」と「発生した後の迅速な対応」の両面から考える必要がある。
電力会社は、日頃から、強風の中でも送電設備が倒壊しないような対策を講じる必要がある。また、発生してしまったら、いかに迅速に復旧するかのシュミレーションも必要であろう。

さらに、このことは、私たち一人ひとりにも言える。電気、水道、ガスなど、私達の生活に、あたかも「空気」の存在のように、当たり前に存在する生活インフラ。もし、災害が発生し、これらの生活インフラが長期間遮断されたときを想定して、各家庭でも備えをする必要があるだろう。

いまもなお、停電が続く千葉県の皆様に、心より、お見舞いを申し上げます。

(引用)日本経済新聞社 2019.9.14 朝刊記事

2019年9月7日土曜日

感謝力

奇跡を起こせる人間は、失敗した時にこそ、「ありがたい」と感謝できるんです。
 
指揮者 佐渡裕

(引用)人間を学ぶ月刊誌 致知 2019年10月号(通巻531号)、18

致知の10月号は、指揮者の佐渡裕氏と大和証券グループ本社顧問の鈴木茂晴氏との対談であった。

クラシック音楽に興味のある私は、この特集記事である対談に惹かれた。なぜ、佐渡氏は、帝王カラヤンではなく、レナード・バーンスタインに師事したのか。また、佐渡氏が子供のころに夢に抱いていた世界最高峰のオケであるベルリン・フィルを指揮することになったのか。今回の特集記事では、小澤征爾との数々のエピソードも交えながら、佐渡氏の足跡を大変興味深く読ませていただいた。

この特集記事を読み進めていくうち、私は、チャイコフスキー国際コンクールで優勝した諏訪内晶子氏の著書「ヴァイオリンと翔ける」の一節を思い出した。
その著書で、諏訪内さんは、「ヴァイオリンのような自分で音程を作らなければならない楽器では、日本人の場合、どうしても平均律で音程をとってしまうようだ。国際コンクール等ではそれがハンディとなってしまう。クラシックの国である西洋人の耳には平均律よりの演奏に違和感を感じる」と語っている。

もともと私達の身体に流れている「血」が違うことによるハンディを乗り越え、西洋の文化で活躍する日本人が増えてきている。
我ら日本人、そして東洋人が西洋の文化で活躍していることは、相当の努力もあったと思われるが、「奇跡」とも言える現象が起こったのではないか。

佐渡氏によれば、奇跡を起こす方程式が存在するという。才能、運、努力は足し算だが、掛け算になるものが一つだけある。それは、感謝力だと。

奇跡を起こし、東洋人というハンディキャップを乗り越え、西洋の舞台で活躍する音楽家たちの奇跡の演奏を、私は、これからも楽しみに聴いていきたい。




2019年8月18日日曜日

災害報道の特徴

「報道機関は、災害報道となると理性を失う傾向がある」ということだ。
災害報道には、
①災害は、大ニュースだ。読者・視聴者の関心も高い。
②情報の整理分析よりも速報性が重視される。
③瞬時に大量の紙面または放映・放送時間が割かれる。
という特性がある。
私はそのことを非難しているのではない。取材される側の行政としては、「災害に際して、異常な状態にあるのは、被災者だけではない」ことを認識して事に当たるべきだと言いたいのだ。
(引用)自治体の政策創造、青山著、三省堂、2007年、218-219

先日、台風10号が西日本を縦断した。その際、JR西日本は2日前から段階的に運休を予告したため、当日、駅などで目立った混乱はなかったという。
お盆休みのUターン時期と重なり、山陽新幹線だけで約20万人が影響を受けたにも関わらずだ。

影響を受けられたかたには反論を言われるかたも見えると思うが、私は、この措置を大いに歓迎したい。
元東京都副知事の青山氏も災害報道になると報道機関は理性を失う傾向があると指摘する。
台風が迫り、刻々と各地の被害状況が伝えられる中、ややもすると、交通機関の運行状況に関する報道は埋もれてしまい、上手く伝えられない可能性がある。
ゲリラ的な豪雨や大規模地震のように、予知が困難な災害は別にして、気象庁の予測精度が上がっている台風の進路は、数日前から予知できる。
今回のJRの対策は、まさに「災害報道の棲み分け」を上手に駆使し、台風による被害が深刻になる前に予告し、利用客の混乱を防いだ。

この措置は、もっと身近にも広げるべきだと思う。
例えば、学区の運動会や町内会の行事ごとなどにおいても、事前に予知できる災害であれば、「翌日の運動会は中止にします」などと予告すべきではないか。
当日朝決定となると、例えば役員のかたは、「お弁当の手配はどうしよう」とか、保護者のかたは、「もし中止になったら翌々日の仕事の調整をどうしよう」ということにもなる。
このように、事前予告というのは、その決定を受け入れ、次のステップをいち早く検討することができることから、それぞれ関係されるかたのストレスを軽減させる意味合いもあると思う。

実際、運休を決めたのち、当日、新幹線が運行可能であった状況もあるかもしれない。
しかし、オーバートリアージともいうべきことが生じたとしても、「災害報道の棲み分けい」をし、人々の生命・安全を守り、混乱を防ぐことが最優先ではなかろうか。

まだこの措置も改善の余地があると思う。
また、お盆の時期だったから、今回だけ2日前に予告したということかもしれない。
ただ、災害時に影響が大きいと予測される事案については、速やかな決定、速やかな周知が望まれると考える。

(引用)日本経済新聞、2019年8月17日付、朝刊記事





2019年8月17日土曜日

着眼大局 着手小局

子育てにやさしいまちは、その都市の人口減少を食い止める。

兵庫県明石市は、保護者に対する保育料や医療費などの経済的な負担の軽減をはじめ、子育て環境の整備に力を注いでいることで知られる。その結果、関西圏が人口減少に陥る中、明石市は、人口が回復し、全国から注目されている。

そんな中、同じ関西圏で若い市長、副市長が人口減少を食い止めることで頑張っていることを知った。人口規模5万強の大阪府四條畷(しじょうなわて)市だ。
その四條畷市の副市長は、民間から初となった林有理氏だ。

林氏は、職員とともに子育てマップ作成でおむつ交換ができる店などをまとめたり、窓口でのQRコード支払いを全国で初めて導入したりした。
林氏自身も母親ということで、その視点を行政に反映させたそうだ。

何が子育て支援策で必要なのか。
例えば、公園の使い勝手はどうか、保育園の入園手続きは保護者にとって優しいものになっているのだろうかなどと考えていくと、どうしても行政の縦割りの弊害が生じる。
そこで、林氏は、各部局の部長クラスを中心に経営会議を発足させ、縦割りの組織に横串を通し、子育てにやさしいまちを着実に実現し、その街の人口減少を食い止めている。

林氏の座右の銘は「着眼大局 着手小局」。これは、孔子の弟子の荀子の言葉で、全体を俯瞰的に対局に見ながら、目の前のことを細心の注意を払って実践することだ。
壮大な、しかもそこに住む人達にとって利益をもたらす政策は構想できた。しかし、どこから手をつければよいのか、わからない時がある。そんなときは、この言葉を思い出し、まず、目の前のことから変えていくことが必要だと感じた。

もう一つ、林氏は、「一切唯心造(いっさいゆいしんぞう)」という言葉も大切にしている。これは、「すべての事象は、あなたの心が創り出している」という禅語だ。すなわち、あらゆる存在は心より現出したものにほかならず、心のほかに何も存在しないことを意味する。
あのスティーブ・ジョブズも座禅によって自分の深いところに下りていき、自分の実現したいものを世に送り出し、数々のくらしを変えていった。

政策とは、子育てにやさしいまち、そして自分たちで楽しい街を創ろうとする、その「想い」から出発する。

引き続き、四條畷の取り組みを注視していきたい。

(引用) ハフィントンポスト
https://www.huffingtonpost.jp/entry/shijonawate_jp_5ce4e037e4b0547bd12eebc5












生産年齢人口の2割超

一昨日は、終戦記念日であった。
今年のお盆、家族で先祖のお墓参りしたとき、無念にも戦場に散った身内の名前が墓に刻まれていた。私の子供がそれを見て、「誰?」と私に聞いた。幼いときから、私は、自分の家のお墓に戦死した身内の名前が刻まれていることを知っていた。しかし、改めて聞かれると、私は、その身内の顔も、生き様も知らないことに気づかされた。
彼らは、将来の夢を描きながら過ごすであろう青春時代を、どんな気持ちで戦地に赴いたのだろうか。終戦記念日の正午の黙祷時に、そのことを思った。

政府は、バブル崩壊後に高校や大学を卒業した「就職氷河期」世代の就職支援を本格させるという。この世代は、2018年時点で35~44歳の人で、人口規模は1689万人、生産年齢人口(15歳~64歳)にしめる割合は22.4%にのぼる。つまり、現在の生産年齢人口の2割超が就職氷河期世代ということになる。

せっかく高等教育を学びながら、景気の影響で就職難だった。そんな就職氷河期のかたたちを支援する目的として、政府は、正規雇用で半年定着したら研修業者に成功報酬型の助成金を出すという。

昨年、33~45歳で無職やフリーターの人は、2003年の57万と比較し、92万人に増加した。明らかに、就職氷河期の影響が出ていると言わざるを得ない。

戦時中に、そして就職氷河期に地球に舞い降りて、この世に生を受けることは、その本人のせいではない。
また、当時の社会情勢のせいにしても始まらない。
いま、社会全体で希望が持てるような策を講じていくことは、私も大いに賛成するところである。ぜひ、有効な就職支援を行ってほしいと思う。

(引用)日本経済新聞 8月15日 朝刊記事










2019年8月7日水曜日

脱皮

昨年末、雑誌の対談で作家の塩野七生から面と向かって諭された。
「これからあなたは、『脱皮』をしなければいけません。」
(「文藝春秋」2018年2月号)

これは、塩野さんのファンだった小泉進次郎氏が言われた言葉だ。
塩野氏との別れ際、小泉氏は、「それは僕自身が感じていたことでもあります。何とか脱皮して凄みを身につけられるように努力したいと思います。」と語った。(同前)

本日、小泉進次郎氏と滝川クリステルさんが結婚を発表した。
私は、このニュースを聞いたとき、小泉氏はまた「脱皮」したと思った。

人間が大きく成長するためには、脱皮が必要だ。
それは、肉体的にではなく、成熟した大人が精神的に脱皮することも含まれる。

人は、脱皮を繰り返し、付き合う人を変え、お金の使い方を変え、考え方を変え、自分の行動を変え、社会を変える。
人が脱皮するということは、自分自身があたらしいステージに上がり、社会に変革をもたらすということではないだろうか。

いま、若い世代の方の活躍が目覚ましい。
先日のゴルフのAIG全英女子オープンで優勝した渋野日向子選手もその一人だ。
大会中は、ギャラリーとハイタッチしたり、握手を交わしたりしながら笑顔で、果敢かつ大胆に攻める姿に感動した。
これにより、渋野選手の世界ランキングは46位から、一気に14位となった。今回の優勝は、彼女にとっても『脱皮」であり、夢である東京五輪も近づいた。また、彼女の活躍は、自分自身の成長のみならず、豪雨で被災した地元にも大きな勇気と希望を与えた。まさに彼女も社会に変革をもたらした一人だ。

脱皮した若い世代の活躍を、これからも応援したいと思うと同時に、自分自身ももっと脱皮を重ねなければと思った。

とにかく、小泉進次郎氏と滝川クリステルさんのご結婚、そして渋野さん、本当におめでとう。

(引用)NEWS PICKS Magazine 2018年夏号、株式会社ニューズピックス、株式会社幻冬舎、2018年、025






2019年8月5日月曜日

3000万人の壁を突破したインバウンド

訪日客が急激に増加している今は、日本らしさ、その地域らしさといったものを見直すよいチャンスです。
私たち日本人が何千年も昔から文化を育んできたこの土地を、「歩いて」「遊んで」「食べて」「買い物をして」「触れ合って」「泊まって」体感してもらうことが、「旅游(りょゆう)」のあり方だと思います。

(引用)これからの都市ソフト戦略、藤後幸生著、角川書店、2019年、195

令和元年8月4日付けの日本経済新聞朝刊によると、「インバウンド」と呼ばれる訪日外国人旅行者は、昨年(2018)3,119万人で、3000万人の大台を初めて突破したという。

藤後さんは、著書の中で、普段私達がよく使う「観光」ではなく、「旅游(りょゆう)」という言葉を使っている。「観光」という言葉は、「視察」という意味を持っていたため、「存分に旅を楽しむ」といった、同じ中国由来の「旅游」という言葉のほうがしっくりくると藤後さんは提案される。

訪日客数でダントツなのは、大阪市中央区。実に訪日外国人旅行客の3人に1人が訪れた計算だ。先日、大阪サミット2019も開催されるなど、大阪は、無線Wi-Fiや多言語表示促進など、訪日外国人旅行者を受け入れる体制を着実に整えてきた。

また、大阪の魅力といえば、なんといっても「食」が充実していることであろう。食い倒れの街、大阪を代表する「道頓堀商店街」界隈は、魅惑的な大阪グルメの店で埋め尽くされ、賑わいを見せている。
また、私は、大阪の黒門市場を訪れるたび、訪日外国人旅行者が増えて来ていることを実感する。なお、余談になるが、黒門市場では、なんといっても生牡蠣がおすすめ。その場で買って、捌いてくれたものを、その魚屋さん特製のポン酢で食す。大きな生牡蠣を頬張るとこの上ない幸せな気分になる。

そのほか、同日付の日本経済新聞の記事によると、大阪の訪日客の増加を支えるのは、「日雇い労働者の街」として知られたあいりん地区周辺が、外国人バックパッカー向けのゲストハウスや民泊施設で目立つという。
このことから、訪日外国人旅行者は、安い民泊組と高級ホテル組の「二極化」されてきたと考えられるのではないだろうか。

訪日外国人旅行者の消費単価で3位に躍り出たのは、北海道占冠(しむかっぷ)村だ。恥ずかしながら、私は、日経新聞の記事でランキングされている占冠村というところを知らなかった。一般的に北海道旅行といえば、札幌、函館などの名前を思い出す。
しかし、占冠村を調べていくと、その村には、あの「星野リゾート トマム」がある。
夏は雲海が見られるテラスへ、冬はスキーへと楽しめることから、泊まりながら大自然を体感できることで人気があるのだろう。まさに、高級ホテル組ということができる。

占冠村では、星野リゾートという資源のみならず、近隣の美瑛や富良野などの有名観光地と組み、サイクルツーリズムを進めているなど、点(星野リゾート トマム)から面(広域観光推進)への展開を試みる。また、星野リゾートは、外国籍の従業員も多いことから、占冠村では、多文化共生の取り組みなども求められているという。

それぞれの地区で、それぞれのインバウンド戦略、そして課題がある。課題として、先ほどの占冠村では、星野リゾート以外を周遊してもらい、いかにお金を落としてもらうかということであろう。また、SNSの発達で、いきなり「人気スポット」になってしまい、受け入れ体制が整わないなどの課題、いわゆる「オーバーツーリズム」に対する解決策も求められる。

だが、人口減少などで国内の個人消費が見込めない我が国では、インバウンドブームを好機と捉え、経済の活性化につなげていくことが求められる。

今後、私も各地域のインバウンド戦略を注視していきたい。
それは、インバウンドを一過性のブームで終わらせず、永続的なものとして、まず、私の住む地域に定着させたいと思うからだ。













2019年8月3日土曜日

これからの都市ソフト戦略

これからの日本の街に必要なことは、みんなで便利に暮らすためのコンパクトシティの実現です。
もともと城中心の街だったところに駅ができ、郊外に宅地造成されたことで人々は分散して住むようになり、街は中心地を失っていまいました。
それをもう一度取り戻し「職・食・遊・学・住・医」のある、歩ける範囲のコンパクトシティを築くことは、将来的な街づくりの必須条件となると考えます。
(引用)これからの都市ソフト戦略、藤後幸生著、角川書店、2019年、130-131

今までの私達の住む街の成り立ちを知り、我が国の抱える課題、そして、なぜこのような都市ソフト戦略が必要かという豊富なエビデンスによって、読者は納得させられる。
なぜ、著者は、これからの街づくりに「都市不拡散」と「商縮」を提言するのか。
本書を読み、コンパクトシティの必要性や商業施設のみならず、そこに学び、医療など様々な機関が構成された有機的、かつ人の心に届くソフト的な都市戦略が必要あると感じた。
それは、今までの様々な施策の反省から成り立つことも多い。過去から学び、時代の潮流に合わせ、未来のビジョンを見据えた街づくりがいま、求められている。
特に、ストロー現象の話は、中部圏に住む私の心に響いた。それは、リニアが開通し、東京・名古屋が40分で結ばれるようになれば、名古屋が東京経済圏に統合されることになるかもしれない。つまり、「中部圏」という言葉がなくなってしまう可能性もある。しかし、著者によれば、アイディア次第では、中部圏はチャンスにもなり得ると言う。つまり、「逆ストロー現象」を起こす必要があるのだ。
この一節を読み、私は、今後ますます高齢化・人口減少が進展し、交通インフラが整備されて人々の移動のスピードが速まることにに危機感を抱くと同時に、さらなる自分たちの住む街の都市のソフト戦略が必要であると感じた。
すでに我が国は、超高齢社会を迎えている。これから求められる本当に住みやすい街、若者と高齢者が共存できる街、そして、いつまでも持続する街づくり。
その都市戦略の具体的な手法を、森ビル株式会社顧問の藤後氏は、わかりやすく教えてくれた。


2019年8月2日金曜日

過去最多の衝撃

(児童福祉司の確保には限界があるため)親への育児指導を外部委託するなど、業務の効率化も進めていく。
厚生労働者の担当者 
(引用)2019年8月1日付 日本経済新聞社夕刊記事

昨年度、全国の児童相談所で対応した児童虐待件数は、前年度比19.5%増で過去最多の15万9,850件であったという。
このような数字を見るとき、私は、「ハインリッヒの法則」が当てはまるのではと考える。この法則は、主として病院などのアクシデントの発生についての経験則によるものだ。1件の重大事故の背後には、重大事故に至らなかった29件の軽微な事故が隠れており、さらにその背後には事故寸前だった300件の異常、いわゆるヒヤリハット(ヒヤリとしたりハッとしたりする危険な状態)が隠れているというものである。
このハインリッヒの法則を当てはめてみると、顕在化した約16万件の児童虐待件数に対して、464万件の軽微な虐待の事例が隠れており、さらにはその背後には虐待に至る寸前だった4,800万件の異常が隠れている可能性がある。
もちろん、約16万件の件数には軽微なものも含まれているだろうし、一概に児童虐待件数にハインリッヒの法則を当てはめるのも無謀であると承知している。
しかし、私は、2019年4月1日現在の我が国の子供の数(14歳以下)は1,533万人ということから考えると、約16万件の児童虐待件数は異常に高いものと考える。また、その背後に隠れた、顕在化していない児童虐待数は、計り知れないものがある。

その虐待の対応に追われる児童相談所の体制が整わない。先ほどの記事によると、この18年間で児童の虐待件数は9倍も増加しているのに対し、児童相談所で対応する児童福祉司は2.6倍の増加にとどまっているという。
さらに、いまの児童相談所は保護者や子どもへの対応、関係機関との連携を一手に担わされていている感がある。

一般的に、子どもへの虐待が起こる要因としては、次の3つに分類されるといわれている。まず、1つ目は育児不安を抱えるなどによる「親の要因」、2つ目は経済的不安や核家族化の進展に伴う「家族の要因」、そして3つ目はお子さんが障害などを抱えてみえるなどの理由による「子どもの要因」である。
また、児童虐待のケースはこれらの要因が複雑に絡むことも多い。

児童相談所は全国で215箇所(4月1日現在)であるという。
そこで働かれているかたの負担を軽減するためにできることはなにか。

虐待防止は、行政や学校、そして児童相談所だけの責任ではない。
個人、家庭、地域社会、さらには子ども虐待防止を目的とするオレンジリボンのような非営利活動法人が一丸となって、まず、身近にいる子育て中の親や子どもたちを守り支えていくという「意識」を持つことから始めることが重要であると思う。
そこに住む人達が、次の地域を創る子供達を育てていくという当事者意識を持つことを。



2019年7月27日土曜日

実行力

部下がこれまで「絶対にできない」と思っていたこと、部下にとっての長年の懸案、こうしたものを解決することによって、「最初の衝撃」を与えることが重要だと考えたのです。マキャベリも名著「君主論」において、「統治者は最初に衝撃的な大事業を行うべき」という意味のことを語っていますね。
(引用)  実行力 結果を出す「仕組みの作りかた」、橋下徹著、PHP新書、2019年、84

本書は、大阪府庁1万人、大阪市役所3万8千人の組織を動かしてきた橋下氏が、どのように考え、行動し、結果を出してきたかという「仕組み」の作りかたを纏めたものである。
本書を読み進め、読者の対象となるのは、必ずしも自治体の首長のみではないと感じた。

例えば、冒頭の引用文。これは、何も首長に限ったことではない。私も人事異動のたびに、その異動先に何の課題が存在しているのかを把握するところから始める。
そして、異動先の職場が抱えていた課題に対し、私も橋下氏と同じだなと感じたことは、現状が悪いのであれば、ますはこれまでの方針の全否定から入ることだ。このことを橋下氏は、「逆張りの法則」と呼んでいる。
そして、新しい職場環境でいち早く、逆張りの法則によって見つけ出した方針を示し、実行する。ミドルリーダー以上の職員なり社員は、そのことを心掛けてインパクトを与えることが必要だと思う。
その姿勢を見せ、実際に結果を出す。これこそが、リーダーだと橋下氏は言いたいのだろう。

ほかにも、本書には、橋下氏自身が経験し、当時の実例を交えながら、具体的かつ現実的に巨大組織を動かすためのプロセス、そしてリーダーの在り方が描かれている。
自治体職員をはじめ、民間事業者で働く多くのミドルリーダー以上のかたに薦めたい一冊である。











2019年7月22日月曜日

思考の道具箱


現状を維持するためには、周囲の変化に合わせて進化しつづけなければ、生き残ることはできない。

Think clearly、ロルフ・ドベリ著、サンマーク出版、2019年、355



人生を歩むとき、日々、様々な出来事に遭遇し、その出来事に対して思考を張り巡らし、決断することを迫られる。

例えば、普段の買い物から始まり、読書の仕方、簡単な頼みごとを引き受けるかどうかなど。

本書は、そんな身近な話題から、人生の成功、さらには死に至るまで、人生に必要不可欠な「思考」のアドバイスを提供してくれる。



冒頭に記した本書の言葉を聞いて、私は、進化論を唱えたダーウィンの名言とされるものを思い出した。



生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。



本書では、「変化合わせて進化する」ということは、「不毛な争いを避ける」という意味で使われている。

つまり、あなたがその第一人者であり、なおかつ軍拡競争とも無縁でいられる分野を見つけることができれば、競争に巻き込まれず、不毛な争いを避けることができるのだという。

本書では、このような52の人生に役立つ思考法が散りばめられている。



私は、あまりこの手の本を読まない。

しかし、本書は、今まで歩んできた人生の考え方がこれでよいかを確認できた。

そして、この本を読んで、残りの人生、楽に生きられるような気がした。

ぜひ、多くの人におすすめしたい。




2019年7月7日日曜日

チームを最強にする「ABCDEの魔法」


私の人生で最も誇れるもの。
それはメンバーたちと一緒につくってきたチームです。
私たちのチームはどんなに高い目標でもあきらめません。
私たちのチームは誰かが苦しんでいたら、誰かが支え、助けます。
私たちのチームは自分たちが世界を変えると、全員が本気で思っています。

(引用)
THE TEAM 5つの法則、麻野耕司著、株式会社幻冬舎、2019年、15


本書は、著者自身の経験やコンサルの知見をもとにまとめられたチームの法則
私は、A(目標設定)B(人員選定)、C(意思疎通)D(意思決定)E(共感創造)と進んでいくうちに、最強のチームになることを知った。

まず、チームとは何か。
2人以上集まり、「共通の目的」を目指せば、全てチームだ。
チームとは、家族にはじまり、小学校の通学団、町内会やPTA、民間事業者や非営利組織に至るまで、私たちの身近にも多く存在する。

本書は、普段、関わっている身近なチームを念頭に読み進めていくと良い。
「なるほどな」と思われるフレーズに幾度となく、出会えることができる。
また、この本は、チームの法則ではあるが、リーダーのためのものでもある。
まさに、AからEに至るまで、リーダーによる役割は非常に大きい。

さらに、本書では、著者自身がAからEまでを職場で実践し、チームの強化を図った事例も掲載されている。具体的な手法も掲載されており、成果をあげていることから、説得力も増している。

チームの法則、
つまり、「ABCDEの魔法」は、あらゆるチームを最強にすることが分かった。


2019年6月29日土曜日

無子高齢化


要するに、何よりも男女ともに安定した仕事を得ること、結婚して二人で働けば出産・子育てもできる経済力、それこそが少子化対策に必要なのである。

(引用)
無子高齢化 出生数ゼロの恐怖、前田正子著、岩波書店、2018

まず、「無子高齢化」というタイトルを見て、私は、「やられた」と思った。
そう、これから日本が直面する最大の加田は、「少子」ではなく、「無子」なのである。

この本が、他の「少子化本」と一線を画しているのは、著者の前田氏が横浜市副市長という経歴の持ち主であることから、行政的な立場から「少子化」の解決策についてのアプローチを試みている点である。
実際、本書で著者は、その対策案として、行政的な視点から5つの案を提起している。
その提起された5つの案から、私は、非正規社員や外国人労働差の増加、奨学金の返済問題、家事・育児時間の増加など、様々な要因が重なり合い、我が国は少子化が進展してきたことを改めて認識させられた。そして、少子化対策は、行政において、子育て担当部署のみならず、経済振興、教育委員会、そして男女共同参画や国際を担当する部署が連携をして対策を講ずる必要があるのではと感じた。まさに、あらゆるエビデンスを得て著者が主張するように、まず、少子化対策とは、若者が経済力をもつような基盤整備が求められるのではないだろうか。

2017年の合計特殊出生率は、1.43である。このままだと、早くも3世代目の時点で、日本で生まれる子供の数は半分になってしまう。

無子高齢化時代の予兆は、すでにわが国で始まっている。生産年齢人口の減少に伴い、外食産業やコンビニエンス業界では、人手不足により、営業時間の短縮などに迫られている。
今まで当たり前と思っていたサービスが受けられなくなる。著者は、このまま日本の農家の減少と高齢化が進めば、畑が急な傾斜にあって、機械化も難しいミカンが食べられなくなるのではと危惧している。

「無子高齢化」時代の到来。我が国は、他の諸国と比較し、いち早く、その時を迎える。
その時を変えるべく、私たちは、行動を起こさなければならない。
本書を読んで、いま、始めるべきことを始めなければと思った。


2019年5月14日火曜日

勝てば官軍

「勝てば官軍」というと、なにかむきつけな感じがするかもしれないが、そうではない。
ビジネスは勝たなければ価値はない。人生もまたしかり。

(引用)
勝てば官軍(新装版)、藤田田(でん)著、KKベストセラーズ、2019年、7

いま、経営本と言えば、哲学やVISIONを社長と社員と共有すること。また、いつも感謝の心を持つなどの類が多くを占める。
もちろん、私は、これらの本を否定するわけではない。むしろ、「心の時代」と言われる現代社会において、求められるのは、社員と顧客、双方が幸せになることであろう。
顧客を創造し、幸福を追求していくことこそが企業の持続的な繁栄につながっているということは、大いに共感できるし、私も実践していきたいところだと感じている。

しかし、藤田氏の本は、これらの経営本と一線を画す。そこには、現場で戦ってきた一人の男の想いが綴られている。そこに、「綺麗ごと」はない。
この本の復刻版が出版されたということは、藤田氏の考え方、数々の経営手法、そしてリーダーとしてのありかたに至るまで、今の時代にも求められているということであろう。

不思議なことに、本を読み始めると、藤田氏の情熱が溢れ出し、その情熱が瞬時に読者に伝わり、藤田ワールドに引き込まれる。まるで、藤田氏が目の前に立って、熱く話しかけているかのように。

なぜ、引き込まれるのか。
藤田氏にとって、経営とは、「戦い」なのであろう。その戦ってきた姿、そして勝ちにこだわる姿は、共感を覚える。と同時に、改めて経営の難しさも教えてくれる。

なぜ、藤田氏は、ここまで戦い続けたのだろうか。
きっと、藤田氏の根底にあるのは、アメリカや西欧文化の良いところを日本に取り入れ、「日本をもっと豊かにしたい」という想いがあったのだろうと思う。

では、なぜ、藤田氏は、勝ちにこだわり続けたのか。
藤田氏は、自分が勝たなければ、いつまでも諸外国から日本が取り残され、私たちの暮らしが豊かにならない。だからこそ、変えていかなければならない。という、壮大な使命がったのではないだろうか。

マクドナルドやトイザらスを日本に広めるなどした藤田氏は、残念ながら、もう、この世にはいない。
しかし藤田氏の遺した言葉や考え方は、これからも本書を通じて広く伝えられていくことだろう。

藤田氏が設立した「日本マクドナルド株式会社」は、アメリカで開かれたマクドナルド世界コンベンションで「世界一」だと紹介された。

ビジネス、そして人生は勝たなければ価値はない。

そう教えてくれる藤田氏の考え方を、今度は、「今を生きる」私たちが実践していかなければならない。
それが、牽いては、社会が、そして日本が豊かになることにつながるから。

2019年5月12日日曜日

真の経営とは

「仕事は、人が幸せになるためにするもの」
「事業は、人を幸せにするためにするもの」
「企業は、人が幸せになる場所」
「経営とは、あらゆる手法を駆使して、社会に貢献すること」

(引用)
真経営学読本、福島正伸著、きんざい、2016年、323

この「真経営学読本」は、福島氏の人生の集大成ともいうべきものである。
また、この本は、本来、経営学で学ぶべきものとは、一線を画す。つまり、会計学、マーケティング、人事管理などの学術的な言葉は出てこない。
この本は、全く経営の知識を知らなくとも、難解な言葉に出会うこともなく、すらすら読める。
それは、まるで、経営学ではなく、人生論の本ではと思わせてくれるほどだ。

従来、経営とは、数字ありきでいわれてきた。
その企業が健全であるどうかを判断する際には、貸借対照表をはじめとする企業分析から始まる。事実、私も、大学でそのように教えられてきた。

確かに数字とは、客観的に企業の健全度を測る上で、一番優れている。
しかし、数字を追うことが経営ではない。
真の経営の根底には、人間があり、幸福があり、他者への貢献がある。
それは、どの分野の仕事であろうと、変わることのない、不変的な、真の経営につながることであると福島氏は教えてくれる。

「利己、己を利するために利益を追求することから離れ、利他、他人をよくしてあげようとする優しい思いやりをベースに経営していくと、会社は本当によくなります。」と京セラを立ち上げ、JALを再生させた稲盛和夫氏も言われる。

真の経営とは、人間としてのあたりまえのことを実践していくこと。
それは、冒頭に紹介させていただいた4つのことを実践していくことにほかならない。

私たちが経営することにより、まず、自分が幸せになり、働く仲間が幸せになり、それを受けた人たちが幸せになり、牽いては社会全体が発展し、幸せに包まれる。

経営とは、何も事業を経営している者だけにあてはまるものではない。
企業に勤める人間にとっても社会の構成員の一員として、常に経営を意識する必要があるだろう。

幸せの追求
それこそ、社会人としての使命であり、そこから真の経営は始まる。








2019年3月20日水曜日

成就

強烈な意志、強烈な熱意、こうありたいという強烈な願望というものが伴ったときに、初めて物事というのは成就するんだと思います。

(引用)
誰にも負けない努力 仕事を伸ばすリーダーシップ、稲盛和夫著、PHP研究所、2019年、190

本書は、稲盛氏が社内外の主にリーダーに向けて話し続けてきたものをまとめたものである。

稲盛氏によれば、素晴らしいリーダーとは、
まずは、潜在意識に透徹するほどの、強く持続した願望を持つこと。
そして、自分の周囲にいる人たちに目標をはっきり指し示し、自分がシミュレーションしたことを集団の全員に説明して、それが成功するのだということを信じ込ませる雰囲気をつくることだと説いている。

稲盛氏は、自身が影響を受けた中村天風の考えかたを踏襲しつつ、リーダーのあるべき姿を確立した。

中には、物事がうまくいかなかったとき、周りの人のせいにして、誹謗中傷だけを繰り返すリーダーがいる。
中には、進むべきビジョンを示さず、組織に無関心なリーダーがいる。
中には、部下と意思疎通を図らず、組織のモチベーションをあげないリーダーがいる。

そんなリーダーに、人はついてくるだろうか。
いや、そんなリーダーには、誰もついていかない。

経営破綻したJALまで復活させた稲盛さんが確立した哲学は、どのような組織、どのような立場、そして、どのような仕事をしていても共通するものがあり、大いに参考になる。

誰しも、仕事を進めていく上で、大きな壁が立ちはだかり、それを乗り越えていけるか不安になる。

よく、人は言う。
仕事は、自己実現である、と。
しかし、仕事は、社会を創造することにもつながる。
よりよい社会を創るためには、そのビジョンを描けるリーダーが必要だ。

稲盛氏は、自身の哲学で、とてつもなく大きな壁を乗り越えた。

自問してみるといい。
いま、現実に私たちの前に立ちはだかる壁は、JALを復活させた稲盛氏が経験した壁より高いものであろうか。

いや、そんなことはないはずである。

そうすれば、自分の抱えている課題も小さく見えてくる。
稲盛氏からは、リーダーシップのあり方と同時に、勇気を持つことの大切さも教えていただいたように思う。

私の尊敬する稲盛和夫さんに、あらためて感謝したい。







2019年3月13日水曜日

思い込み

人の心にしみついた根拠のない思い込み。これが一番怖いんですね。
宮城県名取市 資料館「閖上の記憶」 語り部 渡辺成一さん

(引用)
日本経済新聞朝刊、平成31年3月11日朝刊、「春秋」欄

東日本大震災の発生から8年が経過した。
あっという間の8年だった。
しかし、被災者の方からすれば長い8年だったことだろう。
そして、今でも避難生活を余儀なくされてみえるかたも大勢いる。

本当にあの震災があって、津波があって、原発事故があったのだろうか。
8年という時が流れ、一番怖いのは、その事実が風化されていくことだろう。
風化させないために、渡辺さんのような語り部は、震災の怖さ、恐ろしさを伝承するうえで欠かせない。

東日本大震災発生当時、私も被災地支援のため、幾度となく、東日本を訪れた。
しかし、訪れることのできなかった土地が二つある。一つは福島。そしてもう一つは、閖上だ。
福島県は、当時、原発事故の関係で、立ち入りが制限されていた。
かつて研修で知り合った仲間が浪江町に住んでいた。
しかし、当時の福島の状況があまりに凄惨で、連絡も取れずにいた。

昨夏、私は、御縁をいただき、福島の地を訪れることができた。
いわき市から入り、第一原子力発電所の近くを通り、浪江町へと進んだ。
第一原子力発電所近くのバスからの車窓は、どの家の前にも厳重にグレーの大きな柵がしてあった。
自分の家なのに帰れない。
未だに復興途中であることを痛感させられた。

浪江町役場で研修仲間のことを聞いてみた。
残念ながらお会いできなかったが、彼女は、結婚して子供もいて、そして浪江町に戻ってきていた。
そのことを伺い、福島に一筋の希望の光が見えた気がした。

もう一つの場所が閖上だ。
訪れることができなかった。
いや、正確に言えば、閖上も訪れた。
つまり、閖上まで行ったのだが、その先が立ち入り禁止区域になっていて、警察官が通行止めを行っており、進むことが許されなかった。

その閖上を訪れる直前のこと。
私は、宮城県七ヶ浜町でボランティア活動をしていた。
その時に、偶然、閖上のかまぼこ工場で働いていたという女性と同じボランティアグループになった。
彼女は、東日本大震災直後、働いていた工場が流されたが、何とか自分自身も高台に逃げ込み、一命を取り留めた。
しかし、震災によって、失うものも多く、その後、彼女は、引きこもりになってしまう。

私がボランティアに参加したのは、震災発生から4か月後の夏。
ちょうどそのころ、彼女も精神的に落ち着き、自分自身を変えようとしてボランティア活動に参加したそうだ。

昨今、私たちの住む東海地方では、南海トラフ地震の発生が叫ばれている。
実際に発生すると、その被害状況は、東日本大震災より上回る可能性が高い。

何気ない日々の生活を送り、ありふれた幸せすら気づかないときがある。
しかし、大震災によって、人々の生活、そして考え方が一変する。
東日本大震災での経験は、私にそのようなことを教えてくれた。

天災は忘れたころにやってくる

もし、いま、南海トラフ地震が発生したら、
そのとき、「自分や家族だけは被災しない」と思い込んでいた自分を責めることになるだろう。

そうならないために、いま、できること。
日常の何気ない生活が送れ、自分の周りにいてくれる人たちに感謝し、大規模災害にも備える暮らしをしなければならない。

冒頭の渡辺さんのコメントを聞いて、ふと、そんなことを感じた。







2019年3月10日日曜日

AIM

A=Audience(聴衆):どんな属性の人に伝えるのか
I=Intent(目的):伝えることによって相手に何をしてほしいのか
M=Message(メッセージ):どんなメッセージを伝えてれば相手は行動してくれるのか

(引用)
スタンフォードでいちばん人気の授業、佐藤智恵、幻冬舎、2017年、265

AIMとは、ダートマス大学のメアリー・マンター名誉教授らが紹介したフレームワークだ。
このAIMは、今後、人とコミュニケーションをはかる際に意識したい。

このことについて、自分なりに解釈してみたい。

まず、A。それは、誰を相手に話すかということだ。
相手は単数か、それとも複数か。相手の年齢は、どこに住んでいるのか。
そして、忘れていけないのは、相手は「何が知りたくて私の話を聞きたいのか」
ではないだろうか。

次にI。なぜ、これを伝えなければならないのか。また、伝えることによって相手に何をしてほしいかである。
このことを明確にしなければ、相手に伝わらない。

そして最後にM。一番気を遣う部分である。また、多くの人は、このMに力点を置く。
相手に行動を起こしてもらうためには、ウィンウィンによるメッセージの構築を考えなければならない。
しかし、常にウィンウィンによるメッセージが構築できるわけではない。
中には、こちら側の一方的な理由で事業を廃止させ、住民の理解を得る場面も想定される。そのとき、相手側のウィンが見いだせないときがある。しかし、事業を廃止して、相手方にどのようなメリットがあるのかを執拗に探さなければならない。
そうしなければ、相手は動かない。

時として、人とのコミュニケーションは難しい。
意思疎通が図れないときもある。

しかし、このAIMを意識することによって、「伝える力」そして「相手が行動してくれる力」が芽生えてくる。

コミュニケーションを必要とする場は、仕事上ではもちろん、日々の生活にも数えきれないほどある。

相手は誰か。なぜ伝えなければならないか。そしえ、相手にどのように行動してほしいか。

常に意識しようと思う。




10箇条

1 自らが高潔な人物になることから始める
2 尊敬を得られることに投資する
3 周りの人を啓発する
4 達成したい目標を明確にする
5 共通の夢を形成する
6 全社員に情報を共有する
7 建設的な意見の相違を尊重する
8 謙虚にふるまう
9 ウィンウィンとなる交渉をする
10 信頼できる人を見極め、10箇条を注意深く実行する

(引用)
スタンフォードでいちばん人気の授業、佐藤智恵、幻冬舎、2017年、186-187

ジェットブルー航空は、アメリカのLCC航空会社であり、「北米エアライン顧客満足調査」1位の常連である。
インターネット検索をしてみても「ジェットブルー航空の神対応」ということで、多くの事例が紹介されている。
社員一人ひとりにホスピタリティ精神があったからこそ、ジェットブルー航空は、競争が激化しているアメリカの航空業界で生き残り、勝ち進んできた。

なぜ、ジェットブルー航空は、他社と差別化を図り、ホスピタリティ精神に満ち溢れているのだろうか。
これは、創業者のデビッド・ニールマン氏とスタンフォード大学経営大学院でジェットブルー航空の取締役を務めるピーターソン教授が築き上げた社風によるところが大きい。
では、どのように社風を築き上げたのだろう。
これは、デビッド・ニールマン氏らが前述の10箇条を実践してきたからにほかならない。
その10箇条の核には、「人間性」がある。

3月24日は、ホスピタリティの日である。
人にあたたかな会社は、これからも継続し続ける。
そのために、この10箇条を意識していこう。

3月の静かな雨が降る休日に、そんなことを思った。

2019年2月10日日曜日

共生とは

共生とは、同じ地域に暮らす日本人と外国人が、共に支え生きていくことだ。外国人を「支援される側」から「支援する側」に変えることが重要である。

Vivaおかざき‼代表 長尾晴香
(引用)日本経済新聞 2019.2.6付 「私見卓見」欄

愛知県岡崎市には、1万人強の外国人が住む。市民の40人弱に1人は外国人であるという。
長尾氏は、外国人との共生する必要性を唱え、災害時の戦力にしようと取り組んでいる。

まず、外国人と共生するためには何が必要であろう。
具体的な行政サービスとしては、行政情報の多言語対応や日本語の学習支援などの取り組みが進んでいる一方、生活関連支援では、遅れが目立っているといわれている。そのため、外国人が安心して生活を送れるよう、行政の支援策を充実していくことが求められる。

しかし、真に外国人が生活していくためには、行政サービスのみでは対応できない。神戸市が外国人にとって人気あるとのことだが、その背景には、外国人が「ガイジン扱い」されないという風土が醸成されているからではないだろうか。

ノーマライゼーションという言葉がある。これは、1950年代、デンマークの知的障がい者収容施設における多くの人権侵害に対する改革の理念として誕生したといわれている。

障がいを持たれるかたや外国人などを排除する考えを持った社会は、弱っていくだろう。一方、国や文化、老若男女や障がい者、そして外国人であることを問わない社会は、人口減少社会において、ますます強くなっていくことだろう。

「そこに住むみんながまちの構成員であり、一人ひとりがかけがえのない、必要とされる貴重な人的資源である。」

長尾氏の投稿を拝読し、より一層、行政と住民が一体となって、外国のかたなどと共生していくための取り組みを進めていかなければならないと感じた。

2019年2月2日土曜日

やってみせる

変えるには、まず「やってみせる」のがいちばん早い。

(引用)
福岡市を経営する、高島宗一郎著、ダイヤモンド社、2018年、227

私もこの言葉に同感だ。
何かに挑戦して失敗することより、何もしないことのリスクのほうが大きい。

近年、AI、IOT、シンギュラリティという言葉が躍る。
それに対応していくには、迅速な政策決定がなされ、実行されること。そして、動ける人材を育成していくことではないだろうか。

私は、「すべての仕事は、社会貢献につながる。」と考える。
一人ひとりが選んだ仕事をすること。高島市長の言葉を借りれば、「自分の命は役割があるところに導かれる」ということであろう。
そして、それぞれが仕事をし、役割を果たして”与える”ことにより、"受ける"側が恩恵を受け、社会が成り立ち、成長していく。

また、私は、「すべての仕事は、究極の自己実現でもある。」と考える。
かの「マネジメントの父」といわれたピーター・ドラッカーは、13歳のとき、牧師の先生から「きみは何によって憶えられたいか」と尋ねられたという。
まさに、自分は、どのような仕事をし、どのような功績を残したのか。それは、究極の自己実現であろう。

松下幸之助氏も次のように言われる。
「何事も絶対に成功するという確証など得られるはずがないので、しばしば人は、事前にあれこれ考え、悩みすぎて動けなくなってしまいます。まず、やってみる。そして行動しつつ考える。そうすれば、結果がついてきます」と。
(松下幸之助著、強運を引き寄せる言葉より)

これからいくら技術が進歩し、社会構造が大きく変貌を遂げても、不変的な考え方ではないだろうか。
まず、動く、そして、行動しながら考えることは、いつの時代においても、人間しかできない。

高島市長も「動いた」からこそ、福岡市は、新しいビジネスを生み出すスタートアップに力を入れて、現在4年連続での開業率7%台を叩き出す。また、政令指定都市で唯一、税収が5年連続過去最高を更新し、人口増加率も東京を抜いて1位となった。

自己実現、そして、社会へ貢献することは、いつも「動く」ことから始まる。








リーダーしかできないこと

「決める」というのは、リーダーしかできないことです。
(中略)
私の決断や市の決定を、きちんと市民の皆さんに伝えること。できる限り誤解のないように伝えて、納得していただくこと。これは行政としての大切な役割です。

(引用)
福岡市を経営する、高島宗一郎著、ダイヤモンド社、2018年、78-79

これは、行政に限らず、どの組織でもいえることではないだろうか。
ただ、誤解してはいけないことは、全てがトップダウンではない。
様々な情報を集め、分析し、今後の方針案を取り纏める。
そして、このような施策をしたいと上司にお伺いを立てるボトムアップも大切である。
あくまでも、「決める」のはトップということだ。

それぞれ組織には役割がある。
行政でいえば、「伝えること」が大きな役割である。
高島氏は、アナウンサー出身の福岡市長ということもあり、分かりやすく伝えることにこだわる。

「広報戦略」という言葉がある。
かつて、私も広報部署に配属されたことがあるが、私は広報には、次の3つの役割があると考える。

一つ目は、自治体が行う政策を市民のみならず、市外にも発信する役割である。
自分たちのまちの魅力を発信する。それにより、観光や企業誘致などにつながる。そして、そのことが持続可能な社会を創ることにもつながると思う。
これは、シティプロモーション的な考え方であろう。

二つ目は、市民とコミュニケーションを図り、信頼関係を築く役割である。
かつてから、多くの自治体の広報は広聴機能も有しており、広く市民の声を積極的に聴こうという姿勢が見受けられている。現代でいえば、広聴機能の代表格は、双方向のやり取りが可能なSNSであろうか。
これは、シビックプライド的な考え方でもあろう。
シビックプライドとは、その名のとおり、市民が自分たちのまちに誇りを持つことである。そして、市民が主体的に動き、自分たちのまちを良くしていこうとすることも、シビックプライドの概念に含まれる。さらには、そのまちの構成員である事業所も住民と一体となって、まちを創造していく事例もある。
行政が総合計画などで描く未来の姿(VISION)を共有できているからこそ、住民たちが自分たちのまちに愛着を持ち、そして自発的に良くしようとするシビックプライドが醸成されていくのではないだろうか。

三つめは、危機管理的なものである。
これは、危機管理広報と言われるものである。とりわけ、危機管理広報のうち、クライシス・コミュニケーションは、重要である。

以上、三つの要素を踏まえ、各自治体は、広報戦略を立てていく必要がある。

高島市長は、特に危機発生時にSNSを使うことに積極的だ。
「広報の顔」が見えるからこそ、その情報を欲する人たちに届き、よく伝わっていく。

私は、防災部署にも配属されたことがある。
その際、危機管理時に情報を発信する際に気をつけることは、いかに迅速に、いかに的確に、そしていかに簡潔に、ということを学んだ。

「決める」ということ。そして決まったことを「伝える」ということ。
この当たり前の大切さを、改めて、高島市長から学んだ。
















2019年1月27日日曜日

地方の魅力

フランス料理が美味しいのは、地方料理が美味しいから。

地方の風土にあったものがいっぱいある。
地方には、ものすごく魅力がある。
これを掘り起こせばいい。

サザコーヒー社長 鈴木誉志男
(引用)2019年1月17日放映 カンブリア宮殿 テレビ東京系 

サザコーヒー(茨城県)は、とにかく美味しいコーヒーを追求し、コロンビアにもコーヒー農園を所有するほどだ。

社長の鈴木さんは言われる。「生産性と美味は反比例する」と。

この言葉からもわかるように、豆の選定から徹底的にこだわり、コーヒー一杯のために全力を注ぐ。

また、サザコーヒーでは、地元の大子町のリンゴを使ったタルトを提供したり、笠間焼の手洗いシンクを使ったりしている。そう、極力、地元のものを使うことにも固執しているのだ。

なぜ、サザコーヒーは、地元の茨城にこだわりつづけるのか。

普段、何気なく暮らしていると、自分たちの住むまちの魅力がわからない。
しかし、私たちが住むまちにも、魅力あるものは多く転がっている。それをどう気づき、掘り起こし、提供していくのか。そして、提供された側は、その地方の魅力を感じ、幸福感を満たしていくことに繋がっていくのだろう。

地方都市にとっては、これ以上のエールはない。
どの地方都市にも必ず魅力あるものは、眠っている。
このように確信し、あとは掘り起こすだけだ。

「いま、私たちの住むまちは、どのような魅力があるのだろう。」
「私たちは、なぜここに住み続けるのか。それは、どのような魅力があるからだろう。」

私たちは、地元の仲間たちと、このように問い続けることが必要ではないだろうか。

私もコーヒーが大好きだ。
一日に2杯飲まないと、気が済まない。

実は昨夏、私は、茨城を訪れた。
しかし、その時には、恥ずかしながら、サザコーヒーの存在を知らなかった。

また、いつか茨木を訪れよう。
コーヒーを楽しみに。そして、茨城の魅力を十分感じるために。


2019年1月26日土曜日

SDGs2

(通勤・通学の交通手段で)自動車分担率が2割、観光客のマイカー利用率に至っては8割近く減少した。
                                 京都市長 門川大作

(引用)日本経済新聞社 2019年1月21日付

先のブログで記したが、日経グローカルにより、SDGs先進度総合ランキングで京都市が1位に選ばれた。
京都では、四条通で歩道を広げて車道を2車線に半減させたことが、自動車からの排ガス量を抑制し、大きく環境保護の面で貢献した。

しかし、自動車の交通量を減らすことは、何も環境保護の恩恵をもたらすだけではない。

交通事故死者数は、30年間で約70%ほど減少している。しかし、75歳以上による死亡事故は減少していないという。

都市では交通インフラが発達しているが、地方都市では、高齢者も移動手段として自動車が必要になってくる。必然的に、地方都市では、高齢者の免許返納率も低くなる。

自動車の交通量を減らすということは、都市機能の集約化や交通インフラ整備が求められてくる。また、京都市では、自動車の交通量が減少し、慢性的な渋滞も緩和したことにより、観光推進にも役立っているという。

このように京都市では、公共交通量を減らしたことにより、環境×インフラ整備×まちづくり×観光などの相乗効果が産まれている。

これもSDGsの一つの大きな特徴といえるのではないだろうか。

釜石市では、SDGsを踏まえ、「オープンシティ戦略」を掲げた。
http://www.city.kamaishi.iwate.jp/shisei_joho/keikaku_torikumi/chihousousei/detail/1197597_3278.html

既に各地方公共団体でもSDGsを意識した総合計画、戦略立案、そして事業の推進がなされはじめている。

「いま、私たちの事業は、SDGsを意識したものになっているだろうか。」
「これらの事業は、将来的にも持続可能な社会に貢献したものになっているだろうか。」

そう、問いながら地方公共団体職員は、事業を進めていく必要があるだろう。

SDGs1

「SDGsは自治体にとって課題発掘のツールである。」
政府の自治体SDGs推進評価・調査検討会 村上周三座長
(引用)2019年1月21日(月) 日本経済新聞、朝刊

SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称である。これは、2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた目標のことをいう。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html


SDGsでは、先進諸国も含む目標として17ゴールと169ターゲットが掲げられている。

「日経グローカル」355号によれば、全国815市区への調査から都市のSDGs先進度を評価したところ、京都市が1位に選ばれた。

京都市の中心部の四条通は、歩道の幅を3・5メートルから6・5メートルに広げ、車道を2車線に半減させた。その結果、車の交通量が4割減ったという。先日、私も京都にいたが、多くの外国人を含め、車の数よりも歩行者の人数が多い印象を受けた。

このように、京都市では、観光客などの増加による交通渋滞を受け、人と公共交通優先の社会にカジを切ったことが温暖化対策につながったという。このことが主として、京都市が1位に選ばれた理由だ。

また、政府は2017年12月に「ジャパンSDGsアワード」を発表し、パートナーシップ賞として北九州市が選ばれた。今回の日経グローカルのランキングにおいても北九州市は、2位に位置する。

京都市については、次の私のブログに譲るとして、北九州市はかつて、郊外のため、大気汚染や水質汚濁が問題となったことがある。しかし2011年12月に国から「環境未来都市」に選定され、市民や企業とともに主として環境問題に取り組んできた。

また、持続可能な開発のための教育であるESDも盛んであり、特に近年では、官民が中心となって、発展途上国に対して安全な水を提供する「水ビジネス」にも取り組んでいる。

当初、私は、SDGsのゴールとターゲットを見たとき、発展途上国に対してのものであり、私たちの国に住む人たちは関係ないものであると思った。しかし、よくよく見ると、一つひとつのターゲットは、大変よく吟味されて設定されており、納得させられるものばかりである。つまり、SDGsのターゲット、ゴールは、これからも持続可能な社会を創るため、先進国にも求められるものだ。
そのため、私たちの課題発掘にも十分役に立つツールである。

さらに、SDGsのターゲットを見ていくと、地方公共団体(自治体)は、日本の一構成員であり、世界の一構成員であると思わずにはいられなくなる。

これからの時代、地方公共団体の責務としては、日本の構成員のみならず、世界の構成員としての自覚を持ち、グローバルな責任を負うことが求められてくると強く感じた。



※参考

〇北九州市SDGsクラブ
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/kikaku/02000160.html

〇北九州市海外水ビジネス推進協議会
http://kowba.jp/

2019年1月19日土曜日

夢や目標を持つということ

よく大人が若い人に、夢を持ちなさい、目標を持ちなさいって言いますよね。
あれに僕は首をかしげる。
夢を持てば、目標を持てば、がんばって何かになれる。
ということは、実は無いんだ。
今、自分がしていることを全力ですること。
目の前のことをきちんとこなそうとすること。
そのこと自体が夢であり目標であると、そう僕は思っているんです。

大棟耕介
(引用) 地球の名言 http://earth-words.org/archives/8574

今日は、大棟耕介氏の講演を聞く機会に恵まれた。
彼の講演を聞くのは、これで二度目だ。私は、いつかもう一度、彼の話を聞きたいと思っていた。その夢が、今日、叶った。それだけ、彼の講演は、クラウンの実演も交えることから面白く、そして熱い。

そう、彼の職業はクラウン(道化師)。大棟氏によれば、アメリカやヨーロッパでは、クラウンという職業の社会的地位が非常に高いという。クラウンという職業は、よく「ピエロ」と勘違いされる。ピエロというのは、演劇の中の役柄名であり、個人名である。つまり、日本人がピエロと呼んでいるのは、クラウンの中の一つの役名のことだ。

サーカスを見るとわかるが、クラウンは、相手を主役に立て、自分は、脇役に徹する。そして、脇役に徹しながら観客から笑いを引き出す。そして、クラウンの神髄は、「その場の空気を変える」ことにあるそうだ。だから、クラウンは、サーカスなどでも一番の高給取りであるという。

彼のすごいところは、時間があれば病院に出向き、病魔と闘う子供たちを励まし続けていることだ。

小児病棟では、四六時中、白い壁に囲まれ、入院している子供たちは、外出することが許されない。また、講演では、大棟氏のホスピタル・クラウンの活動を紹介する映像も拝見したが、薬の副作用で髪の毛が抜け落ちていき、顔も腫れてしまっている小学生の女の子もいる。そんな子供たちが過ごす暗い病院に、一たび、クラウンの彼が訪れると、その場の雰囲気が明るくなり、子供たちの表情が一変する。最初は、人見知りだった子供たちも、今や、彼が訪れると、担当医も聞いたことのないような大きな笑い声が病院に響き渡る。
まさに、私は、ここが重苦しい病院ではなく、普段の家で過ごしているかのように、クラウンである彼が「空気を変えた」ことによるものだと思う。

本日の講演会では、最後に質問コーナーがあった。その際、客席から「今後の夢」について聞かれた大棟氏は、このブログの冒頭に記したようなことを回答していた。
そして、目の前のことを一生懸命していれば、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨の被災地などにも呼ばれるようになり、苦しい空気を変え、より多くの人を勇気づけられるようになったという。
そして、ついに、彼は、本場アメリカのクラウン大会で金メダルを受賞するまでになった。

大棟氏は、目の前の仕事を全力で取り組み、今日という一日を真剣に生きているからこそ、それ自体が自分の夢になっていく。

まさに、冒頭の言葉通りだ。そして、その夢は現実のものとなる。

しかし、そこで彼の夢は終わらない。
今度は、ギネスブックにも挑戦していくそうだ。

日々を真剣に生きる彼の夢は、どこまで進化していくのだろう。
私は、また、いつの日か、彼の三度目の講演が聞けることを楽しみにしている。

2019年1月12日土曜日

ラショネール(rationale)

グーグルでは、「自分はなぜ、その行動をするのか」という合理的説明を「ラショネール」と呼んでいました。
何か新しいことを始めるときに、「なぜそれをするのか」を合理的に説明できれば「やってよし」というのがグーグルの文化です。

どこでも誰とでも働ける 12の会社で学んだ”これから”の仕事と転職のルール、尾原和啓著、ダイヤモンド社、2018年、78

日々の仕事をするうえで「ラショネール」は欠かせない。
これは、どんなに小さな仕事でも、上司などに対して「ラショネール」が求められるからだ。

では、具体的にラショネールとは何か。
なぜ、その事業がいま必要なのか。それをすることによって、どのように変わるのか。そして、そのことによって恩恵を受けるのは誰なのか。また、費用対効果は。
このように、「合理的説明」を構成する要素は、複数存在する。
また、それらの説明は、数字など、説得力のある材料を求め、具体的に用いたほうが良い。
さらに、私は、「合理的説明」をする際には、ストーリーも大切だと思っている。
そうしなければ、途中で上司などから質問攻めにあったとき、自分の考えがブレるからだ。
ラショネール力を磨くのは、やはり経験を積み重ねること。普段の自己啓発と日々の仕事の中から得ていけばよい。

そして、私は、事業をするうえで、もう一つ欠かせないのは、アカウンタビリティ(説明責任:accountability)だと思う。
特に、公的機関は、少子高齢化の荒波が押し寄せることから、ラショネール的な事業の施策推進が求められる一方、常にアカウンタビリティが求められる。

常に時代を敏感に察知し、そして事業を推進しているグーグル。その企業文化ともいえる「ラショネール」的な進め方は、今後の多くの事業所、そして公的機関にも参考になるものだと感じた。


2019年1月11日金曜日

強み、そして成長

自分の強みをつくったり、自分を成長させたりするときに、いちばん簡単なのは、何かが始まる場所にいることです。

どこでも誰とでも働ける 12の会社で学んだ”これから”の仕事と転職のルール、尾原和啓著、ダイヤモンド社、2018年、152

私は、この言葉がすーっと胸に入ってきた。20年を超える自分自身の仕事生活を振り返ってみると、幸運にも、幾度となく、大きな事業の”立ち上げ”の機会に恵まれた。まさに、「何かが始まる場所」にいた。
そしてその場所は、私に”強み”と”成長”を与えてくれた。

しかし、大きな事業を立ち上げるということは、相当のエネルギーが必要である。また、必ずハレーションが起こる。

サラリーマンであれば、同じ給料なのにどうして私だけ何かをしなければならないのか、と考えたこともある。
何もしなければ、そのまま時は過ぎていく。そして、そのほうが評判があがることもある。なぜならば、一つ間違いを起こせば、減点になる。だったら、何も生み出さず、「そのまま」にしておくのも一手だ。
しかし、それでよいのだろうかと思っていた。

尾原さんは、今まで私が抱えてきたモヤモヤした気持ちを一言で払拭してくれた。
この言葉は、かつて尾原さんが在籍していたリクルートの社訓、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」から芽生えたものか。

人生で最も多くの時間を割く”仕事”をするということ。ならば、その時間を有意義に過ごし、そしてそれが人々への貢献につながり、ひいては自分自身の成長につながっていく。

一度きりの人生、そんな嬉しいことはないだろうと思うのだが。